教員紹介

岡村 民夫ゼミ

教員紹介

場所とアート

足元に注意せよ

担当教員 岡村民夫教授

ゼミ研究テーマ 場所とアート

私たちはふだん人や物に気をとられて、「場所」を意識しません。しかし、このことはかえって「場所」の重要さを意味しているでしょう。「場所」とは、私たちの心身の活動を足元から条件づける無意識なのです。
アートには、「場所」の作用を気づかせてくれたり、それを変化させる力が備わっています。場所論の文献を読むばかりでなく、アートとつきあうことや、フィールドワークすることを通して、みんなで「場所」について体験的・実践的に考えてみようとするのが、このゼミです。

学生インタビュー(国際文化学部 Sくん)

Sくんにとってゼミとは?

私にとってゼミとは、あるひとつのテーマについて「複数」で考える場所です。ゼミでは、学生同士のコミュニケーションの中で、次から次へと新しい問題が生まれてきます。そしてその問題は、その場に居合わせたゼミ生みんなに共有されるのです。
私はそのような場所に立ち会うのが楽しくて、毎週ゼミの教室へ通っています。

岡村先生はどんな先生ですか?

岡村先生については「歩く人」という印象が一番的確だと思います。先生の著書を一読すればわかりますが、芸術家や思想家についての純粋な考えが書かれているにも関わらず、それはまるで美しい思い出のたくさん詰まった旅行記を読んでいるかのようです。
私はひそかに先生のことを、「サム・シェパーディスト」と呼んでいます。もし皆さんが街を歩いているとき、口ひげを生やして茶色いハット帽を被ったお洒落なおじさんを見かけることがあったなら、彼の後を静かにつけてみてください。きっと思いもよらない不思議の国へたどり着いてしまうはずですよ。

卒業研究はどのようなことをする予定ですか?

最近あるオークションでカール・ラガーフェルドという有名なデザイナーが、焼け焦げた写真のフィルムを破格の金額で買い取りました。その写真を撮った人物とはモイ・ベールというユダヤ系リトアニア人で、第二次大戦期にパリを中心に活動した写真家です。
これまで彼のフィルムはナチス・ドイツによって、すべてが焼かれてしまったとされていたのですが、それが今になって発見されたのです。私はその数少ない彼の写真集を目にしたとき、彼の異邦人の目から見たパリの風景にすっかり心を打たれてしまいました。
卒業研究では、モイ・ベールのパリへの視線とともに、亡命者としての彼の思考の痕跡をたどってみたいと思います。

キャンパス以外で活動することはありますか?

私たちのゼミは、「晴れのち曇りときどき読書(ゼミナール)、たまに散歩(フィールドワーク)」に出かけます。そしてその時、自分が感じたことをなんとか言葉にしようとしたり、またはさまざまな資料のもとに、その場所の歴史を一歩一歩辿り直してみたり。そのような体験が、大学と日常の生活を豊かに結びつけるのだと思います。

ゼミ活動での一番の思い出は何ですか?

やはりゼミに入って初めての授業で上野を歩いた時です。上野公園やアメ横を歩きながら、人や建物を注意深く観察し、そこで売られているものを実際に食べてみることで、その場所の空間や地形、または歴史が体を通して理解される。大学という場所が人間の生活の中に溶け込んでいるような、そんな印象を持ちました。

ゼミではどんなことを学んでいますか?

今期のゼミのテーマは「東京」です。東京をめぐってはそれぞれさまざまな関心があるでしょう。文学、マンガ、絵画、写真、映画、音楽、ファッション、演劇、建築など東京や江戸のことに触れずにアートについて考えることはむしろ困難なくらいです。
岡村ゼミでは、ゼミ生それぞれの視点から「東京」を見つめ直すと同時に、実際に東京をみんなで散歩しながら体で学んでいきます。