日本文学科

日本文学科の内容

日本文学科

上代文学

日本に文字がなかった頃から律令国家が成立した奈良時代までを上代と呼びます。日本最古の歌集『万葉集』ができたのはこの時代。そこには古代人の生き生きとした声が響いています。日本最古の書物『古事記』ができたのもこの時代。世界がどのようにできたのか、そこにはどのような意味があるのかといった根源的な問題を『古事記』は王家の物語として語ります。文学の根源に立ち返ってその意味や面白さを考えます。

中古文学

平安時代(中古)には、ひらがな・カタカナが発明され、それまでになかった文学が陸続と出現しました。10世紀には『古今和歌集』『伊勢物語』『蜻蛉日記』、11世紀には『枕草子』『源氏物語』、12世紀には『大鏡』『今昔物語集』……といったように、様々なジャンル、様々な文体が、次々と試みられていたのです。それらの成立状況・表現のしくみ・影響関係などを明らかにしてゆくのが、中古文学研究のテーマです。

中世文学

平安末期から安土桃山時代までを「中世」と呼びます。相次ぐ戦乱で、従来の価値観も崩壊する激動の時代。そうした時代だからこそ、社会の矛盾や人間の本質について思索する文芸が生まれました。『平家物語』では、源平争乱を背景に人々の苦悩と理想が描かれます。鴨長明は一丈四方の移動式の庵でミニマルライフを始め、日本初の本格的住居論『方丈記』を著しました。こうした人々の心性に触れられるのが、中世文学研究の魅力です。

近世文学

1600年頃から1867年まで、江戸時代が近世です。貨幣経済の時代、木版印刷による商業出版が発達し、広がりゆく識字層=読者の需要に応えるさまざまな書物が出されました。笑いあり、涙あり、恋や人情の葛藤、スリルや冒険、またいかにも武士の時代らしいお家騒動や敵討ちなど、多彩な読み物や演劇が世に出されます。一方、俳諧や漢詩・和歌などの世界ではそれぞれの美学が追求され、多くの一般の人びとが創作に参加するようになりました。そんな文芸の多様化と大衆化の時代です。

近・現代文学

日本の近代社会は明治維新後に生まれましたが、その本質は現代社会まで変わりません。欧米語では近代も現代もおなじ「モダン」で、そこに人類史上初めてすべての人間が自由を求める権利を手にしました。一方で貧困・差別・戦争など、それを阻む事実は変わらずあります。「近・現代」に書かれた文学は、人間が自由を求める魂の記録と言っていいでしょう。例えば明治期の夏目漱石や森鷗外にとって、自由とは欧米諸国と拮抗できる社会を実現することでした。言葉の力で現実が変えられていく、その驚きから近・現代文学研究がはじまります。

中国文学

本学科では中国文学の授業やゼミも開講されており、漢詩や漢文を専門的に学ぶこともできます。日本人は古くから中国文学に親しんできました。のみならず、自ら漢詩を作ったり漢文を書いたりもしてきました。明治の初期までは、単に「詩」といえば漢詩を指していたほど、中国文学は身近な存在だったのです。漢詩・漢文の深い読みこみを通して、私たちの祖先の営為を追体験しつつ、これまで誰も気づかなかった文学テクストとしての面白さを発見することを目指します。

古典語・現代語研究

SNSや広告のキャッチコピーに見られる言語的特徴や、〈ことばの乱れ〉と批判される言葉遣いの変化、日本語と中国語の語彙の相違点など、多彩な観点から現代日本語を分析します。古典語も、高校までの文法を暗記する勉強とは違い、『万葉集』に見られるアレとワレ(我)のニュアンスの違いや、『おもろさうし』や「琉歌」にみる古代沖縄方言の復元可能性、係り結びが消滅した原因など、自分で自由にテーマを設定して研究します。

文芸創作

文芸は言葉の芸術です。文芸のジャンルには小説、詩歌、評論などがあります。言葉は創造のための道具であり、この道具は過去の文芸の遺産を引き継いでいます。創作を学ぶということは、新しいものを創造するために過去の作品に学ぶということでもあります。また、知的財産権やプライバシー問題、編集、表現技術の変化などと創作がどうかかわるのかなども学んでゆきます。創作は社会と時代に深くかかわっていることを学びます。

能楽研究

観阿弥・世阿弥父子が大成した能は、古典世界に取材し、演技・音楽・詩歌を融合した総合芸術です。また巧みな言葉の遣り取りに歌舞的要素を織り交ぜた狂言は、成立当初から能と同じ空間で演じられてきました。現代ではこの2つを合わせて能楽と呼びます。能と狂言からは、中世の文化や人々の営みだけではなく、古今東西の人々を魅了し続ける日本演劇の技を感じることができます。世界的にも能楽研究の中心である法政大学で、この芸能に触れてみましょう。

卒業論文

(提出された卒業論文題目の一部です。)

  • 古事記におけるスクナヒコナの意義
  • 『源氏物語』の受容 ―現代の作家たちは光源氏と藤壺をどう描き直したか―
  • 『義経記』と幸若舞曲「静」の関係性
  • 『百人一首』恋歌の特徴について
  • 近松門左衛門作『堀川浪鼓』に描かれた不義
  • 語り手は「語らない」 ―「地獄変」と「藪の中」から―
  • 「壁」の先の『砂の女』論
  • 王昌齢詩の「月」について ―離別詩における詩語「孤月」を中心に―
  • ポケットモンスターの語構成について
  • 接尾辞「み」の新用法について ~「ねむみ」と「メロンみ」~
  • 【小説】「修繕小僧」
  • 【小説】「汚部屋シンパシー」
  • 【小説】「真ん中の星のこと」
  • 能と京劇 ―「項羽」と「覇王別姫」の表現比較―