将来の環境や次世代の利益を損なわないで社会が発展することを指向して、地球環境保全に貢献する「グリーンテクノロジー」を具体化した「グリーンソサエティー」を実現するための研究に取り組みました。2003年度の設立当初より一貫して取り組んでいる持続可能な地球環境をエンジニアリングの視点から実現することを命題として、先端材料およびモノづくりプロセスといった基盤研究を進めました。そのため、グリーンソサエティーを実現する(ABC+3D)先端材料プロセスの発信をめざしました。精密な三次元(3D)構造作製のキーワードとして、3つの基本テーマ、A(Additive Manufacturing)、B(Biologically mediated (inspired) Control)、C(Chemically mediated Control)に取り組み、劇的に変革する産業構造やエネルギーフローを見据えた基盤技術および知識を確立しました。
心臓は血液を他の臓器に送り出す機能を有する重要な器官ですが、心筋細胞シート等の先進医療においても細胞の配置はランダムであり、心臓と同等の機能を発揮することは困難です。そこで、我々が開発したアガロースマイクロチャンバと1細胞配置技術を用いて、心臓と同等の機能を有する心臓3D構造を作製することにより、機能的にも優れた心臓組織を再構成し、再生医療分野における移植組織片の再構成技術の発展に貢献したいと考えています。
細菌胞子は、乾燥、熱、有機溶剤に対して高度に耐性となるように、コートタンパク質および多糖の積層構造を形成しています。有胞子細菌は、その一部の細菌が納豆成分の生産菌として利用される一方、食品の生産過程で混入した胞子は除去が困難という問題があります。本研究は、枯草菌胞子の積層構造の解析、および胞子表層の多糖構造を改変し環境中で拡散できないコントロール可能な胞子の作製を目的としています。
高効率エネルギー変換能を特徴とする生物ナノマシンの設計原理を理解することで、クリーンな生活環境の持続への貢献に役立ちます。また、研究対象である細菌べん毛モーターの力学特性をモータ回転計測手法を開発して明らかにします。さらに、タンパク質を操作することで、自然界では利用できないイオン共役機能を持たせるなど新機能付加について探索します。
天然の光合成装置を産業的に利用するためには、光合成生物から光合成装置を単離し、単離した光合成装置を安定な状態で保存することが必要です。本研究テーマでは、光エネルギーを用いて水を酸化分解し酸素を発生する光化学系IIと呼ばれる光合成装置をシアノバクテリアから無傷で単離するとともに、単離した光化学系II標品の活性を保持したまま長期間安定に保つ技術を開発することを研究の目的とします。
金属は有用な工業材料です。持続可能な社会の観点から、循環型流通の肝となる金属資源供給にバイオプロセスの応用が期待されています。本研究では、多様な金属結合生体分子や大腸菌の金属恒常性を用い、金属資源化を可能にするバイオアブソープションやバイオアキュムレーションに向けた大腸菌のデザインとその育種を行います。
層状粘土鉱物やゼオライトはそれらの層間や細孔を利用した様々な有害物質の吸着能を有します。これまでに、これらの特性を応用した汚水浄化システム(土壌浸透浄化法)が利用されています。しかし、これらの材料はそのままでは水溶液中で微粒子化してフィルターの目詰まりの原因となります。本研究ではこれらの無機イオン交換体のナノ構造の制御や他の材料との複合化を行い、透水性の高い新規土壌浸透浄化システムを開発することを目的とします。
本研究では、生物が持つ高度な機能を再現できる大規模集積回路の設計に取り組みます。例えば、哺乳類の内耳が持つ複雑な非線形ダイナミクスを効率よく集積回路として実装するための手法を開発し、その人工内耳への応用をめざします。また、生物の神経細胞とそのネットワークの複雑ダイナミクスを効率よく集積回路として実装するための手法を開発し、その神経補綴への応用をめざします。
摩擦を低減させるために様々な分野で応用される軸受をターゲットとして、セラミック粒子の積層実装の手法を用いて、軸受用鋼の摺動性と耐摩耗性を向上させるための表面改質プロセスを開発しています。現在までに、ナノ粒子を分散させた部分安定化ジルコニア前駆体溶液を、アルミニウムを蒸着させた軸受用鋼表面に被覆し、雰囲気を制御した熱処理を施すことによって、軸受用鋼と鉄板の間の摩擦係数を低減させることに成功しています。
物質のサイズをナノメートル(10-9メートル)程度まで小さくすると、量子力学の原理に基づき通常のサイズの物質には見られない特異な電子的性質を示すことが知られています。本研究では、ナノメートル(10-9m)からマイクロメートル(10-6m)にわたる様々なサイズの規則性細孔空間中に様々な結晶を成長させることにより、制限空間による物性制御が可能な新しい機能性材料の開発を行います。さらに、それらを用いたネルギーデバイスへの応用をめざしています。
「酸化物・水酸化物微粒子の3D構造制御合成と環境・エネルギー材料への応用」溶液中のプレカーサーをボトムアップするプロセスを高度制御して、3D構造制御した金属酸化物および水酸化物結晶質多孔体を作製し、エネルギー関連材料、環境材料への応用をめざします。ミリ~ミクロン孔を有するマクロ多孔体では連通性と大きな多孔度の両立をはかり、水質浄化材料に応用します。ナノオーダーのメソ孔をもつ結晶質メソ多孔体作製では、プレカーサーとなるナノクラスターのボトムアップにより、電気化学デバイスの高性能化に役立ちます。
自己組織化可能な両親媒性ブロックコポリマーに光反応性基を組み込むことで、ナノスケールの構造体を構築する反応型ソフトマテリアルを開発します。さらに、ナノ構造体の選択的分解反応によって形成されるナノサイズの鋳型を用いることで、機能性ナノ粒子の調製を行います。これらのナノ粒子はサイズが均一であることから、導電体と絶縁体がナノレベルで3D積層化された次世代の電子材料開発において、欠陥のない緻密な相構造の構築が期待されます。
窒化ガリウム(GaN)パワーデバイスは次世代の超高効率電力変換用途に期待され、国家プロジェクト体制で研究開発が進められています。ダイオードはインバーターやコンバーターを構成する重要な素子であり、また、GaN結晶の品質評価の指標としても好適な研究対象です。本研究では独自のデバイス構造・新プロセス技術を開発し、世界最高耐圧を更新し続けています。降伏時にも素子が破壊されない新構造の開発にも成功し高信頼化を進めています。
本テーマでは、環境にやさしく、地殻中に豊富に存在するSiをベースとした半導体量子ドット材料に関する研究を行っています。Si量子ドットの代表的なトップダウン作製手法として、液中レーザー照射法があります。本テーマでは、液中レーザー照射法を実用的な量子ドット生産プロセスとするために、化学的な手法で簡便に作製可能な多孔質Siを、液中レーザー照射法のターゲットとして用い、Si量子ドットコロイドの高効率生成手法の開発を進めています。