社会学部について

学部長メッセージ

社会学部について

社会の本質と生き抜く知恵

 2024年から法政大学社会学部長を務める私は、南極観測隊員として極限の自然に身を置いてきたという、一見、社会学部らしくない経歴の持ち主です。
 雪と氷に閉ざされた極寒の地で、私は人間社会の縮図ともいうべき営みを目の当たりにしました。世界各国の観測基地は、広大な大陸に距離を隔てて点在しつつも、どこの国の領土でもないという特殊性や国際協力を重視するという共通理念の下に、ユニークな連携コミュニティを形成し、互いに支え合うことで、極限環境下での科学観測を遂行しています。
 また、少人数で一冬を過ごす越冬基地の中にも小さな社会が芽生えます。限られた資源を有効活用するための工夫が生まれ、時に意見が対立しても対話を重ね、自律的に問題解決を図ろうとする姿勢が見られます。こうした、極限環境下にこそ顕在化する、社会が本来持つダイナミックな営みの本質に、私は多くを学びました。
 極寒に耐える肉体的な強靭さだけでも決して極地は生き抜けません。米国の極地探検家であるリチャード・バードの言葉を想起すれば、「内面に蓄えた教養を糧に悠々と生きる」ことができる者だけが、極地生活を堪能できるのです。知の泉である教養から湧く精神的な力こそが、過酷な挑戦に立ち向かう勇気と源泉となります。教養とは、人類が長い歴史の中で築き上げてきた知の結晶であり、それに裏打ちされた社会学・哲学・芸術などから学ぶことで、私たちは生きる上での英知を授かります。
 そして今や、人類は新たな地質年代「人新世」を生きています。私たち自身が地球に大きな影響を与える存在となった現代こそ、教養を糧とした生き抜く知恵が問われる時代なのです。
 ここ法政大学社会学部では、そうした社会の本質と人新世を生き抜く知恵の探求に取り組みます。社会論・地域論・ジェンダー論・メディア論など多角的な学問領域の講義と、実践的なフィールドワークや学外実習を通じて、理論と現場を架橋した深い学びを重視しています。教員と熱心に討論を重ねる機会をおおいに活用して、一人ひとりの気付きを伸ばしながら、卓越した社会分析力を身に付けていってください。
 世界は容赦ない現実と、それに立ち向かう人類の果敢な挑戦の歴史そのものです。しかし人々は、内なる教養を糧として、社会の絆を強くし、時に新たな地平を切り開いてきました。社会の本質を探求し、教養に裏打ちされた生き抜く知恵を身に付け、人新世という新たな時代に立ち向かい、より良い社会の実現に貢献したい。そういった熱い志を持つ学生こそが、この社会学部で学ぶにふさわしい人材です。きっと厳しい挑戦が待ち受けていますが、内なる力で乗り越え、確かな足取りで前へ進んでいってください。我々スタッフもそのお手伝いをさせていただきます。
 

社会学部長 澤柿 教伸