教員紹介

細井 保

教員紹介

ゼミのテーマ

多数派と少数派、同質性と多様性、排斥と包摂

ゼミの目的及び概要

本演習では、サッカーという大衆文化を入り口として大衆社会と政治について考察してきた。この基本テーマはかわらない。
 担当教員は、ウィーン市を首都とするオーストリア共和国を研究対象としているが、同地での在外研究をへて、2015年の難民の大量流入以降の中欧における社会・政治の変容について、移民や難民の受け入れと排除、多様性を許容する人々と逆に同質性を重視する人々、リベラル・デモクラシーとポピュリズムの対立に注目しながら考察している。サッカーという大衆文化現象は、これらの緊張と対立をしばしば顕現させる。
 演習では、文献の講読と報告、履修者同士によるグループディスカッション、各自が関心のあるテーマをとりあげてのゼミ論の執筆をする。こうした学習を通して、個人、市民社会、政治が、上記の緊張と対立にどのように向き合うべきなのか、という問いをそれぞれが発していってほしい。
 テーマの間口の広さは、本演習の特徴ということができるだろう。これまで培ってきた履修者の自主性を重んじる本演習の方針を生かし、担当教員が研究で得た知見を反映させながら、大衆社会と政治についての理解をさらに深めていきたい。

ゼミの年間計画(合宿などを含む)

 2023年度は、春学期に治部れんげ著『「男女格差後進国」の衝撃』小学館新書、ヴォルテール著、斉藤悦則訳『寛容論』光文社古典新訳文庫をとりあげた。
 『「男女格差後進国」の衝撃』は、日本社会における無意識のジェンダー・バイアスを指摘する。性別をとわず、従来のジェンダー規範に無意識にとらわれていることによって、そもそも格差自体に気づかなくなってしまい、これが性別による役割分担を固定化させる。この無意識を自覚することがバイアスの克服へ向けた第一歩となる。
 『寛容論』は、18世紀のフランスの啓蒙思想家ヴォルテールがあらわした少数派、多様性、包摂を考えるための古典である。宗教的な狂信と差別から引き起こされた冤罪事件(カラス事件)にたいし、ヴォルテールは、そもそも不寛容は宗教の教えなのかと問題を提起し、そんなはずはないと述べる。むしろこれは社会に不和をもたらすものであり、狂信的な不寛容を避けなければならないとする。
 以上の議論にふれることをとおして、個人、市民社会、政治は、多数派と少数派、排斥と包摂、同質性と多様性といった緊張にどう向き合うべきなのかを、春学期は考えた。また今年度も、9月中旬に夏合宿を実施した。秋学期は、各自が夏のあいだにテーマを発見し、それぞれのゼミ論執筆へ向けた報告を実施する。2024年度も、上記の緊張と対立を考える文献をとりあげ、同様のスケジュールで進める予定である。

学生へのメッセージ

「誰もが自分の学びを実現できる」「教員と一緒に実際にボールを蹴る」といったゼミの雰囲気は、引き続き堅持していくつもりです。テーマに関心があり、演習に能動的にかかわってくれる応募者は、学科学年にかかわらず積極的に受け入れる予定です。条件は志望票をしっかりと書き、面接に参加することです。

成績評価方法

平常点(報告内容および討論)、夏期課題、ゼミ論文(400字×25枚=10000字程度)を総合して評価する。