PickUP

オンライン学生座談会を開催しました

  • 2020年11月04日
PickUP

コロナ禍により、春学期授業はオンラインでのスタートとなりました。学生の皆さんは、春学期をどのように過ごしたのでしょうか。このたび総長室付教学企画室では、3キャンパスから6名の学生の協力を得てオンライン座談会を開催しました。

本学教育開発支援機構長でキャリアデザイン学部教授の児美川先生司会のもと、オンライン授業で大変だったこと、コロナ禍での学生生活、秋学期への抱負などを自由に語っていただきました。

学生の皆さんだけでなく、保護者の方もぜひご一読ください。これからの学習や学生生活の参考になれば幸いです。

座談会について

廣瀬克哉副学長(法学部教授)

自分が大学生の時に、コロナ禍が起こったらどんな学生生活になっていただろうか。春以来ときどきそんなことを想像してみる。1970年代末の文系学部の大学生は、授業の出席率がいまほど高くはなく、私自身もあまり授業にはでない部類の学生だった。あまり通学しないで昼夜逆転生活を送っていて、授業に関係のない好きな本を読んだり、音楽を聴いたりして過ごす時間が長かった。年齢を重ねた今から振り返ると、とても豊かな贅沢な時間だったはずなのだが、今ではほとんど具体的な記憶に残っていないし、何か大事なものを得たという実感もないというのが恥ずかしながらの実情だ。コロナ禍で対面の授業がなくなってしまったら、ますますそういう生活に際限がなくなっていたのだろうか。それともかえって不安になって一生懸命オンライン授業に出席していたのか。それも正直のところ分からない。

ただひとつ確信を持てるのは、とても普段は体験できない事態に直面して、学校とは何だろうか?読書や動画の視聴と生の教室での授業とは何が違うのか?授業がオンラインの「教育ソフトウェア」で代替できるのだったら、大学は課外活動の場だけを提供してくれるのだったらどうだろう?といったさまざまな(なかには荒唐無稽な)思考をめぐらせていただろうということだ。

大学生ならではのモノの見方でコロナ禍について考える機会をもてるということは、それ以外の立場でこの事態に直面するのとはまったく違う体験になるはずだ。この座談会で語られているのはその体験の例として、とても参考になる。この他にもひとりひとりの学生にそれぞれ違った体験があるに違いない。

いま個人的な努力で感染症の流行という事態を変えることはできないが、各人の体験は本人をなにがしか変えてくれる機会にはなるはずだ。ひとりひとりの学生諸君が、制約の大きい環境下ではあるが、それなりの意義ある体験を重ねて欲しいと思う。それをできるだけ豊富にできるよう、大学としてはもっと工夫をしていかなくてはいけないということを改めて受けとめた。

参加者
  • 法学部 法律学科 2年 安齋一豪さん
  • 文学部 史学科 3年 澤柿朱理さん
  • 経済学部 現代ビジネス学科 3年 佐藤萌花さん
  • 経営学部 経営学科 1年 鈴木さん(仮名)
  • 現代福祉学部 臨床心理学科 1年 高岡稜さん
  • 理工学部 電気電子工学科 4年 石村大輝さん

司会 児美川孝一郎先生(教育開発支援機構長・キャリアデザイン学部教授)


※座談会は2020年9月29日と10月2日の2日に分けて実施しました。

オンライン授業はどうだった? 春学期の授業の感想

児美川:春学期の授業を振り返ってみて、その感想を教えてください。まずは1年生のお二人からお願いします。

高岡:最初はオンライン授業ってどうなのだろう、本当に対面授業と同じように勉強ができるのだろうかと不安に思っていたのですが、意外と大丈夫でした。というのも文系は対面だとしても本から学ぶことが多いと思うので、それほど講義内容に差がなかったのだと思います。むしろ通学時間がなく、自分の時間が多めにとれたので、高校生のときよりも快適なほどでした。ただ高校のときのように指示を出してくれる人がいないので、すべて自分で選択、確認をしなくてはいけないのには少々戸惑いました。

鈴木:私は初めての大学の授業についていくのに精いっぱいでした。オンデマンド配信※1とZOOM※2を活用したリアルタイム配信を併用しているタイプの授業の場合、100分という授業時間をオーバーしてしまう科目もなかにはあり、メリハリをつけづらいという点はあったように思います。

児美川:2年生の安齋さんはどうでしょうか。

安齋:私も慣れない環境ながらも、意外とできたという感想です。ZOOMなどを活用するオンライン授業と、動画を見るオンデマンド授業の2つの形があったのですが、先生によって取り組み方がさまざま。工夫されている授業では、ZOOMでしっかり質問をとったり、個人の意見が聞けるよう小さいグループに分けたり。また教職の授業では地方在住の先生をゲストで呼ぶというZOOMならではの新しい取り組みもあり、とても勉強になりました。ただ充実した授業がある一方で、先生の話が伝わりづらい授業があったのも事実。そういう授業では、対面と比べるとやはり理解度は落ちてしまったように思います。

児美川:3年生、4年生の皆さんはどうでしょうか。

佐藤:最初の頃は、先生方も手探りされている状況でした。ただ、逐一アンケートを取ってくださったり、授業内で質問コーナーを設けてくださったり、あるいはZOOMの投票機能を活用して学生の理解度を測ってくださったりするようになり、先生が学生の意見を取り込んでいくことで、徐々に充実した授業が増えていった印象があります。

児美川:私自身もそうですが、教員側も初めての試みで、確かに戸惑いや不慣れなことがありました。ところで、皆さんはオンライン授業、賛成派でしょうか?

佐藤:賛成派です。やはりいつでもどこでも授業が受けられるというのは大きなメリット。3年生から4年生にかけては就活がスタートしますし、就活中でも授業を休まずに知識が得られるのはすごくいいと思います。

澤柿:私も賛成派です。私自身、対面授業よりも、オンライン授業の方が意欲的に取り組めたように感じています。理由は、いつ先生に当てられるかわからないのでしっかり授業を聞くようになったことと、もう1つがHoppii※3の返信機能の存在。対面授業だとリアクションペーパーに学生が書いて終わりだったのですが、返信機能では先生が一人ひとりにちゃんと返信してくださるため、その内容が楽しみになり、自然と意欲的に取り組めるようになりました。

石村:賛成派の意見も分かるところはあるのですが、理系特有の実験系は正直、オンライン授業ではきつかったです。先生が実験している様子を動画で見てからレポートを書く授業だったのですが、機材は実際触ってみないと使い方は身につきません。それに対面の授業であればレポートの書き方をTA※4の方からアドバイスがもらえたのですが、オンラインだとそれもありません。実験のオンライン授業はやっぱり難しいなという感想です。

児美川:石村さんのように何か困ったことは他の人もありましたか? 要望なんかもあればぜひお聞かせください。

高岡:気分転換の場所がないのには困りました。オンライン授業そのものは悪くないと思っているので、たとえば週に2回位でもキャンパスに行けるようになれば、気分を切り替えながらもっと気持ちよく過ごせるような気がしています。全面的に対面授業をしてほしいとはまったく思っていないのですが、週に2、3日くらいはあるとうれしいかもしれません。

安齋:課題の多さには困りました。400字くらいであればその日のうちに終わらせられるのですが、2,000字になるとかなりハード。Hoppiiを開くたびにタスク(課題)の部分が多くなっていくのがつらかったです。

鈴木:私も課題に苦労しました。課題を終わらせるために土日もパソコンに向かっていたので休みをうまくつくることができず、精神的健康が損なわれたように感じたこともありました。資格や語学など、自主的な勉強のための時間を確保できなかったのは、少し残念です。

佐藤:確かに対面の授業に比べると、負担は増えてしまったなという印象はあります。おそらく先生方が心配しているのは、学生の理解度と出席率で、その確認のために課題を出されているのだと思います。そこはもちろん理解しているのですが、だとすると課題の難易度を高めるのではなく、簡単な課題で締め切りをその日の夜にするなど、なにか他の対応を考えていただけると助かります。

鈴木:先生への要望として、ぜひ課題に対するフィードバックをいただきたいというのがあります。個別の課題に対する具体的な指導をいただくのは、先生にとって時間的にも体力的にも難しいと思うので、たとえば問題の解答例を開示するなど、自分のレポートのどこが良くて、どこがダメだったのかを確認する機会が欲しいです。

児美川:ありがとうございます。課題のあり方は確かに先生たちも考えなくてはいけないことかもしれないですね。課題以外でなにか要望はありますか。

澤柿:他学部の授業を履修しているのですが、先生たちが学習支援システム※5ではなく、Googleクラスルーム※6を使用しているので、システムが2つになってしまっています。課題やお知らせを見逃してしまいそうで怖いので、できれば1つに統一していただきたいです。あといま就活中で、インターンシップと授業が重なったときにどこに連絡すればいいんだろうみたいな基本的な疑問もあります。対面授業ならすぐに先生に直接言いに行けるのですが……。

安齋:基本的な疑問といえば私もあります。秋学期から週に2回ほど対面授業がはじまるのですが、もし対面授業とオンライン授業が連続してしまった場合、大学内のどこでオンライン授業が受けられるのかがまだよく分かっていません。ホームページに書いてあるのかもしれませんが、探しても見当たらなくて。直接聞きに行くことができない分、もう少しインフォメーションを分かりやすく伝えてくださるとうれしいです。

児美川:こうしてお話を伺うと、オンライン授業も悪いところばかりではないと思いました。もちろん改善すべき点も多々ありますが。さらに大学としても1年生の皆さんが大学生活の基盤を固めらえるように、サークル紹介のイベントなどを行ってきましたが、さらにそこは充実していかねばなりません。
 

地元の良さを再発見!? コロナ禍の過ごし方

児美川:次に、授業以外についても聞かせてください。春学期の間、どのように生活されていましたか。何か困ったことはありましたか。

石村:春学期の頃は緊急事態宣言もあり、まったく家から出ない日が多かったのですが、宣言が解除されてからは、アルバイトも始められ、それなりに充実した日々を送っていました。ただカラオケや旅行など世間的にNGなものは避けていたので、そういう意味では、例年と比べて70%くらいの充実度だったかなと思います。

安齋:私も基本的にずっと家にいました。家族に世話をやかせてしまうのが申し訳なく、積極的に家事を手伝ったりして(笑)。本来であれば所属しているフェンシング部の活動に参加していたはずなのですが、それもできなかったので、運動不足で体がなまらないように筋トレをしていました。この筋トレがいいストレス解消になってくれていたように思います。

鈴木:確かにストレスが溜まったというのはありますね。とくに私の場合、授業で精いっぱいなところがあって、ほぼすべての時間を授業に費やして、それ以外の時間があまりとれませんでした。たまに高校時代の友人に電話をするのが大切なストレス発散の時間。ただ途中からは、どうせ授業で精いっぱいなのだから徹底的にやってやろうと火がついたんです。「全科目S成績をとるぞ!」という気持ちで取り組むようになってからは、あまりストレスを感じなくなりました。

澤柿:私も友達との時間に救われました。緊急事態宣言が出てからはアルバイトも無くなり、本当に1日中誰とも話さないような日が何日も続いて。気持ちがどんどん落ち込んでいったのでこれはまずいと思って、友達とオンライン飲み会をしたり、電話をつないだ状態で一緒に勉強したり、みんなで「せ~の!」で同時に再生ボタンを押して同じ映画を見たり(笑)。直接は会えないなかでも、いろいろと楽しむようにしていました。

佐藤:私は経済学部学生会という教授と学生の間に立ってイベントを運営する活動をしていて、春学期はディベート大会を予定していたのですが、延期となってしまいました。これまで対面で行っていた会議は全てZOOMになり、地方からでも会議に参加できるという良い点もあれば、やりとりや情報共有が難しいこともありましたが、次にこの経験を活かせたらなと思っています。私個人の話としては、オンライン授業に切り替わってから、地元の山梨に帰郷したんです。アルバイトも無く、友達にも会っていなかったので、気が詰まる日もあったのですが、そういうときは歩いて富士山を見に行き、リラックスするようにしていました。いま元気でいられるのも、富士山のおかげです(笑)。

高岡:私はちょっと例外的で、春学期に団体を立ち上げる活動をしていました。じつは私は、特定の音に対して逃避願望や攻撃的衝動の伴う強い否定的な反応を示してしまう「ミソフォニア」という症状が過去にありました。その病気や症状についてはあまり広くは知られていないのですが、実際、SNSにはその症状を訴えている人が一定数います。ですから自分の手で認知や理解を広げたいと思い、「日本ミソフォニア協会」という情報サイトをパソコンで作成。夏休みもほぼその活動に充てていました。なぜこれを始めたかというと、当時、コロナに悪影響を受けるのがすごくイヤで、なんとかピンチをチャンスに変えられないかなと思っていたからです。最初は家でできることとして病気の情報をまとめたサイトを作っていたのですが、どんどんやりたいことが広がり、今では団体をつくるまでに。コロナが無かったらこの活動はなかったと思っています。

児美川:皆さん、withコロナを、工夫したり前向きに生活したりしていて頼もしいですね。環境変化に対応しながら生活するなかで、自分自身の変化や、発見や気づきはありましたか。

澤柿:就職への考え方がガラッと変わりました。私は地元の富山から出たくて進学をきっかけに上京したのですが、コロナが起きたことで、「東京は東京で不便な部分もあるんだな」と気づき、あらためて生まれ故郷である富山の良さを実感しているところです。これまでは東京で就職するだろうと思っていたのですが、今はどちらかというと富山、北陸がメインで、でも東京にも支社があるような企業を探すようになりました。どちらも行き来できるのが理想の働き方です。

佐藤:澤柿さんの地元が好きになったという意見には私も同感です。東京に出て3年経つのですが、ここまでゆっくりと山梨で過ごしたのは3年間ではじめてのことで。こんなに鳥のさえずりが聞こえるのかとか、山ってこんなに綺麗なのかとか、慣れ親しんでいる場所のはずなのにすごくたくさん発見がありました。コロナはいろいろ大変ではありますが、社会に出る直前で地元の良さを再発見できるいい機会でもあったのだと思っています。

石村:私はコロナ禍の前に比べると、自己管理ができるようになったかなと思っています。オンデマンドやZOOMで自由に授業が受けられる環境になったのですが、大学の教室のように学びの環境が整っていない分、自分でモチベーションを高めなくてはいけない。そこを一つひとつ乗り越えたおかげで、自己管理能力が高まったように感じています。

佐藤:石村さんの意見にも同感です。オンライン授業になり、対面授業のときには出ていなかった課題が増え、「オンラインの方がやることが増えたね」と友達の間でも話題になっていたんです。課題も多いし、就活もあるしで、いままでの私ながら「あ~もう無理!」と逃げ出したくなっていたのですが、「社会人になったときの練習だ」と考えるようになってからは、うまく時間がつくれるようになったんです。自己管理能力はある程度の練習さえ重ねれば高められるのだと思います。

秋学期に向けた学生の抱負。大学へのリクエスト

児美川:では最後に秋学期ではこういうことにチャレンジしたいなとか、大学にはこういうことを期待したいとか、抱負やリクエストをお聞かせいただけますか。

安齋:春の経験を通じてオンラインの環境にも慣れてきたので、秋学期はより余裕を持って取り組んでいけたらいいなと思っています。登校時間が無くなった分、時間的には余裕ができるはず。その分、自分を磨いて、レベルアップにつなげていくのが目標です。

澤柿:私もオンラインで授業が受けられる環境は気に入っていて、地方の人も受講しやすいし、すごくいいなと思っています。とはいえ全部が全部、オンラインになって欲しいかというとそうではありません。4年生になったら卒論を書かなければいけないので、そういう場面ではしっかり対面でアドバイスをいただきたいです。

鈴木:対面とオンライン、それぞれにメリットがあるというのは私も感じています。とくに英語強化プログラムの授業など、ディベートや対話を重視した授業は、オンラインよりも対面の方が学びやすいと思うので、こうした授業では対面をご検討いただきたいです。

石村:私は、秋学期は何としてでも卒論を完成させるのが一番です。大学への要望としては、コロナが落ち着いている時期であれば、入構制限はどんどん緩和して欲しいと思います。先輩からは、卒論の時期は泊まり込みしていたなんて話も聞いていて、それがすごくうらやましいなと。もちろん感染が大きく広がっている時期は厳しいとは思いますが。

佐藤:学校にもっと来たいというのは私も同じです。私はもともと家だと集中できないタイプなので、よく大学で自習していたのですが、いまは図書館も使用に時間制限※7がありますし、自習室も閉められていて……。仕方ないとは思いながらも、学校のなかに勉強するスペースが無いことはとても残念です。石村さんの話にもあったように、連続で長時間学校にいられるのであれば、学生にとってはありがたいと思います。秋学期の抱負は、やはり学生会でのイベントの成功です。コロナ禍ですからリスクと戦いながらの開催にはなるのですが、どうにか成功させて、できる限り学生の活動の制限を無くしていきたいんです。

高岡:私も自身の活動に関するイベントを開催したいのでその思いに共感します。先ほど、団体を作ったと言いましたが、まずは病気を持った人たちの交流の場を作りたいと思っています。できればリアルに話し合えるイベントがいいのですが、コロナが終息しなければZOOMなどからスタートする予定。秋学期中に、団体のメンバーや協力者を集めることを目標にしています。

児美川:皆さん意欲的で素晴らしいですが、やっぱりまだまだコロナ禍による環境の変化に対する不満や不安を抱いている人も多いと思います。そういった方々に向けてアドバイスがあればお願いしたいです。

澤柿:私自身、バイトも無く、人とも話さなくて、なんだか自分は人としてダメだと思ってしまう時期がありました。でも大変なのはみんな一緒。ウジウジしていても仕方ないと気持ちをパッと切り替えて、「逆に今しか休めないのだから、めいっぱい休もう」と思ってずっと休んでいました(笑)。

高岡:澤柿さんのように、発想を変えるというのは大事だと思います。カードゲームにたとえるとすると、配られたカードを見てゲームを放棄してしまう人っているじゃないですか。でも私は配られたカードでできるところまで勝負しようと考えるタイプ。いまさらコロナの感染拡大が起きなかった世界にはどう頑張っても戻れないのですから、それならばコロナがある世界をより良くしていくほうが絶対にいいと思います。

佐藤:私は、出来ないことではなく、出来ることを数えるようにしています。コロナ禍だからこそできたとか、コロナ禍だからこそ知れたことって意外と転がっていると思うんです。通学時間が無くなった分、心にちょっと余裕を持って、立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。よく考えてみると、コロナ禍で成長した部分ってあるはずですから。

石村:そうですね。現状でできることを精一杯楽しむのがいいと私も思います。できなかったことの数を数えてもつまらないですし。とりあえずやれる範囲のことを思いっきり楽しむようにすれば、少しは気持ちが楽になるのではないでしょうか。

鈴木:そう言われてみると、大学で直接人に聞けない分、自分でしっかり情報を取ろうと努力するなかで、スケジュール管理がずいぶんうまくなったように思います。これもいわゆるコロナ禍だからこその成長なのかもしれません。

安齋:小さな楽しみを見つけるのも大切だと思います。1年生は突然オンラインだったので、苦労もいっぱいあったと思いますが、その分、登校できるようになったら何をしようかと考えるワクワクもあるわけじゃないですか。法政大学は施設が充実しているので、行きたい場所を考えながら乗り切ってもいいのかもしれません。とくにおすすめは図書館と自習室。静かですごくいい場所なので、通学できるようになったらぜひ足を運んでみてほしいです。

児美川:皆さんのお話を伺って大変参考になりました。春学期の経験を生かして、より積極的に授業や生活に取り組んでほしいと思います。一方で、私たち大学や教員側も、もっと工夫できるところはないかと改善を行い、進化していかなければなりませんね。このコロナ禍での体験をむしろ貴重な経験だと捉え、それを糧に秋学期以降を過ごしてもらえればと思います。今日はありがとうございました。

※1 オンデマンド配信:曜日・時限を設定せずに実施するもの。基本的には、オンデマンドコンテンツの視聴やWEB上での学生との質疑等により完結する授業
※2 ZOOM:ビデオ会議システムアプリの一種。
※3 Hoppii:ホッピ。履修や成績、シラバスなどの様々なシステムやサイトのリンク先をひとまとめにしたポータルサイト
※4 TA:ティーチングアシスタント。教員の授業をサポートする大学院生のこと
※5 学習支援システム:教材の配布、レポートや小テストの実施、授業に関するお知らせ等を行う授業補助ツール
※6 Googleクラスルーム:科目ごとに学生や学習内容を運営・管理するためのツール
※7 時間制限:館内滞在時間は3時間を上限としている

座談会を終えて

児美川孝一郎 教育開発支援機構長(キャリアデザイン学部教授)

座談会を終えてまず思ったこと――学生たちはいい意味で予想を裏切ってくれた。
春学期のオンライン授業,通信環境にしても,課題の量にしても,そして授業のクオリティにしても,学生には多大な不満が溜まっていたにちがいない。自粛を強いられる生活においては,やはり孤立しがちになり,精神的にしんどい時間を過ごした者も少なくなかったのではないか。こうした予測は,たぶんはずれていたわけではない。それは学生たちが語ってくれたとおりである。しかし,そこに静止しているだけではなかった。

これだけの逆境において,最初は戸惑い,面食らったであろう彼ら彼女らは,それでも時間の経過とともに,発想を切り換え,行動を起こし,やれることをやるというしたたかさを身につけていた。大人だって,同じようにできるかどうかわからないのに。
もちろんここに登場したような学生が,すべてではなかろう。むしろ少数派かもしれない。しかし,これからの大学のニューノーマルは,いろいろと濃淡もある多様な学生の「いま,ここ」を受けとめ,刺激も受けながら,いっしょに創りあげていくことになる。それも悪くはないなと,あらためて実感できた。