OB・OGインタビュー(2016年度)

株式会社五島軒 取締役社長 若山 直 さん

  • 2016年08月30日
OB・OGインタビュー(2016年度)

プロフィール

明治・大正の息吹を感じさせる五島軒の宴会場にて

明治・大正の息吹を感じさせる五島軒の宴会場にて

若山 直(Nao Wakayama)さん

1945年北海道函館市生まれ。
経済学部卒業。1970年に五島軒入社。渡仏し、研修生として学校、レストラン、ホテルに勤務。1975年に帰国し企画部長に就任。1984年に専務に就任し、1985年から現職。函館日仏協会の会長を務めるなど、市の名士として広く活躍している。

老舗レストランの四代目としてブランドの継承と発展を担う

若山直さんは、函館で1879(明治12)年に創業した老舗レストラン・五島軒の四代目社長。受け継いできた老舗のブランドを守りながらも新たな事業に挑戦し、会社の発展に努めています。

創業137年のレストランを函館で経営

五島軒本店旧館は、登録有形文化財に指定されている

五島軒本店旧館は、登録有形文化財に指定されている

函館のレストラン、五島軒で社長をしています。初代の若山惣太郎が五島軒を創業したのが、1879(明治12)年。私で四代目です。私は経済学部出身ですが、三代目である父も経済学部出身。私の三男も経済学部を出ており、親子三代で法政経済学部のOBなんです。

五島軒は今年で137年目を迎えますが、長い歴史の中ではさまざまなことがありました。函館の大火のため明治から昭和にかけて4回店舗を焼失していますし、終戦後の占領期には5年間、米占領軍に南北海道司令部として接収されていたこともあります。

その間は、他店が営業する中、市民館の一角を借り惣菜を売って過ごしました。そして営業再開後には、五島軒の味を覚えていてくれた市民の皆さんが、店にまた来てくれるようになったんです。

その後も順調に経営は進んでいたのですが、函館で人口減少が顕著になり、受け継いできたブランドを守りつつ、飲食業にとどまらない事業展開に挑むことになりました。

1988年の青函トンネル開通記念博覧会を機に専用工場を北斗市に建設。レトルトカレーや洋菓子などの製造を新事業として立ち上げました。博覧会で天皇陛下もご賞味なさったカレーがおかげさまでヒットし、現在では製造部門の売り上げが飲食部門を上回るようになっています。

こうした新しい事業の展開の必要性は人口動態を見ていれば分かることで、学生時代の経済の勉強の成果というほどのものではないかもしれませんが、法政で養われた「先を見通す目」が役立ったように思います。

休日の楽しみは読書と小説の執筆

小説を寄稿している同人誌『海峡』

小説を寄稿している同人誌『海峡』

運動はウオーキングくらいで、基本的にインドア派。休日は読書をして過ごすことが多いですね。読むだけでなく、15年ほど前からは自分で短編小説を書くようになりました。書いた作品は、地元紙に投稿したり、『海峡』という私が代表を務める同人誌で発表したりしています。『海峡』では美大を出た娘にイラストを付けてもらっているほか、長男が書いた詩を載せることもあって、家族ぐるみで関わっています。

小説を書いている間は、仕事のことも全て忘れることができます。いい気分転換になりますね。また、小説を書き始めたら、会う人がみんな小説の素材に思えてくるようになりました。今までとは違った視点で人物が見られるようになって、面白いものです。

卒業後50年の今もゼミで勉強会を開催

卒業後の中山ゼミでの集まりを五島軒で開催したときの一枚

卒業後の中山ゼミでの集まりを五島軒で開催したときの一枚

家が商売をやっていますから、私は最初、経営学部に入学しました。しかし、どうしても経済学原論を勉強したくなって、2年生のときに経済学部に転部したんです。自分で言うのも何ですが、学生時代はよく勉強しましたね。経済学部に転部してすぐに、発足したばかりの恐慌論研究会に入会しました。主任は石垣今朝吉先生。いろいろなゼミから学生が集まり、1929年の世界大恐慌をテーマに研究を進めていきました。

そして4年生のとき、中山弘正先生がゼミを開講することになり、入ゼミと同時に3年生を対象にゼミ生募集を任されました。4年生になっても恐慌論研究会は続けていましたから、かなり勉強していたことになります。

卒業してからも中山ゼミと恐慌論研究会のメンバーは年に1回集まっていて、それは現在も続いています。ただ旧交を温めるだけではありません。各自で勉強を進めておき、集まって意見を戦わせるのです。まるで学生時代のゼミが今も続いているような感じです。卒業後50年経ってもこのようなかたちで集まるというのは、珍しいかもしれません。これだけ続いているのは、楽しいから。経済の勉強をするのが、楽しくて仕方がないのです。

学生の皆さんも、好奇心を持って、4年という時間の中で本当に楽しいと思えるものを見つけてほしいですね。勉強は「勉めることを強いる」と書くので苦労してやるようなイメージがありますが、本来は楽しいもの。「勉強」と言わず、「道楽」と言った方がいいように思います。

これは学問には限りません。自分が楽しいと思えるものを見つけること。楽しいことをしていれば、周りには失敗と見えることでも、本人には痛手になりません。

そしてそうしたものが見つかったら、ぜひ続けてほしい。楽しいものを見つけ、継続することが、皆さんの人生をきっと豊かにしてくれるはずです。

(初出:広報誌『法政』2016年度6・7月号)