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【OB・OGインタビュー】カシオ計算機株式会社 上間卓さんインタビュー

  • 2025年08月01日
お知らせ

こんにちは!経営学部広報委員会の橘田若奈、能城茉依、上村亜依莉です!

今回は、法政大学経営学部経営学科のOBで、現在はカシオ計算機株式会社 時計マーケティング部エキスパートの、上間卓(うえま たかし)さんにお話を伺いました。G-SHOCKの大ブームの背景や、皆さんの今後の学生生活において実践できるようなお話を聴けましたので、ぜひご一読ください。

写真左から上村、上間さん、橘田、能城

1. 現在のお仕事の概要を教えてください。

現在は、カシオ計算機という会社で、部内の人材育成やサポート業務をしています。具体的には、マーケティング手法に対してアドバイスをするような立ち位置です。去年までの約15年間は、マーケティング部部長を務めていました。主に、G-SHOCKという時計ブランドを中心にしたグローバル規模のマーケティングやブランディングを一貫して担当していました。

2.15年間にわたり、G-SHOCKと向き合ってこられた中で、特に印象に残ったお仕事はありますか。

社内でもほとんど認知されていなかったG-SHOCKを、アメリカからの「逆輸入」という形で日本市場に広めたことです。90年代後半、アメリカのスケーターやサーファーの間で人気だったG-SHOCKのイメージを日本に持ち込み、若者文化と結びつけることで再び火をつけることができました。

さらに、G-SHOCKが近年、世界的なブランドとなったという意味では、2008年から始まった「ショック・ザ・ワールド」というPRイベントの影響が大きいですが、これも手がけていました。これらのグローバルマーケティング活動を通じて、G-SHOCKの売上を200億円から800億円規模にまで成長させました。

3.法政大学経営学部を選ばれた理由を教えてください。

東京の大学に進学し、成長したいという思いから、勉強の末、法政大学経営学部に入学しました。法政大学の良さとしては、全国各地から集まる多様な学生と出会えたこと、そして社会と向き合って頑張る意識の高い学生が多かったことが挙げられると思います。また、体育会系の部活動が盛んで、スポーツ好きな私としても、充実した学生生活を送ることができたことは、良かったと思います。

4. 学生時代の経験が社会人になって活きたことはありますか。

大学生時代は、バイトや人との関わりも含め色々なことに挑戦しようと思いました。そしてテニスやスキーのサークル、競輪場でのアルバイトなどを経験しました。中でも、山中湖のペンションのアルバイトは大きな学びになりました。ペンション経営に関わりながら、ユーザーの求めていることと、企業がアピールしたいことには差異があるということを実体験できました。

この経験を通して、メーカーで、ユーザーが求める商品企画をやりたいという気持ちが芽生え、就職活動を進めました。カシオ計算機に入社でき、時計部門に配属され、「ファンづくりマーケティング」に力を入れました。これは、単に商品の機能や耐久性をアピールするだけでなく、「ファンを作り、そのファンに語ってもらって、更にファンを増やす」というアプローチです。時計という機能だけでは伝わりにくいG-SHOCKの価値を、スポーツ、ファッション、音楽、アートなど様々なつながりを通じて知っていただく取り組みを行いました。

例えば、日本のサブカルチャーであるアニメとのコラボレーションや、プロバスケットボールリーグとのオフィシャルパートナーなどが挙げられます。このように、文化を通じて表現することで、幅広いファン層を獲得することに成功しました。

5.今後の目標を教えてください。

携帯電話やスマートフォンの普及により、「時間を確認する」という腕時計の本来の役割は薄れてきています。「腕時計がなくなる」と20年以上言われてきました。しかし、時計はアクセサリーという感覚で残り続けると思います。そのため、今後はもっとブランド力を強化しなければなりません。

私は、G-SHOCKは「挑戦を共に歩む相棒」のような存在であると考えています。思い出が詰まっているんです。時計は身近なものですから、思い出が詰まっているという価値を高めていくという軸と、時計自身のブランド力を向上させるという2つの軸を強化していくことで、時計は残っていくと思います。ブランド力を向上させるためには、価値の基準が広くなっている現在だからこそ、トレンドだけを重視するのではなく、SDGsや社会貢献の観点からも価値を創造することが大切だと考えています。

6.学生へのメッセージをお願いします。

実際に自分で動いて体験することが大切です。今の時代は情報があふれているからこそ、薄い知識でも、分かった気になれます。そうではなくて、実際に行動して確かめることで、本当の知識が身につきます。流行っているものでも、単に人から聞いた情報で判断するのではなく、自分で確かめに行くことを大事にしてもらいたいと思います。私自身、いまでも自分で体験して確かめるということをしています。

また、大学時代から「自分ブランド」を考えると良いのではないかと思います。自分は何者か、どんな強みがあるのか、人との違いは何か。こういったことを、自分自身のブランディングとして考えることが、将来の社会人生活でも役立ち、違った視点を持てると思います。

7. 取材を終えて

上間さん、この度はお忙しいところ、私どものインタビューに応じていただきありがとうございました。後輩一同、今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

「ファン作りマーケティング」という考え方が特に印象に残りました。単に商品の良さを伝えるだけでなく、文化やライフスタイルと結びつけて「ファンをつくる」ことで、人々の心に長く残るブランドを築き上げているのだと感じました。今後は、実際に自分で体験したことを、自分自身のブランディングの一部として活かせるように行動していきたいと思います(橘田若奈)。

上間さんが、腕時計は相棒であると仰っていたことがとても印象に残っています。腕時計は身に着けるものであるため、思い出が詰まっていると言います。取材を通して、腕時計にはただ現在の時刻を知らせるという役割だけではない魅力があると感じました。上間さんは、好奇心に従って追求することで得た独自の視点で、G-SHOCKの新たな魅力を引き出してらっしゃいました。このことを通じて、好奇心を持つこと、そして自ら動くことの大切さを実感しました(能城茉依)。

上間さんのお話を伺って、当初売れなかった商品を爆発的なヒット商品にさせたという実績のすばらしさを感じるとともに、どれほど質の良い商品を作ったとしても、マーケティングのやり方次第では多くのお客様のもとへ届ける機会を失ってしまうという怖さもあると思いました。特に、気になることは自分の目で見て確かめることが大事だというお話が印象に残っています。昨今のように、SNSをはじめスマホひとつで何でもできる時代だからこそ、私自身も初心にかえってそういった現地に足を運び、体感するという機会を大切にしたいと思いました(上村亜依莉)。

取材・文責:橘田若奈(経営学部3年)、能城茉依(同1年)、上村亜依莉(同1年)