ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

アート・プロジェクト(国際文化学部 稲垣立男ゼミ)

  • 2007年08月06日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

『外濠の家』から始まるコミュニケーション

現代美術のアーティストとしても活躍する稲垣准教授。本学には今年4月に着任したばかりです。表現系のゼミ(今年度は3年生対象)のテーマは公的空間におけるアートやデザインの研究、地域活性化のためのイベント企画などです。実際の活動は、最先端の表現を鑑賞する『フィールド・ワーク』と全員でテーマを決めて作品制作をする『アート・プロジェクト』の二本立てで行っています。春セメスターではフィールド・ワークの活動として安藤忠雄やマルレーネ・デュマス、藤森照信などの展覧会を都内の美術館で鑑賞しました。またアート・プロジェクトでは、日々のアイディアの記録である「ゼミ・ノート」や市ケ谷キャンパスに隣接する外堀のボート上での写真作品「on the boat」、ウェブ上に個人映像をアップする「You Tubeに映像を送ろう」というプロジェクトを行いました。

7月にはこれまでの活動の成果として外濠校舎1階のメディアスペースで作品展を実施しました。ほとんどのゼミ生にとって初めての展覧会でしたが、写真・絵画・建築模型・映像など思い思いの作品を制作・展示しました。

オープンスペースとあって、多くの学内関係者が展示を鑑賞しました。「学生には各々がやりたいとことを実現するようにということのみを伝えました。個人の思いで制作した作品を公的な空間に展示することによって、観客から想定外の反応も得られたはず」と稲垣准教授。『SHIOSAI美術館』と題した建築模型を作った田村峻哉さんは、「建築に関心があり、海に面した美術館をイメージしました」と話します。展示したことで、ますます創作意欲が沸いたようです。

ドイツの現代美術家、故ヨゼフ・ボイスは「人は誰でも芸術家になれる」「芸術は万物に宿る」などの名言を遺しました。漠然としたアイディアを形にする難しさと、それを公的な場所で展示する意義…、ゼミ生たちは、アートを通じてさまざまなことを学ぶことができるはずです。国内や欧米、アジア各国でアート・プロジェクトを実施してきた稲垣准教授は、ゼミ生たちの表現活動を温かく見守っています。

  • 作品展「外濠の家 7の隣 徒歩0分」
  • 思い思いの作品を創りました

作品に表れるもの

展覧会の成功を喜ぶ稲垣ゼミの皆さん

展覧会の成功を喜ぶ稲垣ゼミの皆さん

最初の制作ということで、ゼミ生たちの制作には、等身大の興味も現れました。山田愛実さんは、レシート用紙に、自分史を時系軸で書き連ね、写真で装飾した作品を作りました。特に、国際文化学部生が全員参加するSA(スタディー・アブロード)で訪れた英国や、その後回った欧州各国の印象は「楽しく、興味深かった」ため、自分史の大きな部分を占めました。

梅垣沙織さんは住宅のドアに着目しました。6月初旬にこの制作のためにわざわざ訪英。「SAで訪れたときから気になっていた」という住宅街ノッテイングヒルの家々のカラフルなドアを写真撮影、アート作品に仕立てました。「おはなしの家」という精緻でメルヘンチックな作品や、内面を追求し、記憶や自分の部屋をモチーフにデッサンや紙模型を作成した学生もいます。

また、会場には各自が常日頃、思いついたアイディアやイメージなどを書き留め、描写しておく「ゼミ・ノート」も展示されました。ゼミ生たちとは“仲間”でありたいという稲垣准教授ですが、このノートへの着想の記録を怠った学生には厳しく指導します。若いゼミ生たちの折々の発想や感性は表現活動にとって貴重なのです。

稲垣ゼミではセメスターの区切りには、今後もさまざまな形で展覧会を行っていきたいと構想しています。「2年間という期間、長く深い関係を築いていきたい」と稲垣准教授。ゼミ生たちと作り上げていく教育の現場を存分に楽しんでいます。