ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

人体内部をコンピュータで映像化(工学部 電子情報学科 尾川浩一研究室)

  • 2007年09月03日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

高度先進医療を支える映像化技術

尾川教授の研究室では、医療や産業に役立つ画像工学の研究を行っています。画像といっても、検出器から操作・処理システム、画像再構成などテーマは幅広いものです。また、大部分の学生がそのまま大学院の修士課程に進むのが尾川研究室の特徴。研究室に配属される3年次には、専門分野の理解に必要な英語の論文講読や数学など基礎学力向上を図り、4年次から8つの研究グループに分かれます。

医用画像処理では他大学の大学病院や医療機器メーカーと共同研究を展開しています。例えば太田敦さん(修士2年)は、半導体検出器でとらえたデータから人体内の放射性医薬品の分布を画像化する研究を進めています。吉竹純平さん(同)は、超高分解能エックス線CTの開発に取り組んでいます。研究には画像工学の専門知識だけでなく、システムを動かすハード・ソフトウエアの知識、構築力も必須となります。

ガンマ線CZT検出器の研究を行っている村石雅明さん(同)は「病変部分を、もっと細かく映像化するものを作り、臨床で使えるようにしたい」と話します。一方、間宮剛さん(修士1年)は放射線治療の精度を格段に向上させるための、顔画像を用いた動き検出システム作りに日々取り組んでいます。「放射線照射治療で許される誤差は2ミリ」とのこと。先端医療技術の向上や社会への貢献が実感できるのが尾川研究室の研究です。

「先生は研究に関しては妥協せず、要求が高い」と学生たちは口にします。学内や学外の研究スペースでは、ひとりひとりが実験装置やパソコンに向かう個人作業がほとんどですが、「常に問題意識を抱き、何にでも挑戦する気概を持ってほしい」と尾川教授は、暇さえあれば学生たちに声をかけ質問、時にヒントを与えます。アイデアや理論を見える形でシステム化するためのコミュニケーションは技術を生み出す理系こそ大切なのです。

  • 【研究例】(a)金魚の超高分解能CT画像、(b)開発中の心筋イメージング装置、(c)脳血流画像
  • 尾川教授(中央)の下、学生は和気あいあいと研究に取り組んでいます

ニックネーム、そして海外学会参加

夏合宿での尾川研メンバー(学部4年、修士1、2年、OB)2007/9/3(法政大学白馬山荘)

夏合宿での尾川研メンバー(学部4年、修士1、2年、OB)2007/9/3(法政大学白馬山荘)

尾川研究室では、フランクに討議し研究を推進しようと、研究室配属時に尾川教授が一人一人にニックネームをつけています。その効果もあり研究室の雰囲気は抜群、いつも誰かが在室し熱心に研究活動を行ったり、仲間同士で研究の議論をしています。

学生たちが口を揃えるのが結束の強さ。尾川教授を中心に、研究グループ内のみならず全員がディスカッションしながら研究に磨きをかけようという高い意欲を持っています。飯田浩一さん(4年)は「熱く研究を語る先生に魅かれ研究室に入りました」と話します。OB・OGの結束も強く、恒例の夏合宿には毎年、社会の第一線で活躍している先輩たちも顔を出し、交流を深め合っています。

また、尾川教授は海外で行われる学会に院生を同行させます。「努力した人には晴れの場で英語で発表させてあげたい」という“親心”からです。3年次から積み重ねる英語の専門書講読もここで大いに役立ちます。昨年はのべ10名の学生が外国で論文発表しましたが、アメリカで開催された学会に参加した一人、岸野真由子さん(修士2年)は「英語での発表と研究者との交流は貴重な体験でした」と骨粗しょう症の診断のための歯科パノラマ画像処理のシステム作りにいっそう励んでいます。

国内の学会にも学生を必ず同行させます。「自分でプレゼンするとともに、その分野のトップの研究や競合する研究を見ることが、学生のやる気につながる。やる気が出ればますます伸びる」と尾川教授。週に一度、グループごとに先生を囲んで行う進捗報告、そして月に一度研究室の全員が集まって6時間以上かけて行うプレゼンテーションが表現力を培います。フォトンカウンティング型X線CTによる媒質同定に取り組んでいる広川立磨さん(4年)は最初に先輩たちのプレゼンを見た時、「まるで社会人のような内容や表現力」に驚かされたといいます。4年生の研究は始まったばかり。今後の進み具合と学生たちの成長が楽しみです。