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2025年入学式 Diana Khor総長 式辞

  • 2025年04月03日
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皆さん、ご入学おめでとうございます。
今年度から総長を務めることになりました、Diana Khorです。皆さんと同じく、私もルーキーです。そこで、ルーキー同士という立場で、この場を借りて、私の思いを皆さんと共有したいと思います。

少し前に取材を受けた際、「法政大学らしさ」を感じるものは何か、と聞かれました。私にとって、法政大学らしさとは、卒業生の活躍です。法政大学の卒業生は、どの分野でも自らの道を切り開いています。今日このあとお話しいただく成田洋一映画監督も、それを体現している素晴らしい例です。他の例もあります。法学部を優秀な成績で卒業した後、イギリスで一からファッションデザインを学び、アメリカの大学院でもファッションデザインを専門に学んだ卒業生がいます。法律の知識を生かして、自らブランドを立ち上げた後、現在はファッションデザイナーとして活躍しています。また、日本で弁護士としてのキャリアが確立した後、キャリアコンサルタントから「メリットがない」と言われながらも、アメリカの名門ロースクールに挑戦し、カリフォルニア州とニューヨーク州の司法試験に合格した卒業生もいます。最後にもう一つ例を挙げます。GISを卒業後、キャビンアテンダントとして勤務中に緊急医療対応を手伝った経験から自分の適性に気づき、現在はハンガリーの大学の医学部で学んでいる卒業生もいます。

このように、法政大学らしさとは「自由な発想」「世間の『常識』にとらわれないこと」「決まったキャリアパスに縛られないこと」にあると思います。一言で表すならば、本学の校歌にも登場する「進取の気象」を象徴していると言えるでしょう。そして、その「法政らしさ」は、今日武道館にいる皆さんの中にも潜在しています。

この潜在的な力を引き出す第一歩は、在学中に「挑戦」を恐れないことです。

「挑戦」といっても、必ずしも壮大なものとは限りません。世界の一番高い山に登る、一人で船に乗って世界一周する、南極に行く 、もちろん、これらは素晴らしい挑戦であり、実際に本学にはこうしたチャレンジを成し遂げた人もいます。しかし、私にとって、「挑戦」とは、自分が置かれた環境の中で、一歩踏み出すことです。

例えば、私が中学校に入ったとき、友達が一人もいませんでした。ある日、自分の隣の席が空いていたので、勇気を出して、一人のクラスメートに「この席、空いていますよ」と声をかけました。このクラスメートはのちに私の親友になりました。今回、法政大学の総長に立候補を決断したことも、私にとって大きな挑戦でした。また、こうして第3言語である日本語を使い、皆さんの前でスピーチをすることも、私にとっての挑戦です。一歩踏み出せば、新しい景色が見える。まさに今、この瞬間、私自身がそれを実感しています。

挑戦は、学びの場にもあります。

専攻と異なる分野の授業を履修すれば、新たな視点を得られるかもしれません。ずっと日本にいる学生にとって海外に行くことは勇気がいるかもしれませんが、短期留学やインターンシップに挑戦してみてはどうでしょうか?あるいは、教室を出て、国内外のフィールドワークやボランティア活動をしてみてください。自分の文化的背景やアイデンティティ、価値観とは異なる学生や教職員に積極的に話しかけてみてください。大学は新たなスタート地点です。ぜひ、一歩踏み出し、挑戦し、違う景色を見てください。

最後に、もう一つ、皆さんにお願いしたいことがあります。昨今のメディア、特にSNS上では、事実に基づいた情報と、事実無根の情報が交差しています。例えば、本学では多様性、公平性、包摂性、いわゆるDEIの推進を目的として、DEIセンターを設立し、様々なアイデンティティや性的指向、性自認、性別表現を尊重する取り組みを進めています。しかし、世界には「性別には男女二つしかない」と主張する国のリーダーや、「DEI推進は無能な人を採用するものだ」といった誤解を生む議論もあります。

こうした社会の中で、私たちは何を信じるべきなのか?何が真実なのか?これは、皆さん自身が考えなければならない課題です。大学生活の中で、正しい判断ができる力を磨いてください。

  • 違和感を覚えたら、冷静に議論しましょう。
  • 他者の意見を尊重しながら、自分の価値観を見つめて、または見つめ直しましょう。
  • SNS上の情報をそのまま信じることはせず、情報を多角的に検証しましょう。
    また、SNSに投稿する前に、一度立ち止まって考えましょう。

授業では、ただ受け身で講義を聞くのではなく、積極的に臨んでください。自分が納得するまで深く学び、物事を多角的に考える習慣を身につけましょう。そして、疑問があれば遠慮せず先生に質問しましょう。

私をはじめ、教職員が皆さんの学びを全力でサポートします。

数年間の大学生活は、あっという間です。
法政大学生として誇りを持ち、思い切り学び、挑戦し、充実した時間を過ごしてください。そして、人生の基盤をしっかりと築いてください。

結びに、自分の一番使いやすい言葉で、一言述べさせていただきます。

Let me close with a few words in the language I’m most comfortable with, to convey the core of my message.

I've come to realize that what is quintessentially Hosei is best reflected in our alumni, including today’s guest of honor. And everyone here today has the potential to embody that pioneering spirit—the courage to break free from convention. To fully realize that potential, I encourage you to step beyond your comfort zone, just as I did today by speaking in my third language—and, of course, by taking on the presidency of this university. Doing so will open your eyes to a world beyond imagination, as I am experiencing at this very moment.

Finally, in a world where fact and misinformation are intertwined, use your time at Hosei University to engage in discussions, critically examine and, if needed, reassess your values. Hone your ability to distinguish fact from fiction and build a solid foundation for the journey ahead. Your professors—including myself—and the administrative staff are here to support you as you learn, grow, and rise to challenges. Be proud of yourself as a Hosei University student and make the most of your time here.

Welcome to the Hosei Community. 

改めて、法政コミュニティへようこそ。

(以上)