多くの高等教育機関では、すでに「学修者本位の教育」への転換に関する検討が組織的に行われ、第4期認証評価のみならず実質的な大学としての「内部質保証」システムの機能の見直しも行われている。その1つとして、学修成果を基軸に据えた内部質保証の重視とその実質化も問われている。内部質保証の実質化といっても、各部局の教育システムの自己点検・評価の実施のみならず、学生の「達成度の把握」も当然、必須事項である。各種のデータの組み合わせや分析により、学生個々の正課・正課外活動における能力の「成長度」や不足している部分を明確にすることにより、「学生の主体的な学び」に繋がる情報の集積・分析も行われている。本学においても今年度より、学生向けの「学修成果」や担当教員向けの「教育成果」も情報提供される予定であり、これらを活用した新たな組織的「学修成果の把握」による自己点検・評価活動の質向上も期待されるところである。
昨年度の法政大学大学評価(経営部門)では、①本学の内部質保証システム全体の適切性について及び②本学のコロナ禍でのキャリア支援について、外部評価委員から多くの示唆に富むご指摘をいただいた。あらためて、ここで謝意を表したい。本学の内部質保証については、全学の「全学質保証会議」「点検評価企画委員会」「自己点検委員会」「大学評価委員会」及び部局の「質保証委員会」を含めて構造化されており、大学自治によるボトム・アップと外部専門家との評価を組み合わせて、適切かつ意欲的なものであることを高く評価いただいた。ただし、自己点検・評価活動に伴う各部局や教職員への「負荷」は、大規模大学としての運営も踏まえて、効率のみならず、その効果も常に意識しなければならない。
今年度の全学質保証会議では、昨年度の全学質保証会議内のタスクフォースの議論を踏まえて、「内部質保証システム全体の適切性」に関する検討事項として、具体的な施策案7つを提示し、第4期認証評価のみならず本学の「学びの質」向上に向けた着実な「一歩」を地道に進めているところである。
今後の本学における自己点検・評価の方向性の骨子の1つとして、内部質保証活動への「学生参画」は不可欠な項目であろう。これは例えば、欧州高等教育圏の質保証の基準とガイドラインからもその重要性を覗うことができる。また、昨年度の外部評価委員の複数名からも、「学生参画」を課題の1つとしてご指摘いただいている。本学においては、FD活動やサーティフィケート・プログラム、ピアサポート等の「学生参画」の実績は、長所としてさらに伸長すべき点であることは言うまでもない。ただし、「内部質保証への学生参画」は、手始めとして、「学生参画による内部質保証プロセスの向上」が重要であろう。国際的な「学生参画」の流れの中で、本学における方向性について、全学質保証会議での議論を踏まえて、各部局と連携しながら推進したいと考えている。
「内部質保証の実質化」が年々問われる中、本学における「自己点検・評価」の今後の在り方を、引き続き、大学全体および学生にも寄り添った形で、検討したいと考えている。学内外をはじめとする関連部局を含めた皆様からのご指導、ご協力を心よりお願い申し上げます。
2023年4月
大学評価室長
川上 忠重