教員紹介

細井 保

教員紹介

ゼミのテーマ

「多数派と少数派」「同質性と多様性」「排斥と包摂」

ゼミの目的及び概要

 本演習では、これまでサッカーという大衆文化を入り口として大衆社会と政治について考察してきた。テーマへのこの接近の仕方はかわらない。
 担当教員は、ウィーン市を首都とするオーストリア共和国を研究対象としているが、2015年の難民の大量流入、コロナ禍、ウクライナ戦争の開始をへて変容するここ10年間の中欧の社会・政治に注目し、移民や難民の受け入れと排除、多様性を許容する人々と逆に同質性を重視する人々、リベラル・デモクラシーとポピュリズムの対立について考察している。サッカーという大衆文化現象は、これらの緊張と対立をしばしば顕現させる。
 演習では、文献の講読と報告、履修者同士によるグループディスカッション、各自が関心のあるテーマをとりあげてのゼミ論の執筆をしている。こうした学習を通して、個人、社会、政治が、上記の緊張と対立にどのように向き合いべきなのか、という問いをそれぞれが発していってほしい。
 テーマの間口の広さは、本演習の特徴ということができるだろう。これまで培ってきた履修者の自主性を重んじる本演習の方針を生かし、社会、政治における多様性/同質性、少数派/多数派、包摂/排除についての理解を深めていきたい。

ゼミの年間計画(合宿などを含む)

 2025年度は、春学期に石川幹人『だからフェイクにだまされる — 進化心理学から読み解く』筑摩書房(2022年)、山田圭一『フェイクニュースを哲学する ― 何を信じるべきか』岩波書店(2024年)をとりあげた。
 上記二冊の議論にふれることをとおして、個人、市民社会、政治は、フェイクの背後に潜む少数派を攻撃し、排斥を助長し、仲間内の同質性を強調しようとする傾向にどう向き合うべきなのかを、春学期は考えた。
 秋学期は、各自が夏のあいだにテーマを発見し、それぞれのゼミ論執筆へ向けた報告を実施する。また今年度も、秋学期にゼミ合宿を実施する予定である。
 2026年度も、孤立化と群衆化が同時に進む社会に潜む、緊張と対立を考える文献をとりあげ、同様のスケジュールで進める予定である。

学生へのメッセージ

 「誰もが自分の学びを実現できる」「教員と一緒に実際にボールを蹴る」といったゼミの雰囲気は、引き続き堅持していくつもりです。テーマに関心があり、演習に能動的にかかわってくれる応募者は、積極的に受け入れる予定です。条件は志望票をしっかりと書き、面接に参加することです。

成績評価方法

平常点(報告内容および討論)、夏期課題、ゼミ論文(400字×25枚=10000字程度)を総合して評価する。