ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

文化的景観(人間環境学部 梶裕史ゼミ)

  • 2007年10月22日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

体験を共有し刺激しあう

さまざまな観点から広く環境問題を学ぶ人間環境学部。梶准教授のゼミでは「文化的景観」という、人文科学的視点をテーマにしています。“景観”は地域文化の表象であり、そこには目に見える有形のモノだけでなく、固有の無形文化も内在しています。「民俗学的なアプローチです。日本文化の特性にも適う概念であり、エコロジーの観点から、環境共生型の地域形成・人間形成に資する可能性を考えています」と梶准教授は話します。

山田優一さん(3年)は「雰囲気の良いゼミで、なんでも語り合える関係」と結束の強さを話します。ゼミの大きな年間目標は、個々の「現地訪問」。それぞれがテーマを決め、事前学習した後に、アポイントを取り原則一人で現地訪問し、聞き取り調査などを行います。中間発表などを行いながら、最後にレポートにまとめます。

この日の授業では、「この夏の小さな宝物」と題した2班に分かれてのグループワークを行いました。“五感で実感する地域の伝統文化”や“エコロジーに適う地域形成”などテーマを設定した現地訪問や、夏季休暇中の体験などを互いに発表。各々の体験に“つながり”を見出して意味付け、グループごとにまとめてみました。

角矢渉さん(3年)は広島の宮島での現地訪問の様子を発表。「深く根付く地域信仰や自然との共生。そして地元の人々との交流」を話しました。学部の正課行事である各地へのフィールドワークや家族旅行の体験を題材にしたり、神輿を担いだり、地方の特色ある祭りを訪ねた印象を話すゼミ生も・・・。

意見交換で互いに刺激しあったゼミ生たちですが、共通していたのが『人との出会い』の重要さや『モノではなく、体験した思い出の価値』。ゼミ生のひと夏の体験を、うなずきながら聞いていた梶准教授は、感想や学術的な切り口のヒントなどを、一人ひとりに熱心に説明しました。

  • グループごとの発表の様子
  • 活発な意見交換

さまざまな視点から眺める

ゼミでは2~4年生が一緒に学んでいます。個々のテーマこそ異なりますが、皆、自然や伝統文化に興味が深く、指向性が近いだけに、話はいつも盛り上がり、笑い声が響きます。飄々とした梶准教授を囲んで、授業後に場所を変えて交流を深めることもしばしばです。

主に夏から秋にかけて各自が実施する現地訪問のフィールドは「必ずしも、遠隔地(旅)である必要はない」と梶准教授。なぜなら自然・文化資源は身近なところ、大都市にも存在するからです。ゼミ生が選ぶフィールドは自由。その上で、選んだ地域・場所について、潜在的価値を“エコツーリズム” “グリーンツーリズム” “エコミュージアム”などの発想に照らして見出すことも含め、十二分に考察してほしいと語ります。

複数年をかけ、それぞれのテーマを追求する学生も少なくありません。「昨年は沖縄の食文化をレポート、今年はフィールドワークで訪れた高知の四万十などの地元特産品に着目しています」と、食と環境の関わりをテーマにするのは桜井友貴さん(4年)。就職も食品会社に内定しました。

人間環境学部では複数のゼミ履修も一部可能です。「特に農業をテーマに勉強している」という堀内しげみさん(3年)は、別に所属するゼミで訪れた新潟県の農村集落の固有文化や、昭和30年代から変遷する暮らしを継続的に考察しています。梶准教授は「社会科学・実学という学部の主たる学びを、人文科学的な視点から補完しているのも私のゼミの役割。対象をさまざまな視点から眺めてこそ、学際的な成果が得られるはず」と話し、学生の多角的な学びをサポートします。