教員紹介(2011年度)

社会保障、介護、年金、保険など課題の多い高齢社会を迎える日本の身近な問題を追及 社会学部 教授 長沼 建一郎

  • 2011年05月30日
教員紹介(2011年度)

プロフィール

社会学部 教授 長沼 建一郎(ながぬま けんいちろう)

1984年 東京大学法学部卒業。
日本生命保険相互会社、厚生省、ニッセイ基礎研究所勤務を経て
2001年 日本福祉大学社会福祉学部助教授に就任。
2007年 早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程満期退学、日本福祉大学社会福祉学部教授。
2009年 法政大学社会学部教授に就任。

社会保障、介護、年金、保険など課題の多い高齢社会を迎える日本の身近な問題を追及

研究分野について教えてください

社会学部 教授 長沼 建一郎

社会学部 教授 長沼 建一郎

日本における社会保障をめぐる諸問題、特に介護事故や、公的年金と私的年金の関係、そして保険と契約の結節(つながり・関係)について研究をしています。高齢化が進む日本にとって、介護や福祉問題は新聞やテレビでも毎日話題にされている、とても身近な問題です。最近では日本と北欧の制度についてよく比較されますが、世界中どの国の福祉問題を取りあげても、良い部分と悪い部分、そして学ぶべき点、問題点などさまざまな側面があります。現在の制度はもちろん、今後の在り方についても考えなくてはいけない問題です。

近年は、特に介護事故に関する研究に力を入れています。転倒や誤嚥が代表的な介護事故なのですが、決して例外的な事象ではなく、一生のうちには誰でもが遭遇しておかしくない問題です。

研究者を目指したきっかけは何ですか

銀座・教文館にて。キリスト教関係の本やグッズがたくさんあります

銀座・教文館にて。キリスト教関係の本やグッズがたくさんあります

社会法学は、現代社会において需要の大きい、とても重要な分野です。保険会社や官庁に勤務していた経験もあり、私にとって社会保障は身近な領域でした。未解決の重要な問題が多くあることや、自身の経験が研究者を志すきっかけとなりました。

学生のころは、「すべての西洋文明のもとはキリスト教にあり」と思い興味を持ったのがきっかけとなり、学問的な観点から聖書の研究をしていました。心理学や言語学、記号論などまで援用して、とても有意義な研究ができました。問題に対して多角的・学際的にアプローチする姿勢は、今でも大切にしています。

趣味は何かお持ちですか

     学位取得時の写真

学位取得時の写真

高校生のころから、30年以上ボブ・ディランのファンです。アメリカやイギリスに出かけた時も、そこでしか手に入らない彼のレコードを探し歩きました。来日の際は連日コンサートへ足を運びました。ファンの間では「ボブ・ディランの最高傑作はまだ書かれていない」と言われており、これは次の作品が最高傑作であることを期待するファンの熱い思いを表した言葉です。私を含め、世界中のボブ・ディランのファンは、今もずっとかたずを呑んで彼の動静を見守っています。次の最高のコンサートを期待して、来日の際はまた足を運びたいと思っています。

休日に家族(妻)と食べ歩きや散歩に出かけるのも楽しみのひとつです。あとは大した趣味もなくて、好きな本を読むくらいですね。最近では田川建三による新約聖書の翻訳と分厚い註解が一冊ずつ刊行されるのを楽しみにしています。学生時代とあまり変わりがありませんが。

法政の学生に何かメッセージを

学会で訪れた京都の清水寺

学会で訪れた京都の清水寺

法政の学生はとても意欲的です。私のゼミは「社会保障と生命論理のケーススタディー」をテーマにしており、皆で意見を交換しながら、答えを見つけていきます。皆熱心で、積極的に意見を出してくれ、討議では学生たちに押されてしまうこともしばしばです。

最近では、学生たちから就職に関する相談を受けることがあります。会社員の経験ももとにアドバイスをしているのですが、やりたいことと適職とは違います。出会うのも才能。勉強に、プライベートに、学生生活を思い切り楽しんで、さまざまな経験の中で、自分に合ったものを見つけてほしいですね。

私自身、学生時代を振り返ると、奇妙な思い出ばかりです。法学部生だったのですが、他学部によく出かけて行って、アメリカ文学のゼミ合宿についていったり、中国の陶磁器の歴史の授業に参加したりしていました。卒業近くになって、やっと法律学の面白さが分かってきて、今はその続きをやっている感じです。

人生において、学べる時間は限られています。学問は義務ではなく権利です。法政大学でたくさんのことを吸収し、学んでください。

  • 鹿児島の「熊のひなまつり」。梅崎春生の『桜島』や『幻化』も愛読書

  • 宮沢賢治記念館の入口にて。好きな作品は『セロ弾きのゴーシュ』