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【ライサポ】ライサポが聞く!図書館インタビュー 第2回 現代福祉学部 佐藤 繭美教授(後編)

  • 2021年11月18日
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「今の2年生は大学に来ていなくって図書館にもやっぱり足を運んだことがないと知って、『え!?』ってなりました」
現代福祉学部 教授 佐藤 繭美(さとう まゆみ)

図書館学生ボランティアのライブラリーサポーターが大学の先生と図書館や本に関するお話をお聞きするインタビュー企画「ライサポが聞く!図書館インタビュー」。第2回目は現代福祉学部の佐藤 繭美先生にお話しを伺いました。前編に引き続き今回の後編では、コロナ禍で大学生になった2年生の悩み、電子書籍との付き合い方や大学生へのおすすめ本についてお聞きしました。

【前編】「本を通して何かが起きるかもしれない、という感覚を大学生に持ってもらいたい」
【後編】「今の2年生は大学に来ていなくって図書館にもやっぱり足を運んだことがないと知って、「え!?」ってなりました」

現代福祉学部棟にて(左から)佐藤先生、Eさん、Sさん

6.文献探しに悩んでいる2年生

———S 社会学部の学生が多分今、コロナ禍の期末課題に追い込まれていると思うんです。いい意味で色々なジャンルを勉強するからこそ、色んな情報が毎日頭に入ってきちゃって、さらにそれをレポートにしないといけなくて、最終的に何を書いているかわからなくなってパンクするというのが一連の流れになっているような気がしています。私もそうですし、もう一人のライサポ2年生のメンバーを見ていても「何書いているかわかんなくなってくる」みたいなことを言っています。

佐藤 そっか…。そんな状況なんですね。

———S 試験がほぼほぼなくなっていて、色々なレポートで最後成績付けますよ、頑張ってください、みたいな感じです。私は週2で大学に来ているので図書館に行ったり、地域の図書館に行けますけど、まだ一回も登校機会がない人もいて、大学図書館に来る機会もない、まだ一回も行ったことないという人も結構いるんです。

佐藤 今日のゼミで大学ツアーを2年生に向けてするんですけど、それぐらい今の2年生は大学に来ていなくって図書館にもやっぱり足を運んだことがない、というのを私は先週知って驚きました。ものを調べる方法が分からないっていう人が多いです。

———S 本当にその通りだと思います。本当にそういう学生の方が…。

佐藤 ね、今の2年生全体が多分そうなんだよね。

———S 私も自信あるかと言われると…。司書資格の勉強をしているから検索の方法や論文の調べ方はある程度勉強したんですけど、多分それを取らなかったらずっと「なんとなくこういう感じでいいんだよね?」みたいな感覚で論文や文献を探していたと思います。

佐藤 多分ネットで検索すると限られた情報しか出てこなくなっちゃうから、なんかこう「切り口」が分からなくなっています、みたいなことを2年生から言われました。本を探せないってこんなに大変なんだっていうのはやっぱり思ったので、今日急遽大学ツアーをすることにしたんです。図書館も見てきなさいって言ってそのツアーに組み込んでいるんだけれども…。私なんかは図書館に行っていた分、離れて町の古本屋さんに行くっていうのがリセット方法だったけど、大学に来ていない人たちってなんか、それだけではやっぱり足りないんだろうね。なんか色々課題がありそうだけどね。

———S 今は自分も図書館を利用するし、文献をインターネットで調べたりもするんですけど、1年生の頃って図書館に全く行けなかったので、レポートを出されても本当にインターネット頼り、みたいなところがありました。特に春学期は地域の図書館すら開いていなくて、本当にネットしかなくって、多角的じゃないというか、中身が薄いような…。

佐藤 うんうん。一つの素材とかしか取れないし扱えないもんね。

———S 一応OPACは使えるんで調べることはできたんですけど、調べたところで…みたいな。

佐藤 この本をどうやって探していこう、みたいな感じですよね。

———S 何をどうやって調べたらそこにたどり着けるのかもわからない、といった感じでずっとさまよっていました。今も2年生では半分くらいはそうやって悩んでいる人がいるんじゃないかなと思います。

佐藤 今の2年生の方が1年生よりも色々知らないですよ、って先週言われて、私もびっくりしました。「そういうもんなの?」って言ったら、この現代福祉学部棟の一階のオンデマンドプリントシステムのやり方ですらわからないって言われちゃって、「それは大変!」っていう(笑)。大学生になり切れなくなっちゃうから…。

———S いつまでも高校4年生って感じなんですよね。

佐藤 そうそう。そうですよね。本当に。

———S 1個下の1年生はもう大学1年生なんですけど、私たちはまだ高校5年生なんですよ(笑)。

佐藤 だから今の2年生が一番弊害を被っているっていうのは本当に最近気づきました。すみませんっていう感じなんですけど。

———E 私も今気づきました…。

佐藤 それぐらい2年生って、全然ですもんね。1年生は先生たちも無理して対面にしようと少し動いていて、1年生だけの授業は対面に、という風に変わってきています。1年生に学校に来てもらう方法を模索しているんだけども、2年生はほぼゼロでしたもんね。

———S ゼロですし、今もゼロの人が何人かいます。

佐藤 あ、そっか。今もゼロの人もいるのか…。

———S ゼミに入れば週1は…私はスポーツもとっているので週2です。私が話した人では、1年の時から数えて4回行ったかな…?みたいな人もいて。その人は今後も行く予定はまだない、4月に健康診断行ったきり行ってないっていう感じです。

佐藤 そうなのね。いろいろと考えないといけないですね。

———S 図書館とかも行かないんじゃないかなーと思いますけど。

Sさんはシーンに応じて電子書籍と紙の本を併用

7.電子書籍の需要

佐藤 電子書籍に移行するっていうような方向が動いてきてはいるけれど、私は実はあんまりキンドルとかもやってないんです。仲間から強制的にやるように言われてみるようになりましたけど、みんなはそういう電子書籍みたいなのって慣れているの?

———S あ、私今持っています。

佐藤 お~。

———S ちょうど奇跡的に…今ここにあります。

佐藤 あぁ、本当だ。へ~。

———S ただ家では使わないです。外に行くときに、電車が長いときとかにパラって開くくらいの感覚でしか使っていないです。私も活字派なので…(笑)。ただ教科書とか持っている中にさらに本を入れていくのが重たいな、って思ったりとか、本がカバンの中でぐにゃって曲がったりとかが嫌なんです。本は大切にしておきたいと思ってしまうタイプなので、「持ち歩き用」として電子は持っています。でも8:2くらいの割合で活字の、紙の本ばかり読んでますね。文献とかもパソコンとかで見るよりは借りてきて読みたい派です。

佐藤 そうですよね。何回も行ったり来たりしながらね。読みますからね。でも電子書籍って、高校くらいでは当たり前にあったものなんですか?そんなでもない?

———E 私の時は…なかったと思います。

佐藤 2つくらい(年齢が)違うと、変わってくるのかしら。

———S いや、私も…。高校とかで電子書籍に親しんだかっていうとそうでもないかもしれないですね。

佐藤 そっか…じゃあなかなかね、学校に来ない人達が電子書籍を見るって、ノウハウがないとあんまり見れないものですかね。

———E 私はそもそも電子書籍という発想が全然なくて、コロナ禍とかで図書館とかが電子書籍をやりました、とかっていうので繋げてみたり、っていうのはしますけど、でもやっぱり論文とかで学ぶときはOPACで探して、論文は検索サイトで探して、ダウンロードして、って感じなので…。やっぱりなかなか電子書籍使ってなにか調べて、本読んで、っていうのはなかなかないですね。

佐藤 電子書籍の使い方、じゃないけれども、大学に来ないような人たちにはね、多分「電子書籍見てください」みたいな案内だけでは繋がらないんだろうなっていうのはあります。今回2年生があまりにも色々なことを知らない、っていうことがよくわかって、私たちは結構親切に「ここにあげました」って連絡しているつもりでも、やはり情報の渦にのまれちゃっていて、もう見られない、っていうのもありますよね。

———S いまだにVPN接続できないって人、いますね。

佐藤 本当に?!

———S います、全然います。私はレポート書くときとかは結構VPN接続をして新聞記事とかデータベースとか使って過去の事例を調べたりします。1000文字前後のレポートだとあまりに文献が多すぎると文字数をオーバーしてしまうので、あえて小さい論文とかだけでまとめたりとか、過去の新聞記事から引っ張ってきたりとかしてまとめたりします。なので、結構VPN接続を使うんですけど、この間「やったことない」みたいな人がいて、本当に衝撃でした。「レポート書けない」って言う人に「VPN接続して調べればいいじゃん」ってさらっと言ったら「何それ」みたいな。私も「え?」ってなって。

佐藤 アクセスできないって言われて、私も「アクセスできない」がよくわからなくって聞いていくとやっぱりVPN接続していない、っていうことなんですよね。

———S 私もそれで「え?そこから?」みたいな感じになってしまって、話を聞いたら1年の時確かに情報はあった気がするけど別にしてない、みたいな。

佐藤 そうなんですよね。もったいないよね。あればね、宝庫なはずなんだけどもそこにたどりつけない。情報難民じゃないけれども、そうやって言われている人たちがさらに多く、しかも若い人たちが増えているのかなっていう感覚がやっぱりあるので…。うまく図書館も電子書籍に移行できるといい部分もあるし、活字文化もまだ廃れていかないかな。私もそうだしEさんやSさんのような若い人たちも活字で、って言ってくださっているのでそれが廃れていくってことはそうないのかなと思います。この時代は本当に、デジタルも併用していかないと、多分やっていけない時代にはなるのかな、と思います。私も頑張ります(笑)。電子書籍…慣れないんだけどね。でも画面上でマーカーを付けられたり、私まだそこまでやっていないのでわからないんだけど…。

———S それは結構読んでいて便利だなと思います。マーカーをつけて、それをパソコンに同期すればパソコンでも見られるので、しかもそこのページにすぐ飛べるんですよ。あんまり専門書とかは電子で読まないんですけど、たまに読んだときに「ここ重要だな」って思ったところにマークをしておけば、パソコンに一覧でドン、って出てくるので、多分使いこなせたら相当便利なんだろうなと思います。

佐藤 英語の論文なんか読むと、私もやっぱり何回も読まないとわからないから、こんな分厚いものがあるんだけどね、1個は紙媒体で注文したらやっぱりこのコロナで2か月以上届かなかったんですよね。それで研究仲間に「電子にしなさい!」って怒られて(笑)。「すぐ来るよ」って言われて。それは確かに…っていうね。そういう不便さもあったので、本当は活字の方が何回も読むからいいんだけれども…そんな話です。私が一番今気になっているのは「電子書籍」です。

一同:(笑)

———E:法政も結構電子書籍の方向に…

佐藤 そうですよね。いっぱいあるんですよね。いっぱい、とか言っちゃった(笑)。

職員:(インタビューに同席している)職員2名とも、実は紙の方が好きなんです…。

一同:(笑)

佐藤 (笑) でもそうですよね。だから、行かなきゃいけない時代に、行かざるを得なくなってきたなぁという感覚はあります。

———S ライサポも多分、みんな紙派ですよね。電子派です!っていう人多分いないような気がする。

佐藤 やっぱそうなんですね

———S 結構ライサポの企画とかでビブリオバトルとかをしても電子でドン!って見せている人はあんまりいないような印象がありますね。みんな紙の本を紹介しているイメージがあります。なので、そんな電子書籍をバリバリ使っているかというとそうではないのかもしれないですね。私みたいにサブ的に「持ち運びが楽だから」くらいの理由で使っている人はいるかもしれないんですけど、それだけで読書をしている人はあんまりいないかな、私の家にも紙の本たくさんありますし。

電子派?紙派? 読書好きならではのトークに花が咲きました

8.先生がおすすめする大学生に読んでほしい本

———S なにか具体的に一冊…まだ何も知らない2年生くらいまでに「これとりあえず読んでみませんか?」みたいな本があったらお聞きしたいです。

佐藤 何がいいんだろう。さっき言った神谷美恵子先生の本もいいんだけれども、多分時代感みたいなものもあると思うので、どっちかっていうと鷲田清一先生の本がお勧めです。鷲田先生は大阪大学の副学長だったかな、哲学の先生なんだけれども、私が大学院生の時は鷲田先生が流行っていた時期でもありました。哲学の世界から『「聴く」ことの力』っていう本が出ています。自分のことを自分らしく表明できない人たちっていうのが世の中にはいて、でもそれが社会福祉サービスの対象の人だけの話ではなくて、実は社会全体にそういう人たちが色んな所にいるんだよ、だから「話を聞いてみる」ってことはまずとても大事なんだ、ってことを言っている本です。結構色々な人の話だとか、社会の中で聞くことの対象とならない人たちに目を向けている本なので、それはすごく面白くって、今の社会的な情勢の中にもすごく合っているんじゃないかなと思います。「話したい!」「何か表明をしたい!」っていう風に思っている人はいるけれども、どこの場でその話をしたらいいんだろうというのが分かってない人たちもやっぱりいるので、そういう人の話をまず聞いてみよう!というところから始めるというのもいいかなって思うので、鷲田清一先生の『「聴く」ことの力』って今の自分たちの時代にマッチしているのかなと思います。なので、それはご推薦します。いかがでしょう。

———E 確かどこかの新聞で連載されていましたよね。

佐藤 そうそう!朝日新聞で、本から一節抜き出して、毎日今でもやってらっしゃっています。すごく哲学を面白く書く先生なので、「ファッションを着て歩こう」だとか、やっぱり手に取ったりします。だけど中に書いてあることは日常の中の哲学性みたいなことなんだけれども、それが「哲学を哲学として見せない」形でタイトルをつけてくださっているので、多分色々なジャンルの人が手に取りやすい書物でもあります。でも結局は哲学につながっている、っていうルートを作っておられて、すごく読みやすいし、面白いし、でもそれがこの社会の在り様を考える上では非常に重要な示唆をわかりやすく出してくれていると思うので、それはぜひ読んでいただきたいな、と思います。鷲田先生いっぱい出してるから(笑)。ありますよね?大学にも。(笑)ぜひ見てみてください。

———E・S ありがとうございました。