教員紹介(2016年度)

より多くの人たちにスポーツの楽しさを広めたい 経済学部経済学科 教授 杉本 龍勇

  • 2016年09月27日
教員紹介(2016年度)

プロフィール

経済学部経済学科 教授 杉本 龍勇

経済学部経済学科
教授 杉本 龍勇(Tatsuo Sugimoto)

1970年静岡県生まれ。法政大学経済学部卒業、中京大学大学院体育学研究科博士課程単位取得満期退学。在学中に開催されたバルセロナオリンピックで100m走および4×100mリレーにアンカーで出場し、6位入賞、アジア新記録(38秒77)を樹立した。2010年に法政大学経済学部准教授、2011年に教授に就任、現在に至る。指導者としてもサッカー日本代表の岡崎慎司選手のパーソナルコーチなど精力的な活動を続け、スポーツ振興に努めている。

アスリートから教育者に転じて、スポーツの振興に貢献

経済の分野からスポーツ振興を図る

1992年バルセロナオリンピックに出場。4×100mリレーではアンカーを務め、6位入賞を果たした

1992年バルセロナオリンピックに出場。4×100mリレーではアンカーを務め、6位入賞を果たした

専門分野はスポーツビジネスで、経済学やマーケティングの観点からスポーツを研究しています。具体的には、スポーツに関する消費行動を調べることで、人はどのようにしてスポーツに興味を持つのか、どうすればスポーツをやりたくなるのかを解析しています。

陸上競技に打ち込んでいた私が、大学で経済学を教えていると驚かれることも多いのですが、これこそ自分の役割の一つだと思っています。

選手としての現役を退いた後、コーチやトレーナーになって後進を育てている方はすでに数多くいます。しかし私は、人と同じことをするより、別の形で自分にできることをしたいと考えました。アスリートとしてオリンピック出場を果たした経験に加えて、法政大学と留学先のドイツで学んだ経済学の知識を武器に、新たな視点に立ってスポーツの楽しさを広めていきたいと思ったのです。

スポーツが普及していくには、多くの人に興味を抱いてもらい、競技人口を増やすことが必要です。その過程で、ビジネスの知見は欠かせません。近年は社会的に健康志向が強まって、健康のために気軽にスポーツを始めようとする方が増えました。スポーツメーカーやプロチームを持たない一般企業でも、社会貢献の意味でスポーツに携わることも増えています。マーケットが拡大している好機なので、なおさらスポーツの現場を知る経済の専門家を育成することは、意義が大きいと思っています。

日々の成長を感じられるワクワク感を伝えたい

ドイツのマインツ大学にて、岡崎慎司選手とトレーニング

ドイツのマインツ大学にて、岡崎慎司選手とトレーニング

法政大学に来る前に、Jリーグの清水エスパルスでフィジカルコーチをしていた時期に知り合ったのが縁で、2012年からサッカー日本代表の岡崎慎司選手の専属コーチを務めています。もちろん、サッカーの専門技術は分からないので、基礎体力や瞬発力、リズム感などの身体能力を向上させ、自分が思い描いたイメージ通りに体を動かす力を鍛える方法を指導しています。

指導するにあたっては、プロの競技者やトップアスリートの育成に寄与するというより、「昨日よりも今日のほうが、体がよく動く」というワクワク感を体験してもらいたいんです。思い通りに体が動けば、自分の成長を実感して、新しいことにチャレンジしようという意欲をかき立てられますから。

私にとってスポーツはアイデンティティーの一つ。根底には「スポーツの楽しさを多くの人に伝えたい、気軽にスポーツを楽しんでもらいたい」という気持ちがあるので、トップを引き上げるより裾野を広げることを目指したい。そこで、幼児対象のかけっこ教室からシニア世代向けのウオーキング教室まで、さまざまな形でスポーツ初心者の指導にも関わっています。

もともと人と話すことが好きなので、世代を問わず、いろいろな立場の人と関わっていられることも楽しいんですよ。仕事という感覚もなく、現場ごとに新鮮な感覚を味わえています。おかげで、他に趣味もないんです(笑)。

後輩であり教え子である皆さんに伝えたいこと

杉本ゼミでは、3年次にチームを組んで懸賞論文に挑戦。昨年は応募した4作品がすべて入賞した

杉本ゼミでは、3年次にチームを組んで懸賞論文に挑戦。昨年は応募した4作品がすべて入賞した

寮生活を送った多摩キャンパスに、今は教員として通っていることは感慨深く、気恥ずかしい思いもあります。時折ハメを外しながら、大学生活を謳歌(おうか)していた日々を知っている教職員の方もいますしね。

学生時代を振り返ると、一匹おおかみのようなスタイルでした。陸上競技部でもトレーニングメニューは自分で組み立て、個別練習に明け暮れていました。そうした独自性も受け入れてくれた法政の自由な校風と、当時の仲間たちには感謝しています。

大学教員という道に気付かせてくれたのも、法政の先生方でした。2度目のドイツ留学が決まっていた卒業間近な時期に、数人の先生からそれぞれ呼び出され、教員として大学に戻ってくることを勧められたんです。その声に背中を押されて、今ここにいます。

教え子であり、後輩である皆さんには、何事に対しても全力で取り組んでみてほしいです。スポーツも、勉強も、遊びも。全力で遊べないと、全力で仕事もできません。今はイージーゴーイングというか、力をセーブして楽に生きようとする学生も多く見受けられますが、なんだかもったいない気がします。泥くさいほど全力で一生懸命取り組んだことは、数年後には懐かしい笑い話、語り草になります。そうした楽しさも味わってほしいですね。

(初出:広報誌『法政』2016年度8・9月号)