OB・OGインタビュー(2016年度)

ANAウイングス株式会社 運航部 B735乗員室乗員第2グループ 副操縦士 坪山 直美 さん

  • 2016年12月06日
OB・OGインタビュー(2016年度)

プロフィール

ANAウイングス株式会社 運航部 B735乗員室乗員第2グループ 副操縦士 坪山 直美 さん

ANAウイングス株式会社 運航部 B735乗員室乗員第2グループ 副操縦士 坪山 直美 さん

坪山 直美(Naomi Tsuboyama)さん

1989年東京都生まれ。2008年度、法政大学理工学部機械工学科航空操縦学専修の1期生として入学。在学中は、フライングディスクを用いるスポーツ競技、アルティメットのサークルに所属しながら、履修課程で厳しい飛行訓練などを学び2011年度卒業。2012年4月、ANAホールディングス傘下のANAウイングスに入社。地上勤務と飛行訓練などを経て、2015年からボーイング737-500のパイロットとして勤務している。

後に続く後輩たちのためにもプロのパイロットとして成長したい

ANAのボーイング737でB737-500の運航乗務員として働く坪山直美さん。
理工学部機械工学科航空操縦学専修の1期生として道を切り拓きながら、目標に向かって歩み続けています。

今も私のベースにある法政大学での4年間

ANAグループの小型機の運航を担うANAウイングスで、副操縦士として勤務しています。小型機といっても、私が乗務しているボーイング737の座席数は最大で126席になります。北海道から沖縄まで、多いときには1日に5便、長いときには延べで6時間ほど操縦桿を握ります。勤務日はもちろん、休日も翌日のフライトのために体調を整え、お客様を安全にかつ予定通りに運ぶ緊張感を持ちながら、目標に向かって充実した毎日を過ごしています。

中学生のときに、「空から景色を眺められたら素敵だな」と思い、高校生になって「空を飛びたい」という漠然とした夢を持ち、今の道に進むことを決めました。あの頃の淡い思いがこうして現実になっていることを考えると、わずか10年ほどの間に、私自身が大きく変わったのだと実感します。今の私は、法政大学での4年間がベースにあるのだと断言できます。

私がパイロットになりたいという夢を持ち始めたころは、私立大学でパイロット養成コースが設立され始めたときと重なります。法政大学でも理工学部に航空操縦学専修が設置されると知り、できるだけ早くライセンスを取得するためにも大学に進学しようと考えました。入学は2008年4月。法政大学の同専修の1期生になります。合格したとき、これで夢に一歩近づいたと、ワクワクした気持ちになったことを覚えています。

でもそれは、スタートラインに立っただけのこと。パイロットになることがどれだけ大変なことなのかを知るのは、大学で授業を受けてからです。

教官を目標に同期の仲間と支え合った4年間

航空操縦学専修の同期6人で旅行したときの写真。後列左から三森健太郎さん、橋本竜太朗さん、坪山直美さん、松嶋一倫さん、前列加藤昌弘さん

航空操縦学専修の同期6人で旅行したときの写真。後列右から松嶋一倫さん、坪山直美さん、橋本竜太朗さん、後列左から三森健太郎さん、前列加藤昌弘さん

2年次からの飛行訓練で、知識や技術だけでは飛行機は飛ばせないことを痛感しました。年齢を重ねると、例えば自転車に乗れる、自動車を運転できるといったように、できることが増えますよね。でも空の上では、そうした感覚が一切否定されました。まっすぐ飛ぶこともできない。地上に足が着いていないことを意識し、恐怖心を感じることも初めてでした。

最も自分が足りないと感じたのは、判断力と決断力です。悪天候の下で燃料が限られた状況の中、引き返すのか、不時着をするのか、それとも目的地に向かうのか、そうしたシミュレーションを何度も繰り返します。地上のことであれば知識と技術があれば正解が得られますが、必ずしもそうはならない。プラスアルファの瞬時の判断と決断が求められるのです。

実は在学中に、仕事として必要な事業用ライセンスの取得をあきらめようと考えたこともありました。思い直したのは、教授の持つ判断力と決断力を横で見て、自分もこのような素養を身に付けたい、そして、プロのパイロットとして成長したいと思ったからです。そのとき、初めて夢を具体的な目標として捉えられたのだと思っています。

何よりも、寮生活を共にしながら、一緒に実習に取り組んできた、私を含め同期6人の存在が大きかった。私たちは1期生でしたから、経験を教えてくれる先輩がいなくて、自分たちで乗り越えていかなければならないことばかりでした。将来に対する不安や、履修課程での悩みなどを共有し、お互いに励まし合ってきたことで、夢をあきらめずに頑張ってこられたのだと思います。

後輩たちとの出会いで自分のプロとしての意識を再認識

フライト前の身が引き締まるときに機長と

フライト前の身が引き締まるときに機長と

3年次の3月に、東日本大震災が発生しました。実習が行われる桶川の寮で、計画停電のため懐中電灯で手元を照らしながら、1年後の自分たちの姿を語り合ったことを今でも思い出します。おかげで6人が皆、航空会社に就職できて、国内の空の上を駆け巡っています。

私はANAウイングスで地上勤務と飛行訓練を経て、フライト業務に就いて2年目に入りました。実際に仕事として携わると、大学で学んだ航空法などの法律や、安全工学などの理論が生きています。私自身はいわゆる「リケジョ」ではなく、どちらかというと機械工学などは苦手でしたが、責任ある立場に身を置くと、あのとき学んだ知識が現場で役に立つのだと実感することが多々あります。

今年、法政大学の後輩がANAウイングスに入社しました。彼女は在学中に私と同じように悩んでいたことがあり、相談を受けてプロのパイロットに進むことを後押ししたことがありました。「私を目標にしたい」と言うので、「すぐに追いつくわよ」と返したのですが、航空操縦学専修の1期生として、そういう存在にならなければならないのかもしれませんね。

また先日は、同じ志を持つ女子大生に出会いました。こうした邂逅はうれしいですね。私が教授にあこがれて、プロのパイロットになる意思を固めたように、後輩たちも私を見て新たな夢を持ってもらえればと思います。

まず私が目指すのは機長になること。航空操縦のゼネラリストとして、知識も技術も、そして判断力と決断力を持つために、まだまだ学ぶことがたくさんあります。後輩たちにも負けないように、頑張りたいと思っています。

(初出:広報誌『法政』2016年度10月号)