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【新入生】法学部合格者へのメッセージ

お知らせ


法学部に合格されたあなたへ  ~2024年度 法学部長 細井 保~

 合格者の皆さん、おめでとうございます。法学部を代表してお祝い申し上げます。

 

 法学部は法や政治や国際政治について学ぶ場ですが、
「法や政治や国際政治を学ぶ」ということはいったいどのようなことなのか、それは何を目的としているのか、
 今ひとつイメージがつかめないまま合格通知を手にしている方もいるでしょう。

 私たち法政大学法学部の出発点は、
 徳川将軍とその幕府の治世が瓦解したのち、日本という国のあり方が根底から変わっていく途上にあった1880年、
 薩埵正邦(24歳)、金丸鐵(28歳)、伊藤修(25歳)という3人の若者が創設した「東京法学社」にあります。

 彼らがこの結社の目的として掲げたのは、市井の人々に権利義務について学ぶ機会を提供することでこの日本という国の文明発展の一助となるのだという宣言でした。
(東京法学社開校ノ趣旨より「我同胞兄弟ヲシテ権理義務ノ何タルヲ弁識シ且皇国ノ法典ヲ熟知セシメ以テ明治ノ文明ヲ稗補セム」)
〔https://museum.hosei.ac.jp/archives/Users/Topから閲覧可能〕
 

 この「文明発展の一助となる」という若者たちの気概が法政大学法学部の原点です。

 
 「『文明発展』とはまた大風呂敷を広げたな」とお思いでしょうか?
 

 しかし、すこし前のCovid-19パンデミックをはじめとする災禍を思い起こして欲しいのですが、
 私たちの相互依存が深まった文明社会が、自然が及ぼす地球的な規模の力の前に、実は脆弱であるということに気付かされました。
 また現在、文明繁栄の前提となるべき平和というものの脆さをも思い知らされているところです。

 くわえて地球全体の気候温暖化の趨勢も悪化の一途をたどり、異常気象の強度も年々増してきているように思われます。
 この先私たちは、この「文明」の恵みをただ安穏と享受することはできず、むしろ「文明」は数多の障害や危機に直面し、私たちに自省をもとめることになりそうです。

 そのとき皆さんは、危機を乗り越え、この世界をできるだけ良いものとして後代に繋げるために「より良い法」を求め、「より良い政治」を必要とし、「より良い国際秩序」を模索するはずです。
 
 そのためには、法、政治、国際政治について深く学び、考え、論じ合うことをとおして知性と見識を磨かなければなりません。
 くわえて19世紀後半の明治期の制約にとらわれていた「同胞兄弟」観念をさらに普遍化ないしは多様化し、
 出自や性差にとらわれずに人々が手を携えて、文明の危機に立ち向かうことが求められるでしょう。

 法政大学法学部を、そのための学びの場として活用してください。

 

 細井 保(ほそい たもつ)