ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

組織の“ナレッジマネジメント”(経営学部 岸眞理子ゼミ)

  • 2008年01月14日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

ナレッジマネジメントの実践

知識の時代が強調される21世紀、知識の活用は組織の目的でもあり機能でもあります。岸ゼミの今年のテーマは「ポストIT革命時代の企業の知識活用能力」です。「IT(情報技術)やICT(情報通信技術)の活用が当たり前となった今日では、こうした技術の性能以上に、それらをうまく活用して情報や知識の組織的な活用能力をいかに高めるかにより関心が集まっています」と岸教授は強調します。ゼミでは、前期に専門書などで基本的な知識を学び、後期は企業事例研究のグループ発表や4年生の卒業論文の中間発表、発表に対するディスカッションを行います。「論理的に考え、話すことで組織と情報や知識との関わりを深く学ぶことができます」とゼミ長の大場正隆さん(3年)。

この日(12月6日)は、松木清太郎さん(3年)、野口貴裕さん(3年)らのグループが、「アサヒビール」の事例研究の発表を行いました。スーパードライという主力商品を巡る同社の約20年間の情報戦略を概察。特に、競合他社に先駆けたITインフラの構築や、さまざまなナレッジマネジメントの手法を紹介し、これらをうまく機能させるものとして社員間での高い意識の共有があることに注目しました。ゼミでの発表には、専門書や専門雑誌、インターネットやデータベースも活用しますが、直接、企業に聞き取り調査を行なうことも少なくありません。そのため、授業以外にグループで自主的に集まり学ぶ“サブゼミ”も盛んです。

ゼミの最大の特徴は、ゼミという組織で実践するナレッジマネジメントです。情報システムも活用して一人ひとりの発表内容を全員で共有化し、それを高めるために盛んにディスカッションが行われます。「内容だけでなく考え方についても、一人ひとりが感想や意見を言い合います」と副ゼミ長の石塚遼さん(3年)。岸教授が専門的な切り口やエピソードをまじえた質問をかぶせて、ゼミ生の考察を膨らませます。発表者のみならず参加者を一巡以上させる濃密な討議は、格好の“プレゼンテーションのトレーニング”であり、ゼミのナレッジマネジメントの要となるメンバーの学習意欲を高めています。

  • 事例研究のグループ発表 
  • 真剣に発表を聞く様子(左端が岸教授)

ゼミ活動の総決算“卒業論文”

卒業論文の中間報告の様子

卒業論文の中間報告の様子

4年生にとって、ゼミ活動の総決算が最低2万字の卒業論文です。問題意識や分析フレームとなる理論を明確にして仮説検証していくという、学術的な論文の作成を目指しています。

この日(12月6日)、卒業論文の中間発表を行ったのは泉有希子さんと魚野良輔さん。泉さんは特殊な洗浄技術を武器に、無店舗でインターネット受注しているクリーニング会社の事例を分析しています。情報共有・開示を徹底した「電子カルテ」の活用によるeビジネスでの成功が、クリーニング業界にとって深刻な課題である「顧客からのクレーム」への真摯な対応体制に支えられている点に焦点を当て、企業の競争優位の源泉を探ります。8月のゼミ合宿後、本格的に執筆をはじめ「迷ったところは先生に相談しつつ、進めてきました」と泉さん。

一方、魚野さんは熊本県の黒川温泉が生き残りをかけ取り組んだ“組織化戦略”をケーススタディに考察を試みました。「『黒川温泉全体がひとつの組織』という視点で組織化のプロセスを分析することを試みています」と話します。小さなアイディアから組織がイノベーションを実現する知識創造のプロセスを探るため、現地ヒアリングも敢行しました。

また、モータースポーツ好きで自動車部品メーカーに就職が決まっている中島清人さんは、フォーミュラ・ニッポン参加のレーシングチームの、競争力持続のための組織的な情報活用能力(ケーパビリティ)に注目しました。チームに頼み込み、「ツインリンクもてぎ」で開催されたレースの内幕も視察した力作です。

下級生にとって、4年生が岸教授の指摘に悩みながら卒業論文を修正しつつ作りこんでいく過程を見るのは貴重な体験。さらに、常に質問やコメントを求められることで、卒論作成過程に参加し知識の応用力も高められ、来るべき自らの卒論作成に備えることもできるのです。