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株式会社マガジンハウス 『Tarzan』編集長 大田原透 さん

2017年05月02日

プロフィール

株式会社マガジンハウス 『Tarzan』編集長 大田原透 さん

株式会社マガジンハウス 『Tarzan』編集長 大田原透 さん

大田原透(Toru Otawara)さん

1968年東京生まれ。1991年に文学部史学科を卒業後、マガジンハウスに入社。1992年『Tarzan』編集部に配属。2007年編集長に就任。現在に至る。高校から続ける登山や、ランニング、自転車を楽しみ、雑誌やウェブサイトを通じて、健康、体力向上のための情報発信を行っている。

雑誌編集は人と人をつなぐ仕事 出会いを生かすことの大切さ

マガジンハウスが発行する『Tarzan』の編集長を、約10年にわたって務める大田原透さん。法政二高と大学時代での 登山の経験が、今の仕事に生かされていると語ります。そして、人に会うことに臆病になるなと、若い人に提言します。

興味のあることは何でも見てみよう挑戦してみようという気概

大学生時代は単独行の山行に何度も出かけ、そこでいろいろな人と出会った

大学生時代は単独行の山行に何度も出かけ、そこでいろいろな人と出会った

1991年にマガジンハウスに入社して、1992年に『Tarzan』編集部に配属されました。以来、25年間にわたって同誌の編集に携わっています。2007年に編集長に就いてから10年が経ちました。

『Tarzan』は、快適なライフスタイルをコンセプトに、健康、スポーツ、フィットネスなどをテーマにした雑誌です。1986年の創刊以来、ライフスタイルの中に体力づくりを取り入れることを提唱しています。

入社2年目からずっと同誌に携わっているので、「若い頃から編集志望だったのですか」「体力づくりに興味を持っていたのですか」とよく聞かれます。しかし、必ずしもそうではありませんでした。私は、法政二高出身で、教わった先生に影響を受けて教員志望だったこともあります。

一方、高校時代は登山部に所属し、主将を務めました。身体を動かすことは自分の性に合っていたのです。そして二高には、自由闊達な雰囲気がありました。興味のあることは何でも見てみよう、挑戦してみようという気概を持った生徒が多かったと思います。私もその一人でした。

大学では歴史を学びたいと強く思い、文学部史学科に進学しました。授業に必ず出席してそこで集中して学ぶようにしましたね。授業以外の時間は、むしろ、学外でいろいろなことを経験して過ごしました。

体育会系から文化系まで若い頃の経験が今の仕事に生きる

世界各地に赴き走る。イスタンブールマラソンに参加した際、現地のランナーと(撮影/千葉諭)

世界各地に赴き走る。イスタンブールマラソンに参加した際、現地のランナーと(撮影/千葉諭)

大学に進んでからも、二高の登山部のコーチを務めて、高校生の自主性をサポートしました。登山は余力を残して帰ってこなければならない。絶対に遭難してはいけないのです。そのために、体力の最も劣るメンバーに合わせた計画を立て、常にリスクの回避が求められました。

一方、雑誌の仕事で大切なことは、まず部数を下げないことです。その上で面白いと思ったことを、時代に即したかたちで、継続的に提供することです。部数を下げないこと、継続的に情報を提供することは、登山で危険を回避して必ず戻るためのマネジメントに通じると思います。

編集長となってリーダーシップを発揮するときも、決して独りよがりにならないように心がけています。編集部員一人一人が主体的に取り組めるようにしているのも、登山において、各メンバーの体調管理に気を配り、最後まで歩いて帰る動機を持ち続けてもらうようにした経験が生きています。

登山以外の経験では、二高の恩師の渡辺賢二先生が、旧日本陸軍が戦前に開設した登戸研究所の調査研究をしておられ、大学生になってからも「歴史を学んでいるのだから」とその活動に誘っていただき、報告書も共同執筆しました。

同じ時期に、縁あって作家の井上ひさし先生の書生も経験しました。渡辺先生や井上先生との出会いやそこでの経験が、ものごとを伝える手段としての雑誌づくりに、興味を持つきっかけになったのは事実です。

編集は人に会うのが仕事会いたい人に会えるのは学生の時だけ

学生の時は、興味のあることは何でも経験してみることが大切だと思います。特に、会いたいと思う人に会いに行けるのは、学生だからできることではないでしょうか。最近の若い人に会うと、そうした積極性が欠けているのではと思うことがあります。

例えば『Tarzan』では、スポーツ用具のメーカーから、アスリート、スポーツイベントのオーガナイザー、研究者など取材対象は幅広い。さらに市民ランナーやジムに通う一般の読者まで、たくさんの人に会います。しかし、仕事で会う人のほとんどは、利害関係が生まれ、どうしてもメリット、デメリットを考えてしまう。一方、会う相手が学生であれば、損得抜きで会って話ができます。これは学生の専売特許ではないでしょうか。

先日、法政大学の卒業生で大手出版社に勤めている方から連絡をもらいました。彼が学生だった10年ほど前に一度会っています。その時、私が「大学の後輩には積極的に会うようにしている。出版業界で同じ仲間ができればうれしいから」と言ったのを覚えていたのです。きっと仕事に少し余裕ができて、報告をしたいと思ったのではないでしょうか。近々一献傾けましょうという話をしています。

仕事で、自由な気概や進取の気象を持っている方だなと感じると、法政大学の出身者であることが多い。お互いに、「やっぱりそうでしたか」ということになって、一気に距離が縮まります。

2020年に東京オリンピックが開催されます。開催目的にアスリートの育成、インフラ整備、おもてなしが言われています。スポーツの気運が高まる中で、オリンピック開催を機に、日本人の体力向上も欠かせないと私は考えています。『Tarzan』は、一冊の雑誌でしかなく微力かもしれませんが、そのためにも情報発信を続けて、読者の体力づくりと健康に寄与していきたいと考えています。

これからもどこかで、同窓の方と仕事ができる機会が持てれば、さらに楽しくなるだろうと思っています。

(初出:広報誌『法政』2016年度3月号)