ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

つなげる(キャリアデザイン学部 児美川孝一郎ゼミ)

  • 2007年07月23日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

個性をぶつけるグループワーク

児美川ゼミでは前期授業でグループワークを行いました。この日、いきなり始まったスキット(寸劇)に教室はどっと沸きました。派手なサングラスに赤毛のウィッグをつけた女子ゼミ生が、アメリカのニュースショー司会者の吹き替え口調で、グループ発表を始めたのです。フロアディレクター役を男子ゼミ生が務め、ゲスト役の2人もオーバーアクション気味の演技でゼミ生たちの笑いを誘いました。

テーマは「人がマンガから受ける影響」。この日の発表班=黒澤亜也子さん、篠田有希恵さん(以上4年)、春日井浩子さん、高麗裕太さん、北條薫さん(以上3年)の5人が老若男女約100人にアンケート調査した結果の発表でした。「せっかくだから凝った演出で」という遊び心からです。もちろん、授業ですから調査結果の分析や類型化などもしっかり行いました。「何も聞かされておらず、驚いた」と目を丸くした児美川教授ですが、思いもよらない演出に笑みを浮かべました。

その後は、5人以外のゼミ生が2班に分かれ「マンガは人格形成に“良い”影響を与えるか、否か」をテーマに、短い時間ながら即興でディベートを行いました。まずは、論点を班別に話し合ってまとめて、「立論」。3人の代表者が主張・反論を繰り返し、最後に総括をしました。児美川教授や発表班が審査員役となり、形として勝ち負けをつけましたが、勝敗が重要なのではありません。意見を出し合ってまとめ、論理的に主張する過程こそが大切なのです。

「狭い目標だけを目指すのでなく、学生同士の刺激を通じて発想を広げてほしい」と児美川教授。ゼミ生を見回しても行動派から思索型、議論好きからアイデアマン…などさまざまな個性をもった学生ばかり。型にはめ込むのではなく、学ぶ楽しさを実感できるゼミ授業を通じて、ゼミ生は自分にとっての学習・研究課題を見つけていきます。

  • 代表者同士によるディベートの様子
  • スキットの趣向をこらしたグループ発表

常識を再構築させる

ゼミ生にアドバイスする児美川教授

ゼミ生にアドバイスする児美川教授

キャリアデザイン学部は、さまざまなアプローチから個性的に生き、働くことを学ぶ学部です。教育学が専門の児美川教授は、近著「権利としてのキャリア教育」(明石書店)で、産官学から注目を浴びている現在のキャリア教育を鋭く検証。若年政策や起業家教育、進路指導改革として行われているキャリア教育の抱える問題点を提起し、将来構想を描くなど、精力的に研究・執筆活動をしています。

そんな児美川ゼミのメーンテーマは「キャリア形成と教育」。若者文化や生涯学習、学校生活などを糸口に3、4年生が一緒に、諸テーマを考察しています。「ゼミでは、学生が主体となって話し合って活動します」と鈴木遥さん(3年)。春と夏にはそれぞれ2泊3日の合宿がありますが、課題図書なども意見を出し合い多数決で選定しました。児美川先生は、時に脱線しそうになるほどの活発な討論を巧みに裁き、サゼスチョンし、学術的な興味と分析に誘います。それが、3年次のゼミ論文(400字詰め原稿用紙30枚)4年次の卒業論文(同100枚)につながっていきます。

ゼミ生たちは日ごろ、学問としてのキャリアデザインを学んでいますが、自らの就職活動という現実に直面した4年生は、『社会との関わり』『働くこと』により深い理解を得ています。就職活動に冷静に臨み、途中で軌道修正を図れたという古庄智子さん(4年)は、「いろいろな人と話すスキルも身につきました」と振り返ります。ゼミでの討論の活動が傾聴やアサーション(適切な自己表現)のトレーニングにもつながったということなのでしょう。

「それでも学生たちは、まだまだ自分の(思い込みの)枠にとらわれています。それを崩すのが私の役目です。学ぶ意義と楽しさを実感させ、それを専門学部としての教育に値する知的訓練にまでつなげていくことが課題です」と児美川教授は話します。