教員紹介

水野 和夫

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※近日情報を更新いたします!

ゼミのテーマ

ゼロ金利とポスト資本主義社会

ゼミの目的及び概要

 このゼミは一年限りの開講になります。(定年退職のため) 2023年4月から参加するゼミ生はその旨を理解した上で参加してください。
 近代になるとあらゆるものを貨幣で評価し、「私的な利益こそ、すべての人間を導く主」だと信じるようになりました。資本主義で最も重要な概念は「資本」であって、最もシンプルにいえば、利息・利潤を生むのが資本です。ところが、21世紀になると、経済成長率は大きく鈍化し、成長率と物価を反映する金利もゼロ近辺で推移しています。今の日本や世界が抱える構造的な問題がどこにあるかを研究し、その上でどうすればよい方向に向うことができるかについて、自ら考える力を身に着けることをゼミの目的とします。
 ゼロ金利は資本主義にとって「例外」です。また新型コロナパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻も近代社会においては「例外」状況にあたります。「例外」こそが物事の本質を露わにするといわれます。資本主義や近代社会の本質は何かをこのゼミで考えていきたいと思います。
 まず、21世紀の日本が抱える問題の根本はどこにあるのか、その原因を探求します。その際、原因は資本主義が本来もつ固有のメカニズムにあるのか、あるいは政策の不手際にあるのかを考えます。前者であれば、資本主義システムをいかに変えていくかを研究し、後者であれば、政策でいかに解決していくかを考察します。とりわけ、現在の先進国が抱える問題の多くは資本主義固有の性質に起因する点があると考えられます。私的所有権の問題をロックの所有権(プロパティ)にたち戻って考える必要があります。また、利子と利潤の違いについても根本から見直していかなければなりません。弱者の救済と生活水準の向上に資するのが資本なのですが、現実には資本はその機能を世界的なパンデミック下において発揮していません。その原因についても考えてみたいと思います。

ゼミの年間計画(合宿などを含む)

春学期は、日本をとりまく世界経済の動向、たとえばエネルギーと食料価格の高騰とその影響について考察します。1年を通じて、企業や霞が関の最前線で活躍している人を講師に招いて、現実社会で起きていることについて理解を深めます(新型コロナの感染状況次第です)。
 夏休みは富山県利賀村で毎年8月末に開催される世界演劇祭(SCOT SUMMER SEAZON、鈴木忠志演出)で2泊3日程度のゼミ合宿をします。そこで、シェイクスピアやベケットの戯曲を観劇して、「古典」が現在の問題とどう関連しているかを考えます(春と夏の合宿についても、新型コロナの感染状況次第です)。
 秋学期は格差や二極化がどいうメカニズムで発生するのか、その原因を究明します。
 毎年春休みには、新ゼミ生(1年生)と春合宿を実施し親睦を深めます。

学生へのメッセージ

経済学に関する基礎知識の有無は問いません。政治に加えて経済にも関心をもっていれば十分です。
 21世紀は20世紀の延長線上にはないと思います。「過去の経験」が通用しない時代となると、「歴史の教訓」をいかに学ぶかが大切になります。自分の経験のみで将来を判断するのは危険であって、古典を通じて現在の課題がどこにあり、将来の望ましいあり方を考えたいと思います。
 古典に興味がある人、好奇心の強い人、そしてコミニケションが好きな人の参加を待っています。                                  

成績評価方法

ゼミの出席、発表や質問内容、およびゼミ合宿の参加状況などで総合的に評価します。