教職課程センターの紹介

センター長メッセージ

教職課程センターの紹介

 私たちは、変化の激しい予測の困難な知識基盤社会に生きています。AIやビッグデータ、IoTなどの技術革新を背景に、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑さ・複雑であること)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字をとった、VUCA(ブーカ)として特徴づけられる社会が到来するなかで、新たな状況に柔軟に適応して、知識をいかに創造し活用していくのかが経済的な成功の鍵となっています。

 他方で、私たちは国の内外で予期せぬさまざまな課題に直面するようになっています。国際的な状況をみても、頻発する異常気象、ウクライナ侵攻、パレスチナ情勢、新型コロナの蔓延など、環境、安全保障、人権、感染症を始めとする地球規模の問題の解決に迫られています。国内においても、人口減少社会、少子高齢化、人手不足、貧困、ハラスメント、男女格差、多文化共生、自然災害など、容易に対処できない課題が山積しています。

 社会がめまぐるしく変化し、解決の難しい諸課題に対峙するなかで、教育のあり方や教員に必要とされる力量の見直しも進められてきました。これまでは、教科書等を中心に指導すべき内容をきちんと教えることが期待されてきました。それが、変化する社会状況のなかで問題や課題の発見・解決を図るために、「何を知っているか」ではなく、知識を活用して「何ができるか」が問われるようになり、知識を記憶させるような教師主導の一斉指導に代わって、使える知識の獲得を可能にするような主体的で探究的な学びが必要になってきたのです。未知の世界を創造的に生き抜く力の育成に向けて、すべての教員が学びの経験をデザインする時代になったといえるでしょう。

 このような背景から、文部科学省の新しい教育課程においては、よりよい未来の社会を築き、自らの人生を切り拓いていくことのできる資質・能力の涵養が中心的な課題となっています。資質・能力の3つの柱に基づき教育課程の構造化が図られ、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善、及び、カリキュラム・マネジメントを通した不断の見直しといった具体的な方略が示されています。さらに、令和の日本型学校教育のあり方として、すべての子どもの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びを実現していくことが提言されています。こうした資質・能力を培う学びをデザインして、未来の創造に参画していく生徒を育てるためにも、生涯にわたって「学び続ける教員」としての力量形成が求められています。

 法政大学の教職課程では、「自由と進歩」の建学の精神のもと、社会の進歩を担う自由な個の形成をめざして、広く豊かな教養と深い専門的知識・技能をもち、学びの経験を効果的にデザインできる高度専門職としての教員を養成することをめざしています。意図的・計画的な教育課程の履修と学生自身の日々の努力によって、主体的で批判的な価値継承の力を培い、学習指導及び生徒指導をめぐる実践的指導力や学校現場が抱える課題への対応力を高めていきます。このような教職課程での学修を経て、法政大学ではこのところ毎年、およそ200名前後の学生の皆さんが教員免許を取得し、全学で60~80人程度(大学で把握している数)の卒業生が教員になっています。

 教員をめぐっては、主体的・対話的で深い学びの実現、ICT環境の効果的な活用、多様化する子どもへの対応、教職の魅力向上、学校での働き方改革など、直面する課題もさまざまに議論されています。一方で、教員は、人間的な関わりを通して生徒のキャリア形成に大きな影響を及ぼす魅力的でやりがいのある仕事であることには変わりはありません。学びのイノベーションが求められている今日、教員をめざす皆さんには、激しく変化し予測困難なこれからの社会を生き抜き、未来を切り拓いていくことのできる生徒の育成に向けた学びのデザイン力を身に付けてほしいと思っています。教職課程センターでは、学びのデザイナーとしての自律的で質の高い教員になるためのサポートや支援に真摯に取り組んでいきたいと考えています。

 

教職課程センター長 松尾 知明