法政大学では、他大学との交流を促進して学生の新たな学び体験の機会を創出するため、国内留学制度を設けています。2023年1月19日(木)には、関西大学との国内留学プログラムに2期生として参加した学生3人を囲んで、廣瀬克哉総長との座談会が開催されました。
吉川さん 大学入学前から留学に興味がありましたが、コロナ禍ということもあり、海外への留学は半ば諦めざるを得ませんでした。しかし、1年次の終わりに関西大学への国内留学という制度があることを知り、挑戦してみたいという思いが芽生えて応募しました。
伊藤さん 入学してからの2年間は、オンラインでの講義が中心で、サークルの活動も制限され、交友関係を広げられずに強い閉塞感を感じていました。そんなときに、国内留学制度の説明会に参加したのですが、昨年度に参加した先輩たちから楽しそうな経験談をうかがううちに「私が求めているものはこれだ」と感じて決意しました。
櫻井さん 私には将来なりたい職業があります。その夢を目指すためにも新しい知識を取り入れたいと思っていたところに国内留学の制度を知り、法政大学のキャリアデザインを学ぶことに興味を引かれました。
櫻井さん 社会人のゲストスピーカーを招いて話を聞くという授業に興味を持ち、将来のキャリア形成に役立つのではないかと期待して受講しました。それまでは、大学3年次から就職活動を始めて、卒業したら企業に入社するという進路を当然のように考えていましたが、ゲストスピーカーの多様なキャリアの話を聞いているうちに、それが唯一の道ではないと気付かされたことが新鮮でした。
伊藤さん 法政大学の法学部は法律、政治、国際政治と学びの領域が分かれているのですが、関西大学では法学政治学科の一つにまとまっていて、法学も政治学も広く学べます。新鮮に感じたのは、関東圏にある法政大学と関西圏にある関西大学では、引用される学説が異なる点です。同じ法学でも別の視点から多角的に学ぶことができたのは、大きな収穫でした。いい機会なので、これまではあまり触れてこなかった政治分野の科目も履修して学びました。
吉川さん 私も、福祉分野の学びで伊藤さんに近い感覚を得ました。法政大学の現代福祉学部には福祉コミュニティ学科のほか、臨床心理学科もあるので、心理的な側面からの福祉支援という視点には1年次から触れてきました。関西大学の人間健康学部では、健康や人の体に関する学びがあり、法政大学のスポーツ健康学部に近い観点から福祉を学べたので、新しい発見につながりました。
廣瀬総長 皆さん、留学先で新しい発見をされたようですね。自分の学びとは異なる学びを取り入れて結び付け、新たな気付きを得ていることがとても印象的でした。
法政大学と関西大学とでは、学部の構成が少しずつ異なります。その違いを改めて感じることで、自分が所属している学部の特性が見えてきたことでしょう。法政大学でも自由選択科目として他の学部の科目を自分の学びに取り入れる機会があります。国内留学を通じて、新たな学びに触れる奥深さに気付いたのであれば、次の挑戦としてサティフィケートプログラムなどを活用して他の学部の学びに触れてみてもいいかもしれませんね
吉川さん 留学していた半年間は、寮に入りました。知り合いも友達も1人もいない地域での生活に少し不安もありましたが、滞在した寮には海外からの留学生が多く、毎日が異文化体験イベントのようで刺激的でした。お互いの国の食事を紹介し合ったり、一緒に買い物に出掛けたりしているうちに親交が深まって、最後は東京に帰るのが惜しいと思うほどのいい思い出づくりができました。
伊藤さん 偶然ですが、私も吉川さんと同じ寮に滞在していました。実家暮らしで料理をした経験がなかったので、寮での自炊生活は大変だと家族からは心配されたのですが、実際は寮生同士でお互いに助け合えたので、特に不安に思うことはありませんでした。むしろ、海外にいたかのような異文化交流という貴重な経験ができたと感じています。
櫻井さん 私は初めての一人暮らしを満喫しています。家具や家電製品付きの学生マンションで、食事は朝食と夕食を提供してもらえるので、快適に暮らしています。関西では、東京の人は怖いという人もいたので、少々身構えていたのですが、授業が始まってから1週間ぐらいで友人もできました。「国内留学で関西大学から来ました」と自己紹介すると、皆さん興味を持ってくれて、温かく接してくれています。
櫻井さん 授業で知り合った方から紹介されて、短期間ながら教育系NPO団体に参加させてもらったり、販売系のアルバイトをしたりしました。
吉川さん 留学してすぐに万博記念公園内にある飲食店でアルバイトを始めて、半年間続けていました。公園にはいろいろな人たちが集まるので、関西圏の方々の会話を耳にしたり、食い倒れの街の食文化に触れたりして楽しかったです。
伊藤さん 私は家にこもっていたくないという思いが強かったので、意識的に出歩くことを習慣にしていました。観光スポットよりも、散歩気分で裏路地に入るなど、その街の生活が感じられるようなところを散策しました。大阪はもちろん、京都や兵庫、奈良まで足を延ばしていました。古風な街並みが残っているところもあって、文化を大切にしている地域性などを感じることができました。
廣瀬総長 奈良は私の出身地ですが、昔は旧市街地の奈良町周辺も寂れていて、地元の人以外は誰も訪れたりしないようなところでした。それが今では地域活性化に取り組み、古い町屋の姿を残しつつも、街の雰囲気を大きく変えて発展している姿に驚きます。
実は、奈良県の国営飛鳥歴史公園内にある高松塚古墳は、関西大学の考古学研究室を中心とした発掘チームが発見しました。そういった縁もあるので、また奈良に行く機会があったら、思い出してみてください。関西大学博物館には高松塚古墳の壁画再現展示室などもありますので、櫻井さんも関西大学に戻ったら見てみるといいと思います。
吉川さん 関西大学の人間健康学部は堺キャンパスにあり、受講科目の関係で週1回だけ千里山キャンパスにも通っていたので、二つのキャンパスを見ることができました。関西大学の学生さんは、すぐに友だちのような感覚で接してくれて、距離の縮め方がうまく驚きました。近くに飲食店が多いことも、学生同士が仲良くなるきっかけになりやすいと感じました。
伊藤さん 関西大学の千里山キャンパス内は広大な公園のようで、一般の人も犬の散歩で歩いているような、地域にすごく開かれている印象を受けました。法政大学の市ケ谷キャンパスはビル街にあるので、大きなギャップを感じたことを覚えています。
櫻井さん 私は伊藤さんとは逆に、千里山キャンパスから市ケ谷キャンパスに来たので、やはりそのギャップに驚きました。千里山キャンパスでは校舎の移動に10分以上掛かることもありますが、市ケ谷キャンパスは都会にあるビルという印象で、縦の移動が中心です。また、関西大学の法学部は学生が700人所属する学部ですが、キャリアデザイン学部の規模はコミュニティとして関わりやすいと感じました。
吉川さん 法政大学も、多摩キャンパスは自然と共生していて、千里山キャンパスに雰囲気が近いですよ。私も市ケ谷キャンパスには馴染みがないので、櫻井さんの気持ちがよく分かります(笑)。
吉川さん 一番の収穫だと感じたことは、大阪を身近に感じられるようになったことです。これから進路を考えるとき、関東にこだわることなく、いろいろな地域に興味を広げて活動してもいいと思えるようになり、将来の選択肢が広がった気がしています。
伊藤さん 育ってきた生活圏から離れて違うコミュニティに身を置くことは刺激的で、それまでの自分を客観視して、成長につなげられたと感じています。なにより国内にいながら海外の人と交流する機会はあるのだと気付けたことで、価値観をアップデートすることができました。自信が付いたので、今度は海外留学に挑戦してみようかと思っています。
櫻井さん 大学生のうちに何か新しいことしたいと考えている人にとっては、本当にいい機会と感じています。私のように自分が所属する学部とは、全く違う学部で学ぶ機会は少ないかもしれませんが、視野が広がり、新しい視点に気付くという意味では貴重な体験ができます。国内留学を通じて、新しい自分に出会えた気がするので、興味のある方にはぜひお勧めしたいと思っています。
廣瀬総長 二つの大学で学んだ経験は、自分にとっての大きなメリットであり、将来に向けた自分の糧になるのではないかと思います。自分の幅を広げるチャンスとして、国内留学制度を上手に活用してもらえたのであれば、うれしい限りです。本日は、ありがとうございました。
一同 ありがとうございました。