ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

都市をつくる ―開発と共生―(デザイン工学部 <工学部>都市環境デザイン工学科 宮下清栄研究室)

  • 2008年03月10日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

鳥の目、人の目を駆使する

宮下専任講師の研究室(4年生9人)では、各種地理情報システム(GIS)データや、リモートセンシング(航空・衛星からの画像、各種情報)処理画像を用いた都市空間評価や、3次元バーチャルリアリティ(VR)を用いた環境共生型の都市づくりを研究しています。

近年、新しい都市づくりや都市再生では環境や財政面の制約のみならず、高いアメニティや斬新なコンセプトが求められています。住民参加やコンセンサスを得ていくうえで、意義やイメージが伝わる分かりやすくビジュアル的なデータ加工のニーズがあるわけです。「限りある空間を有用に活用すべく“鳥の目”と“人の目”を駆使して考えています」と宮下講師は話します。

たとえば、植生や地表温度データなどを加工し、地図情報と合成させることで、ヒートアイランド対策を考える貴重な資料となります。そこには、目線のみならず、エンジニアとしての英知も込められています。研究テーマは車両や電車など交通情報から防犯マップに至るまで多岐に及びます。

2007年12月には、宮下研究室のVR作品がフォーラムエイト主催の「第6回3D・VRシュミレーションコンテストby UC-win/ROAD」で審査員特別賞 芸術賞を受賞しました。外堀を中心に、エコと歴史の観点から市ケ谷キャンパス周辺の市街地再生を考察するために作成したものです。動画は実測して作りこんだ精巧なもので、親水公園案や再生のシンボルとして校歌の一節にもある蛍をVRで舞わせています。先生とともに制作にあたった櫻井大介さんは「苦労しましたが、視覚的にアピールできるものが出来ました」と胸を張ります。

  • 審査員特別賞芸術賞を受賞したVR作品。各種アイデアも盛り込みました
  • 卒業研究の中間報告の様子

Try and Errorで社会に貢献する

「アットホームな雰囲気ですが、研究については厳しい」とゼミ長の加藤哲さん。「毎週ペーパー報告を求められるので、やりがいがありました」と鈴木翔さん。また、福井正和さんは「論文の作成では、先生から『Try and Error』の大切さを何度も諭されました」、と卒業を前にこの1年を振り返ります。

4月に研究室に配属された4年生は、1年間をかけ専門知識を高め、卒業研究を仕上げます。テーマごとに、アプリケーションやデータ加工手法も異なるため、前期は覚えることが多く試行錯誤の連続です。「夏休みを過ぎたころから一気に実力が伸びてくる」と宮下講師。高い訴求効果を持つ画像情報とするには、効果的なデータ加工が必須であり、卒業研究の中間発表の場でも学生たちに「データの良しあし」を厳しく指導していました。

加藤さんのテーマは多摩地域で現在未着手の都市計画道路の便益評価。交通需要や現況などの諸データを加工しながら、都の優先整備路線と比較考察を行いました。鈴木さんは埼玉、東京などの土地区画整理事業で行われている戦略的環境アセスメント手法や事例を研究しました。一方、福井さんが取り組んだのは法政大学エコ地域デザイン研究所の研究テーマでもある日野用水の環境価値計測です。地域住民にアンケート調査を実施。仮想市場評価法により環境価値を算定し、農地や建物面積の経年的変化を考察した上で今後の再生方向を検討しています。

他の学生のテーマも、それぞれインフラ整備や都市政策を支え、社会貢献を実感できる研究です。社会と結びつきの深い研究プロセスは、人との関わりを通じ、学生のコミュニケーション力をアップさせます。研究室で過ごす時間は長いものですが、体育会野球部のマネージャーと両立させた学生がいるなど、文系以上に活発なメンバーが揃っています。

氏 名卒業研究タイトル
岡崎 伸哉浅川流域環境情報GISデータベース作成
鈴木 翔飯能市岩沢地区土地区画整理事業における戦略的環境アセスメント(SEA)の導入検討
飯村 浩明多摩地域における緑被分布の抽出による環境軸の形成に関する基礎的研究
加藤 哲多摩地域の都市計画道路の便益評価?環境的に持続可能な交通の観点から?
木村 真也エンデ・ベックマンの官庁集中計画及び臨時建築局の終息過程について
櫻井 大介3DVRにおける外堀再生の提案
中井 雄一郎防災・歩行空間性能に着目した空間評価に関する研究
福井 正和コンジョイント分析による用水路の環境価値の計測
福島 智美屋外犯罪不安の空間的特徴?子どもが被害者となるケースに着目して?