PROJECT

瀬戸内

PROJECT

概要

 本プロジェクトは、瀬戸内海とその周辺地域を対象とし、歴史のなかで育まれてきた交流や経済的・文化的価値を再発見するとともに、地域構造の再構築を試みることを目的とする。

 瀬戸内海では、古くから舟運による人々の往来や物資の輸送が盛んに行われ、商業・産業を支える大動脈として重要な役割を果たしてきた。物資の積み下ろしや潮待ちのための寄港地は港町として発展し、造船業をはじめとする船舶と密接に結びついた産業が興るとともに、華やかな都市文化を育んだ。九州、中国、四国、近畿に囲まれた瀬戸内海では、舟運の発展に伴って多様な文化が育まれ、個性豊かな都市や集落が形成されてきた。

 しかし、戦後のモータリゼーションの進展により、地域構造は陸路を主体とするものへと変化した。その結果、それまで舟運を基盤として発展してきた都市や集落は次第に活気を失った。さらに、本州四国連絡橋の整備に伴って舟運は急速に衰退し、多くの住民が島嶼部から本土へ流出した。現在では、空き家の増加や住民の高齢化など、深刻な課題を抱える島の集落も少なくない。

 近年になってようやく瀬戸内海の価値が再評価され、瀬戸内国際芸術祭をはじめとする新たな取り組みが展開されている。しかし、それらは依然として個別の小規模なコミュニティにとどまる傾向があり、地域全体を結び付ける視点は十分とはいえない。そこで、本来の地域構造や地域固有のアイデンティティを改めて読み解くことから始める必要がある。

 本プロジェクトでは、都市および集落の空間形成過程を分析し、この土地本来の特徴を明らかにする。そして、それぞれの都市や集落が歴史的にどのような関係性のもとで成立してきたのかを考察し、失われた地域ネットワークの再構築を試みる。

 さらに、瀬戸内海を軸とした海上交通、瀬戸内海へ注ぐ河川を利用した舟運、さらには街道といった交通インフラに着目し、地域相互のつながりを掘り起こす。また、そこに漁業、農業、製塩業、木材産業、製紙業などの産業構造を重ね合わせることで、地域で育まれてきた歴史的なアイデンティティを明らかにする。これらを総合的に捉えることにより、新たな都市論・地域論を提示できるのではないかと考えている。瀬戸内海が多様な人・物・文化を受け入れてきた懐の深さこそが、日本の経済や文化の発展を支えてきた重要な要因の一つであると考えられる。

 瀬戸内には特徴ある町や集落が数多く存在する。その背景には、このような個性豊かなテリトーリオが歴史のなかで形成されてきたことがある。本プロジェクトでは、その形成過程と地域構造を描いていきたい。

代表者

樋渡 彩(エコ地域デザイン研究センター客員研究員/近畿大学 工学部建築学科 講師)、
陣内 秀信(エコ地域デザイン研究センター特任研究員/法政大学 名誉教授)

主な活動内容

  • 北前船の寄港地に関する研究(2018年度-現在)
  • 瀬戸内海に浮かぶ島々の地域構造について(2018年度-現在)
  • 古代瀬戸内の銅の道について(2019年度)
  • 広島県東城におけるたたら製鉄業を支えた地域構造(2019-2020年度)
  • 愛媛県肱川流域(2019-2022年度)
  • 石見銀山街道で形成されたテリトーリオ(2020-2021年度)
  • 遠賀川流域における石炭産業で形成されたテリトーリオ(2020-2021年度)
  • 太田川流域における木材産業を支えたテリトーリオ(2021年度)
  • 瀬戸内海の製塩業について(2021年度-現在)
  • 酒造業で形成されたテリトーリオ(2022年度)
  • 海と山をつなぐ安芸津の地域構造(2024年度-現在)