ポジウィル株式会社 代表取締役社長 金井 芽衣さん
金井 芽衣(Mei Kanai)さん
1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学を経て、2010年キャリアデザイン学部3年次に編入学。2013年に卒業後、㈱リクルートエージェント(現在の㈱リクルートキャリア)に入社。2016年に国家資格キャリアコンサルタント登録。2017年8月にポジウィル㈱を設立し、同社代表取締役社長に就任。
充足感を感じ、笑顔で過ごせる人を増やしたい。その思いを実現するため、27歳で起業し、キャリアに関するオンライン相談サービスを手掛ける金井芽衣さん。いざというときに適切な行動を取るには、日頃からキャリアを意識しておくことが大切と言います。
昨年、法政大学を退官された宮城まり子先生には編入学時から長年お世話になっている
人手不足、売り手市場といわれますが、フリーランスや副業などキャリアの選択肢が増え、キャリア形成に関する悩みを抱える人が増えています。
「キャリア」とは狭義では職業選択を、広義では人生そのものを指します。人材紹介会社のサポートは、基本的に就職・転職というゴールへ向けたもの。それなら私は、人生寄りの部分をサポートしたいと考え、「そうだんドットミー」というオンライン相談サービスを立ち上げました。
転職を考えたり、将来について漠然とした不安を覚えたりするのは、自分の理想と現実の間のギャップがあるからです。それを解消しないまま仕事だけ変えたとしても、根本的な解決にはなりません。そのため「そうだんドットミー」は転職そのものを前提とはしていません。相談者の業種や希望に応じた登録アドバイザーが親身に話を聞き、質問を投げかけ、キャリアへの問題意識の「芽」が育つように、自らの魅力に気付けるようにサポートしています。
「何に悩んでいるかがようやく分かった」「自分にとって何が大切かに気付けた」と好評で、多少なりとも皆さんの役に立てていると感じています。
キャリアデザイン学部の友人たち(前列右が金井さん)
高校時代はチアリーディング部の活動に夢中で勉強がおろそかになり、現実逃避のようなかたちで短大に進学しました。ある日、保育の実習先で、やけどの痕や傷のある子どもを目にして、子ども虐待のない社会にするためには、ワーキングマザーなど子育てをする側のサポートが不可欠と考え、4年制大学で学びを深める決意をしたのです。
大学受験のように、同級生と勉強の苦労を分かち合うことができず、短大の授業や実習と並行して編入学試験の準備をするのは、とても大変でした。そんなとき、宮城まり子先生の授業を見学させていただく機会があって、「法政でキャリアデザインを学ぶ」ことを目標に頑張ることができました。
キャリアデザイン学部では、経営、心理、教育、ケアカウンセリングの4つの視点から社会について広く体系的に学べました。各業界で活躍されている方やスタートアップ※の経験者などの話を聞くことができたり、高校生にワークショップ形式でキャリア教育を行う実習があったり、多くの知識と経験が今につながっていると感じています。
就職活動では、説明会で好印象を得た人材紹介会社に積極的なアプローチを繰り返し、内定を得ることができました。最初の数年は、目標達成の喜びや、仕事へのやりがいも感じていました。ところが、多くの転職希望者と日々接しているうちに、「転職がその人にとってゴールとは限らない。根本的な問題や悩みに寄り添い、もっと社会の役に立てることができないだろうか」と疑問を抱くようになったのです。
国家資格キャリアコンサルタントを取得し、大学院への進学も検討しましたが、行動するなら一日でも早い方がいいと考え、27歳で起業しました。進みたい方向は決まっていたので、迷いや不安はありませんでした。
情報やサービスがあふれているからこそ、本当に大事なものにはお金をかける時代になっている、キャリア相談の需要は大きいという確信はありました。しかし、「そうだんドットミー」の試行版をスタートした当初は、社内体制が未整備で思うように物事が進まず、資金調達に奔走する日々が続き、自信を失いかけたこともありました。
その後、相談後の問題解決や自己変革の部分でもサポートが求められていると分かり、相談者のニーズに合わせて柔軟にアフターケアに応じられるサービスを追加しました。私らしいやり方で「笑顔で過ごせる人を増やす」ために、前進を続けているところです。
大学生の就職内定率が高くなった一方で、新卒者の約3割が入社3年以内に転職しています。私もそうでしたが、会社をブランドで選びがちなこと、就職活動前の自己分析が不十分なことがその一因だと思います。学生のみなさんは、あえて考えないようにしていること、コンプレックスだと感じていることに、ぜひ向き合ってみてください。人と違う部分こそが自分の魅力であり、それに気付けば選択肢も広がっていくはずです。
人は2割に嫌われ、2割に好かれ、残りの6割は無関心という説があります。他人の反応を気にして、萎縮してしまっていてはもったいない。ぜひ、自分らしさを大切にして、就職後も折に触れて自分のキャリア=人生を見つめてほしいと思います。
※新しいビジネスモデルによる起業
(初出:広報誌『法政』2019年10月号)