お知らせ

【実施報告】陸前高田市SDGsワークショップ2025を実施しました

  • 2025年09月10日
  • 産官学・社会連携
お知らせ

法政大学と岩手県陸前高田市は、2019年に「SDGs推進連携協定」を締結し、2020年度から共同でSDGsに関する課題解決を考える「SDGsワークショップ」を継続的に実施しています。
2025年度も昨年度に引き続き、学生たちは東日本大震災の記憶を今に伝える震災遺構を訪れ、市が進める防災への取り組みについて学びました。また、陸前高田の夏の伝統行事である「七夕まつり」に参加し、地域住民の皆さんとの交流を通じて、地域文化を次世代へ継承していくことの大切さや、地域コミュニティの在り方について理解を深めました。
今回のプログラムには、本学の学生20名が参加し、事前学習を経て2泊3日の現地フィールドワークに臨み、現地での体験を通じて、自らの学びへとつなげる貴重な機会となりました。

実施概要

■ 期間

   2025年7月16日(水)~2025年8月8日(金)
   ※うち現地フィールドワーク8月6日(水)~8月8日(金)

■ 現地フィールドワーク場所

 岩手県 陸前高田市

■ 参加学生数

  20名(1年生4名、2年生6名、3年生8名、4年生2名)

実施内容

事前学習(7/16)

本学市ヶ谷キャンパスと陸前高田市をオンラインでつなぎ、フィールドワークに向けた事前学習を実施しました。
はじめに、参加学生全員による自己紹介を行った後、本学と陸前高田市とのSDGs連携の経緯について説明を受け、続いて、陸前高田市役所のご担当者様より、市の概要や直面する課題についてご紹介いただきました。
その後、今回のフィールドワークで参加する「うごく七夕」について、中央祭組の黄川田敏朗様から背景や由来、さらに東日本大震災を経た現在の課題などを伺いました。地域の伝統行事に込められた思いを知る貴重な機会となりました。
最後に、陸前高田市様より「地方はどのように存続していけるのか」「地域に人を呼び込むには何が必要か」という問いが提示され、参加者は5つのグループに分かれてグループワークに取り組みました。学生たちは活発な議論を交わし、現地での学びにつながる多様な視点を共有しました。

  • 事前学習での自己紹介の様子

  • 事前学習でのグループワークの様子

現地フィールドワーク(8/6~8/7)

1日目(8/6)

初日となる8月6日には、学生たちは市役所に到着後、祭り当日の流れや飾り付けの制作方法について、中央祭組の黄川田敏朗様より実演を交えた詳しい説明を受けました。地域の人々が代々受け継いできた七夕まつりの準備に込められた工夫や意味を学び、行事の背景にある文化的価値を理解する機会となりました。
続いて、陸前高田市の佐々木拓市長を表敬訪問しました。佐々木市長からは、伝統ある七夕まつりが直面する「担い手不足」や「少子高齢化」といった課題、そして学生たちへの期待についてお話しいただきました。対話の場では学生からも積極的に質問が寄せられ、意見交換が活発に行われました。
その後、現地ガイドの案内により震災遺構「気仙中学校」を見学しました。震災当時の被害を伝える建物を目の前にし、学生たちは改めて津波の脅威と地域が歩んできた復興の道のりに深い思いを馳せました。

  • 黄川田様によるうごく七夕の説明

  • 佐々木市長表敬訪問

  • 気仙中学校(震災遺構)の見学

2日目(8/7)

2日目の8月7日は、終日、中央祭組の皆様とともに「うごく七夕」に参加しました。東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田では、各町内会を中心に構成される祭組も、居住の分散や高齢化による担い手不足という課題を抱えています。
朝の出発式では、全員で黙祷を捧げた後、地域の方々と交流を深めながら昼の部の山車を引きました。伝統を守り継ぐ地域の強い思いに触れ、学生たちも地域行事に参加する責任と意義を実感しました。
昼の部終了後は、夜の部開始までの時間を利用して、民間の震災遺構である米沢商会ビルを訪問しました。中央祭組のメンバーでもある米沢祐一様から、震災当日の状況やご自身の体験を直接伺いました。さらに、津波から逃れた屋上にもご案内いただき、学生たちは津波被害の恐ろしさを肌で感じました。
夜には再び祭りに参加し、お囃子の音色が響き渡る中、学生たちは中央祭組の皆様とともに山車を引き、多くの祭組と行き交いながら祭りを盛り上げました。地域の一員として共に汗を流す経験は、学生たちにとって忘れがたい学びとなりました。

  • 「うごく七夕」昼の部で山車をひく姿

  • 「うごく七夕」夜の部での山車が行き交う様子

  • 震災遺構である米沢商会ビルでの津波到達水位の観測

3日目(8/8)

最終日となる8月8日は、陸前高田市防災局の中村吉雄局長より「災害における市町村の役割」をテーマに講義を受けました。被災自治体の経験を踏まえたお話に、学生たちは防災の重要性と地域行政の果たすべき責任について深く学びました。
続いて、市内で運行しているグリーンスローモビリティ「モビタ」に乗車し、ガイドの方の案内を受けながら市内を巡りました。実際にまちを走りながら、復興の歩みや新たな地域づくりの取り組みについて理解を深める機会となりました。
最後に、市役所にて事前学習で取り組んだグループワークを再び行い、現地でのフィールドワークを踏まえて意見を整理・共有しました。3日間の学びを振り返りながら、学生たちは地域課題の解決に向けて自らの視点を再確認し、今後の学びにつなげました。

  • 中村局長による防災に関する講話

  • グリーンスローモビリティ「モビタ」に試乗

  • 陸前高田市役所前での記念撮影

本学は、今後も陸前高田市との連携をはじめ、地域社会との協働を通じて、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。現地での学びや交流を通じて学生が培った経験を教育へと還元し、次世代を担う人材の育成につなげていきます。引き続き、本学の取り組みにご期待ください。

参加者の声(アンケートより一部抜粋)

  • 3日間で本当に多くのことを学ぶことができた。特に、災害と陸前高田という結びつきで考えていた今までとは異なり、地域の伝統的なお祭りに触れることでより陸前高田を広い視野で知ることができ、非常に有意義で楽しい時間を過ごすことができた。今まで以上に東北という地、陸前高田という市、人々の温かさが好きになり、これまで以上に関わる機会を増やしたいと思えるほどであった。
  • 山車を引いた経験、地元の人々と触れ合えたこと、美味しいものを食べたこと、震災遺構でお話を聞いたこと、すべての体験が私の財産となった。
  • 私はこれまで被災地という観点から、陸前高田市を見てきました。その中でも多くの学びがありましたが、今回被災地と言うよりは「今、陸前高田に生きる方々」という新たな観点を持ったことで、これまでにはない発見がありました。特に七夕祭りや震災遺構、街並みからは、この数日間訪れた私たちにとっては当たり前に存在する様に思えるものや景色が、実際は地元の方々の尽力によって構築されたものであると学びました。現地の方々が失ったもの、必死に繋ぎ止めたもの、あるいはゼロから創り出したもので陸前高田の街は構成されていて、それは一朝一夕ではなく彼らの一年一年の積み重ねによって現在、存在していると言うこと、そしてそれらが今後の彼らの生活の一部になっていくことを感じました。言葉にすると当たり前の様に思えますが、この街に14年間という日々が蓄積され、そしてさらに明日からの1日1日が積み重なると思うと、復興という言葉の途方もなさと陸前高田の未来への希望を感じました。
  • 震災遺構ツアーや米沢商会ビルの見学を通して、甚大な被害を受けた陸前高田市の当時の様子を知ることができる機会や、地元で開催されている七夕祭りへの参加を通して陸前高田市に住んでいる人と交流することができる機会、自由時間では自分たちが食べたいご当地の名物を食べる機会など、2泊3日という短い期間ながら陸前高田市で色々な経験をすることができ、非常に楽しい3日間になった。
  • 東日本大震災やうごく七夕について知る以外にも異なる地域の人々の生活や温かさに触れることで、自分を見つめ直す機会にもなり、多くのことを学ぶことができた。

ご参考