ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

自分の研究が橋梁の設計基準を書き換える日を夢見て(工学部 森猛教授研究室)

  • 2008年10月20日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

卒業生との交流が将来への貴重なアドバイスに

実験室で作業中の森研究室のメンバーが集合。最前が森猛教授

実験室で作業中の森研究室のメンバーが集合。最前が森猛教授

工学部都市環境デザイン工学科森研究室のメンバーは現在、学生11人と大学院生8人の合わせて19人。取り組んでいるのは、鋼橋の維持管理・補修のための基礎的な研究です。鋼材で建設された橋が、長期間の供用でどれだけ傷んでいるかを診断する方法や、安価で効果的な補修方法、長持ちさせるための工法などについての研究をしています。鋼橋は、高度経済成長期に次々と建設されてきましたが、現在は老朽化が心配され、補修と維持管理が社会的な課題となっています。当然、その基礎研究の重要性も増していますが、意外にも中心テーマに据えている研究者は多くないのが現実です。

電機油圧サーボ式材料試検機。実験ではこうした試検機で対象物 に何日も何週間も力を繰り返し加え続けてデータを取っていく

電機油圧サーボ式材料試検機。実験ではこうした試検機で対象物 に何日も何週間も力を繰り返し加え続けてデータを取っていく

「それだけに自分たちの研究結果が橋の設計基準を書き換えることになる可能性も少なくありません。実際、先輩の研究が設計基準に反映されたこともいくつかあり、自分もそうなる日を目標に研究に取り組んでいます」と荒木亨仁さん(4年)は、この分野の研究のやり甲斐について話しています。

実験は、対象物に長期間にわたって繰り返し力を加え続け、材料の疲労や損傷の進み具合を計測・解析していく、というスタイルが中心。そのため、地道にコツコツとデータを積み重ねていくことが欠かせません。森研究室の学生たちは、日々、粘り強く実験やデータ解析・構造解析に取り組み、週に一度、進行状況を教授に報告してアドバイスを受けながら、課題を乗り越えていきます。

2軸疲労試験検機

2軸疲労試験検機

「この分野は、どちらかというと、構造物の安全性を下から支える裏方的な存在なので、知っている人は少ないでしょうね。僕も大学に入るまで、こうした研究分野のことを知らず、橋の設計やデザインの勉強をしたいと思って、この学科を選びました」と、白井聡也さん(4年)は話しています。しかし、勉強が進むにつれて、この研究が橋の安全性に大きな影響を与えていることを知り、興味をもつようになったそうです。

ところで、森研究室の恒例行事は春のバーベキューと夏の合宿、そして2月末の打ち上げ。バーベキューには卒業生も参加し、楽しい交流が行われます。

2橋げたの部分の疲労解析モデル。実験で得られた計測結果はコンピュータで解析して補修効果などの結論へ結びつけていく

2橋げたの部分の疲労解析モデル。実験で得られた計測結果はコンピュータで解析して補修効果などの結論へ結びつけていく

「卒業生の先輩方からは、仕事や会社のことなどについて具体的な話をいろいろ聞かせていただきました。自分の進路を考える上でとても参考になりました」(白井さん)。夏の合宿では海外に出掛けることもあり、08年は韓国合宿が行われました。

こうした楽しいイベントの影響もあってか、研究室の雰囲気は和気あいあい。「大学院生の先輩は、研究の指導だけでなく、小さな疑問にも、親身に答えてくれます。とても感謝しています」(荒木さん)

(雑誌「法政」2008年10月号より)