みなさんこんにちは!経営学部広報委員会の松本陽介、大淵陽平、伊藤輝羽です。
今回は、今年度から法政大学経営学部に着任された中西善信(なかにし よしのぶ)先生にインタビューさせていただきました。
はじめまして。今年から法政大学で授業をすることになりました。中西善信と申します。分野としては、官庁が外部からの見え方を気にして、1社しかできないような特殊な案件の発注で複数の業者を競わせてかえって効率が落ちたことを目にし、それをきっかけに「組織の葛藤」に興味を持つようになりました。法政大学では、経営学部で組織論や経営管理論を教えています。
大学では数学を専攻していました。大学卒業後は、全日本空輸(ANA)に入社して、パイロット向けのマニュアルを作ることや、国土交通省とのやりとりなどを担当していました。しかし、旅に出たいという思いが強かったため、6年で仕事を辞め、3年ほどバックパッカーとして約60か国を巡りました。帰国後は、航空関係の技術コンサルタントに転身し、国土交通省向けの飛行方式設計など様々な調査や、飛行ルートを作る研修に関する業務、航空に関する国際ルールを作る仕事などをしていました。
その時に、修士号を取得することにしました。仕事と並行して、放送大学で認知心理学を研究し、人の学習に関わることやスキルの身に付け方を中心に学びました。修士号取得後、個人から集団へ焦点を変え、神戸大学で経営組織論を研究し、博士号を取得しました。その後は大学教員となり、長崎大学、東洋大学に勤めてきました。
私は、「すべてはつながっている」という信念を持っています。私が歩んできたキャリアは、数学を学んだり、実務を経験したりしたからこそ達成できたことがたくさんあると思います。
例えば、私は最近『ソフトウェアで学ぶQCA<質的比較分析>入門』(中央経済社、2024年)という本を執筆しました。これはやはり、数学を学んでいたからこそ書くことができたと実感しています。また、企業に勤務していた際に感じていた違和感として、官庁が、何か業務を発注するためのコンペをする時に、一社だけだと外部からの見栄えが悪いことを理由に、必要性が薄いにもかかわらず、複数社の参加にこだわるなど、何かと効率の悪い事実を見てきました。そういった組織内での不具合を経験したことが、今の研究に繋がっていると思います。
大学院で認知心理学を学ぼうとしたのも、ANAでの仕事がきっかけで、ヒューマンエラーによる航空事故を勉強していく中で、心理学に興味を持ちました。このように、過去の経験が思いもよらないところでつながるということもあるのです。
この本は、他者や社会から見た正統性を意識し過ぎるがために、組織がよくない方向に向かってしまうことを指摘した本です。例えば、ある業務の発注に対して、裏で取引しているのではないか、公正な競争ではないのではないか、という印象を持たれないようにするため、2社以上が入札に参加することが求められます。しかし、発注が早く決まらないと、仕事が停滞したり、年度内に終わらないといったことが起こります。
そういった際にどうするかというと、知っている会社にダミーで入札してもらうよう頼んでしまうというようなことが起こり得るのです。これは本来は許されないことですが、そういったことをこっそりとやってしまう。そうすることで、見かけ上は2社が入札してちゃんと公正さが保たれているように見えます。
このように、見かけの公正さを担保するために、裏で実はよくないことをしてしまう、といったことが実際に起こっています。それが原因で、ちゃんとしている企業が損をしてしまったり、埋もれていったりすることを問題視した本です。
学生の皆さんには、様々な経験をしてほしいと思っています。なぜなら、学生のうちに様々な経験をすることで、自分の適性を見極め、自分にしかできない仕事を確立していくことができるからです。経験といっても、就活のためとは思わずに、幅広く自分の興味のあることに挑戦していってほしいです。
とはいっても、自信がなく挑戦するのに一歩踏み出せない人もいると思います。もちろん自分に自信がないと思っている人は多く、自然な感覚だと思っていますが、そういう人は小さい挑戦を少しずつステップアップしていくといいと思います。私自身、旅好きで世界一周したことがあるのですが、最初から世界一周したのではなく、学生のときから九州や北海道、そしてステップアップしてオーストラリアに行きました。このように、実現できそうで、失敗しても後戻りができるような範囲のことにまず取り組み、その範囲を徐々に広げることで成功体験を増やし、自信をつけていくことで挑戦ができるようになると思います。小さな成功体験を積み上げて自信をつけ、自分の得意なことを見つけてほしいと思っています。
中西先生のインタビューは以上です。以下、担当記者のひと言です。
〇松本陽介
私は大学生活の中で、自分の将来やりたいことを見つけたいと思っています。今回の取材で、自分の興味に従って、色々なことに挑戦し得意なことを見つけるという話を聞いて、やりたいことを見つけるための方法について自分の指針を立てることができました。また組織をまとめる人間の行動として、共感することが大切だということも伺いました。これは普段の人間関係でも心がけたいと思いました。
〇大淵陽平
私が一番心に残ったのは、無駄のように思われることも、いつか何かしらにつながるという言葉です。好きなことを自由にできる時間は、大学4年間が最後だと思います。将来役に立ちそうでないことも、将来思ってもみない場面で役に立つと思って、何でもやりたくなったことに挑戦してみようと思いました。
〇伊藤輝羽
この取材を通して、自分のキャリアの見つめかたについて再考する機会を得ることが出来ました。取材でもあったように、自分だけの生き方から自分だけのキャリアが生まれるように、だからこそ色んなことに挑戦しなければいけないと感じました。まずは自分の人生で成し遂げたいことを見つけ、そこに向けてスモールステップで駆け上がっていきたいなと感じました。
中西先生、ご着任直後のお忙しいところ、たくさんの質問にお答えいただきまして、ありがとうございました。