ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

会計学でキャリアを科学する(キャリアデザイン学部 中野貴之ゼミ)

  • 2008年06月16日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

2008.06.16
経営データから見えるもの

中野准教授ゼミでは会計学の視点から、キャリアデザインを考えています。慣れない者にとっては数字が並んでいるだけの財務諸表などの会計情報には、実にさまざまな経営データが隠れています。そのデータを分析し、キャリアデザインと関連付けした学術的な仮説を立て、実証するのがゼミの目的です。

この日の授業では、エクセルデータにした企業群の会計情報をもとに、「入社してみたい(隠れた)優良企業トップ50」を抽出するグループワークを行いました。新聞の就職先人気企業調査などに登場する企業群(主に広告宣伝費を多く使っている企業)をあえてのぞき、ROA(利益率)、総資産額、成長率などの指標の単変量・多変量分析からの抽出を試みました。相談し迷いつつ作業を進めるゼミ生たちに中野准教授は「研究は“Trial & Error”。ぼんやりしているのが一番いけない」とプレッシャーをかけ、瞬発力ある思考を求めました。

実は、このテーマはゼミ卒業生たちが論文にし、高評価を得たものでした。中野ゼミでは、毎年冬に他大学のゼミと共同で論文の研究発表会を行います。4年生は発表した論文をさらに磨き学部の卒業論文にします。2007年度のゼミ卒業生がまとめた論文「会社役員の学歴に関する実証研究」は学部最優秀賞(法政大学キャリアデザイン学会賞)にも選ばれました。現4年生も「ワークライフバランス政策採用企業の財務的特徴」「企業の環境配慮行動と経営、株価への影響分析」などの発表を行っています。「学ぶことには皆が強い姿勢を持っています」と土屋慧さん(4年)も胸を張ります。

“就職を科学する”この日の作業は、「新卒採用は一生を左右する」と大切さを説いている先生から就職活動継続中の4年生へのエールでもありました。“働く”意義を考え、鍛えられている学生たち・・・、就職先が内定したゼミ生も、まだ探しているゼミ生も、しっかりとした自分の夢と目標を見据えて学びを続けています。

  • それぞれの夢を見据えて学ぶ中野ゼミ
  • 知恵を出し合い、データ分析を試みるゼミ生と見守る中野准教授

統計の大切さを自覚した時から研究が始まる

今春卒業したゼミ生たち。論文の高評価に誇らしげです

今春卒業したゼミ生たち。論文の高評価に誇らしげです

3年次にゼミに入った時点では、ほとんどの学生は会計知識を持っていません。そして、実のところ数学嫌いも少なくありません。前期に実施する専門書の講読や、4年生を交えた課題などをこなすなかで、ゼミ生たちは標準偏差など統計知識の大切さに気付いていきます。馬場政和さん(4年)は「企業統計を分析するのに微分積分の大切さを実感したのは夏合宿のときでした」と振り返ります。そこからが、本当のゼミ活動のスタート。さらに、「4年生にとっては、3年生たちに教えることで知識がしっかりしてくる」と中野准教授は話します。

近年、会計の国際化や一部企業の会計粉飾などの露呈などから、会計情報に対する社会的関心が高まっています。

「(まだ形が定まっていない)キャリアデザイン学を会計という専門性からしっかり学べる」と新倉朋美さん(4年)が話すように中野准教授は、あくまで理詰めで講義を展開しますが、一方でゼミ生たちの様子にしっかりと目を配って、時折、冗談などをはさみ、学生の興味をとらえて離しません。一コマ90分の授業は濃密です。高校で簿記を経験した工藤智美さん(3年)も、ゼミで本格的に会計や統計を学び始めた石井美由希さん(3年)も「中野先生は本当に分かりやすく説明してくれます」と口を揃えます。

これから卒業論文に取り掛かっていく4年生たちも意欲満々です。「先輩たちの研究はとても参考になっています。私たちも各々がいい論文をまとめていきたい」と落合友紀子さん(4年)。まだ4年目のゼミですが、伝統はしっかり育まれています。