ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

フロンティアをデザインする(デザイン工学部 システムデザイン学科 大島礼治【人間・社会環境デザイン研究室】)

  • 2007年05月14日
ゼミ・研究室紹介(2019年度以前)

クロスボーダー社会で広がるデザインの役割

2007年4月に工学部3学科(建築・都市環境デザイン工・システムデザイン)を改組してデザイン工学部(2?4年生の所属は入学した当時の工学部になります)が誕生しました。なかでも、システムデザイン学科は2004年に設置された新しい学科で、今年度の4年生が一期生です。

大島研究室では、生活者を発想の中心におき、“使う側に立ってデザインする”を研究主眼とし、新たな社会システムデザインや見えない価値そのものをデザインすることを目指しています。
「クロスボーダーによって複雑化する現代、デザインの役割と領域は広がるばかり」と大島教授。
学生自らが、社会における気付かれていない問題を発見し、コンセプトデザインから具体的デザインの提案まで、問題解決を目指した研究を行っています。学部の専門科目として学ぶ「デザイン」「エンジニアリング」「マネジメント」の各領域も学生の総合的なシステムデザイン能力を高めています。

個々の学生が関心を持っている分野や手法は多様です。モノを生み出すのは感性だけでは実現できません。
副ゼミ長の鶴田哲也さんは「テクノロジーやその組み合わせに興味があり、技術に裏付けされた形態を考える」と話します。
専用のゼミ室には毎日誰かが在室。そのゼミ室や3Dモデリングマシンが並ぶ作業室、大島教授の研究室では互いのアイデアや作品を批評することで、検討すべき点が明確になり、完成度の高いデザインが生まれます。単にアイデアとして終わることなく、ビジネスモデルとして成立するか否か、議論は夜遅くまで続きます。

そのためには「人間行動や哲学、社会の動きなど何でも知らないと」と横村夏樹さん。
「時代の要請と合ってこそ、専門は生きてくる」という大島教授の教えを生かすべく、学生たちは日々、課題に対する自分なりの解決手段を模索しています。

  • ケミカルウッドで制作した作品を批評し合う学生たち
    左端が大島教授
  • 大島教授の研究室で
    個性豊かな学生たちの討論は尽きません

横断的にモノを見て考える

職人の熟練の技を真剣に観察、取材する学生たち

職人の熟練の技を真剣に観察、取材する学生たち

研究室には3人の院生も在籍しています。他大学や他分野から進学してきたり、一度就職してから再び大学という研究の場に戻ってきた院生などです。研究室では、院生、学部4年生とも、来春の卒業を控え就職・進学とそれぞれの道を目指しています。

先輩のいない一期生とあって就職活動は手探りの部分もありましたが、デザイン関連やシステム設計、企画などさまざまな職種に内定。インダストリアル系だけでなく広告代理店の企画職を志向している学生も少なくありません。
「デザインの役割が広がっている現代社会では、横断的にモノを見て考える力が必要」と常日頃話す大島教授の下で学んだ学生は、創造力や構想力、コミュニケーション力を早く社会で生かしたいと意気込んでいます。

デザイン工学部では東京の真ん中という好立地を生かし、産業界などの第一線で活躍するトップクリエーターなどを招き講義していただくことも少なくありません。一方で、大島研究室では、3年生後期から自主ゼミとして外部での実習なども多く行ってきました。
昨年11月には、大島教授がアドバイザーを務める新潟県燕・三条地区のものづくり企業を訪ね1泊2日の研修旅行を実施。銅器作りを実地体験したほか、熟練職人による“曲げわっぱ”作りなどを取材しました。
また「一次産業を“デザインする”をテーマに、長野県の農業試験場などへ情報収集を実施しています」とゼミ長の下枝弘樹さん。

自身がデザイナーとして活躍している大島教授は、急速に変容している中国・上海をしばしば訪ねています。
「デザインはグローバル化するばかり。10年後には我々の働き方も驚くほど変わるはずです。学生たちには自信を持って新しい時代のフロンティアに挑んでいってもらいたい」と話しています。