ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

心の壁(文学部 山口誠一ゼミ)

  • 2007年12月03日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

“エヴァンゲリオンの教授”

本ゼミは、学部内外で特徴的な授業を行うことで有名であると言われています。その一番の理由は、アニメ・映画作品や、J-POPなどのいわゆるサブカルチャーをふんだんに用い、そしてそれらを哲学的に解釈していくことにあります。

具体的に今年授業に用いられた教材の一部を述べると、椎名林檎、村上春樹などの作品が挙げられます。数多く用いられるサブカルチャーの教材の中でも特に、毎年必ず用いられているアニメ作品から、学部内だけでなく他学部の学生にも教授の名前は知れ渡っています―“エヴァンゲリオンの教授”として。(ちなみに、今年の夏期休暇レポートのいくつかある課題の一つとして「劇場版ヱヴァンゲリオンについて論述しなさい」というものがありました)

哲学という言葉を聞くと、大半の方は難解なものであったり屁理屈を述べているだけであったりというように、あまり良いイメージを抱くことができないかもしれません。それは哲学というものを難しく、普段の生活とは全く関わりのないものであると考えているからです。

確かに、本ゼミでも他のゼミ同様に、難解なテキスト講読や学生による発表は行われています。しかし、エヴァンゲリオンの映像や椎名林檎の音楽など、サブカルチャーを従来の哲学者の思想とリンクさせた授業構成、さらにそれらを視覚的に分かりやすく、ドラマティックに演出するために外濠校舎の最新AV設備を利用した授業形式など視聴覚的に哲学解釈を行うという点においては、他のゼミとは一線を画しているといっても過言ではありません。そしてそこには哲学を少しでも分かりやすく、学生が興味を持つことができるような授業を行う、という山口教授の配慮が感じられます。

  • 哲学を究めようと学ぶ山口ゼミの皆さん
  • ゼミの授業風景

ニーチェ、ヘーゲルを学ぶ

哲学科以外の学生の間でも山口教授の異名は広く知られていますが、哲学科内ではニーチェの教授としても知られています。山口教授の専門は古代・近現代ヨーロッパ哲学。特に行為の視点から哲学的文明論の考察、ニーチェ、ヘーゲルの人文主義的再生についての研究を行っています。今年のゼミのテーマは<心の壁>です。自分と他人との間にある、決して分かり合うことができない隔たりを様々な哲学者の学説を用いて解釈を行っています。

「うちのゼミって、ゼミのテーマを体現してるみたいだよね」と4年生の脇坂麻里江さんは話します。普通、ゼミと言えばメンバー全員の仲が良く、和気あいあいとしているイメージを持つ人が多いと思いますが、本ゼミでは少し異なります。規模が大きいゼミであるためか時に、各メンバー間に<心の壁>の隔たりが感じられることがあります。

山口教授曰く「わたしのゼミを受講する皆さんは集まることがあまり好きではないみたいだから・・・」という理由でゼミ合宿も伝統的に存在しません。しかし、必ずしも仲が悪いというわけではありません。“個”の意見・解釈を尊重し、哲学を究めたいという志を同じくした集まりとして、皆が協力し合って勉学に励んでいます。

一見するとサブカルチャー研究のゼミに間違えられそうであっても、蓋を開けてみるとしっかりと哲学になっている。本ゼミは二面性をもった奥の深いゼミであるといえます。その二面性に魅力を感じて、一癖も二癖もある学生達が山口教授の下で<心の壁>の正体を探っているのです。

(4年相馬良美)4年相馬良美
【山口ゼミから投稿いただきました】