こんにちは!経営学部広報委員会の山崎友菜(1年)、伊藤愛姫(1年)、井川柚菜(1年)、西原遼聖(3年)です。今回は、2025年度より経営学部経営学科の教授に着任された藤井誠(ふじい まこと)先生にインタビューさせていただきました。藤井先生は税務会計をご専門としており、税務会計や簿記入門などの講義を担当されています。インタビューでは、先生の学生時代のお話や研究への思い、講義で大切にされていることなど、興味深いお話をたくさん伺うことができました。ぜひご覧ください。
藤井誠と申します。4月から経営学科に着任しました。3月までは日本大学商学部におりました。経歴ですが、青山学院大学経営学部で学士(経営学)を、同大学大学院経営学研究科で修士(経営学)を取得しました。その後、横浜国立大学大学院に進み、博士(経営学)を取得しました。税務会計を専門分野として、研究・実践に取り組んでいます。
私はもともと教員というよりは研究者になりたいと思っていました。学生の頃に資格予備校で講師をしていたこともあり、教えることも好きですが、やはり研究を行いたいと思っていました。
研究は正直なところ、私にとって、仕事という意識はほとんどありません。趣味に近いものであると思っています。ですが、研究のみを仕事として成り立たせることは、極めて難しいことです。大学という研究機関に所属する以上、研究成果を生み出して、それを社会に還元しなければなりません。その方法には論文を発表することなどがありますが、教育もその一つです。つまり、最初から教員になろうと思ったのではなく、研究者を目指した結果として教員になったということです。大学という研究機関では、研究なくして教育は成り立たないと思います。ですから、私は研究を第一に考えていきたいと思っています。
ただ、誤解のないように申し上げると、研究はウキウキでやって、講義はイヤイヤやっているということではありません。教員という仕事は、意欲の高い学生を相手に講義を行い、そして、卒業した学生が社会で活躍をすることへの手助けができます。教員という仕事には、とてもやりがいを感じています。
教員としてはあまり言うべきことではないのでしょうが、私は子供の頃から、「野菜」と「先生」に苦手意識があります。理由を聞かれると困りますが、怒られるという印象があるからです。私が怒られるようなことをしていたのが悪いのかもしれませんが、スーパーの野菜売り場と、先生のいる職員室は得意ではありませんでした。また、先生は、生徒の模範となるべきであるという圧を感じますが、そのようなことは私の性格には合いませんね。長いこと教員という仕事をしているので、慣れてはきましたが、今でも先生と言われるのは恥ずかしいです。前任校では、ゼミなどで学外にいるときは、先生と呼ばず、「藤井さん」などと呼ぶように言っていました。
いくつか理由はあります。最も大きな理由は、私の敬愛する内田百聞先生が、法政大学のドイツ語の教授であったからことです。先生の代表作「阿房列車」の一節「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行ってこようと思う。」には、先生の爽快な生き様がよく表れており、その姿勢に強く惹かれました。また、随所に法政大学が登場し、学問の自由を大切にしていることを知り、その姿勢に興味を持ちました。学問の自由を尊重する精神は、現在の法政大学にも引き継がれていると思います。
講義を行うということに限れば、専任でも非常勤でもできます。私は他の大学でも非常勤で講義を担当していますが、専任となれば重みが違います。一つの講義を担当するだけでなく、所属する大学・学部の一員として運営の一端を担い、より広く、深くコミットすることを意味します。ですからどの大学で教えるかということと、どの大学に専任として所属するかということには大きな違いがあります。
私が、法政大学に専任教員として所属したいと思ったもう一つの理由は、法政大学が、時代の変化に柔軟でありながら、学問の自由に対するブレない姿勢を持っているところに魅力を感じたからです。自由を守るということは、時として大変な努力を要するわけですが、法政大学が自由な研究活動を重視し、研究成果の一部を学生に還元して、社会で活躍・貢献できる人材を養成しようという明確な方針を持っていることに共感し、その一員になりたいと考えました。
私が学生の頃の法政大学のイメージとは、大きく変わったなというのが第一印象です。当時の法政大学は、硬派なイメージが強かったように思いますが、キャンパスの整備が進むにつれて明るさや開放感が増し、キラキラしているなという印象です。見た目や雰囲気は時代とともに柔軟性を持って変わっていきますが、一方で「学問の自由」という伝統や「建学の精神」はぶれることなく、そのポイントがはっきりしていると感じます。
講義に出席している学生は、最初は不安もあって慎重な姿勢の人が多かったですが、講義の目的や方向性、私が学生に何を期待しているのかということを示してメッセージを伝えると、真剣に向き合ってくれる人が多いという印象です。
また、法政大学や、法政大学の学生のどちらにも言えるのは、途方もないポテンシャルを持っているということです。今でも、充分に存在感があり、質の良い学生も多いとは思いますが、伸びきってしまっているわけではなく、もっと伸びるだろう、もっと発展するだろうという潜在的な可能性を感じます。法政大学に来てまだ2ヶ月ですが、色々な場面で「この大学ってすごいかも」と思えることがあります。
一言で表現すれば、よく学び、よく遊びました。大学1~2年生のときは、郊外のキャンパスでしたから、広大な学生用駐車場が整備されていました。車で通学して、空きコマや休講 になると仲間とドライブに行っていました。大学の勉強は、高校までとは違い、何のための学びなのか、どのように役立つのかが具体的に見えていたことが大きく、また、自分が興味を持てる講義を選べるということもありました。特に会計、簿記、税務会計といった専門科目は頑張りました。3年生からは都心(青山)のキャンパスに移り、資格予備校で講師もしていました。
大学院修士課程では、学部のゼミの指導教授に引き続き師事し、2年間を過ごしました。大学院博士課程に進学するか迷っていたとき、指導教授の定年が近かったため、この先の指導を引き受けることができないこと、そして「お前は研究者より実務家の方が向いている。」と言われました。しかし研究への夢は膨らむばかりでした。そこで、副査として指導してくださっていた教授にご指導いただくことで、博士課程へ進学しました。合計5年間の大学院生活は、おそらく苦しいこともあったはずですが、性格的にそういうことはあまり覚えていないし、総じて楽しかったです。大学院に進学するときに結婚し、その後子供が産まれたので、子育てをしながら大学院生をやっていました。お金も時間もなく、大変なことは大変でしたが、とにかく楽しかったという記憶です。
税のことが好きという理由で研究しているわけではなく、また、税の支払いを安く済ませるために研究をしているわけでもありません。税という領域にアプローチするにあたり、大きく3つの入り口があります。第一は法律学、第二は経済学、そして、第三が会計学で、私が選んだのはこの会計学という入り口です。大学に入学後、私はまず簿記を、続いて会計学を学びました。3年生になり税務会計を学んだのですが、それまでの会計学を学んでいた時と異なり、問題がなかなか解決しないという事態に直面しました。私はもともと研究をしたいという思いが強かったので、未発達な学問分野であると感じた、この税務会計の分野を研究しようと決めました。
しかし、税務会計を研究すると決めてから、少し後悔している部分もあります。それは、会計学に加えて、税法を学ぶ労力を毎年しなければいけないからです。税法は毎年のように変わり、場合によっては大幅に改正されることもあります。この税法への適応のため、毎年3月から4月にかけては大忙しです。
「見えないものを観る」ことです。簿記の世界は、表に出てこない(記録に表れない)情報を観ることで、一気に奥深く、発展的なものになります。「見る」というのは目に入るという意味を持ち、「観る」というのは頭を働かせて想像するという意味を持ちます。ですから、「観る」ことを意識するようになれば、教科書の紙に印刷されている文字・数字の羅列から、実際に何が起こっているのかを想像できるようになり、リアリティが出てきます。そうすれば、簿記は勉強という作業ではなくなり、仮想経営(ビジネス)に変貌します。
高校生の頃、なぜ多くの人が数学を嫌いになるかと言えば、ただの記号や数字の羅列にしか見えず、それがどのように役立つのか、具体的にイメージしにくいことが大きな原因なのだろうと思います。似たようなことが、簿記でも言えます。それゆえに、簿記を学ぶ際には、現場で起きていることを想像することが大切であると言えます。
しかしながら、ビジネスの実践においては、教科書通りの簿記が行われることはほとんどありません。誤解を怖れずに言えば、教科書通りの簿記なんかやっていたら、会社は潰れます。全然、簿記の知識だけでは足りないですし、もっと工夫が必要です。また、クリエイティビティが求められます。
また、簿記を学ぶことに関して、私にはひとつの野望があります。一般に、簿記って暗くて、地味なイメージがありますよね。食事会などで、「趣味は何ですか?」と聞かれて「簿記を少々嗜んでおります。」なんて答えたら、周りの人たちは引いてしまうと思います。しかし、簿記はものすごく役立つスキルですし、会計学や、とりわけ所得課税系の税法、さらには経営学全般の土台となるものです。ですから、私は簿記入門を担当する教員として、簿記そのもののイメージアップを図りたいと思っています。私が教員をやっている間に、税務会計は無理かもしれませんが、「趣味は簿記です。」と答えても、周囲に引かれない世の中に変えたいというのが私の野望です。
藤井先生のインタビューは、以上となります。
私は現在、藤井先生の簿記入門の講義を受講しています。講義では、先生が強調される「見えないものを観る」という視点や、紙面上の数字だけでなく、現場で実際に起きていることを想像しながら考える大切さを学び、簿記への捉え方が大きく変わりました。先生の講義のおかげで、簿記を学ぶことが以前よりも楽しく感じられるようになりました。 今回のインタビューでは、普段の講義では伺うことのできない、学生時代の藤井先生のお話や、研究者を目指された理由、教員として大切にされていることなどについて伺うことができ、とても印象に残りました。貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。(山崎)
今回、インタビューをさせていただいて、先生がどのような思いで法政大学に来られたかやご自身のことについて本当にいろいろなお話を聞かせてくださり、授業を受けているだけではわからないことをたくさん知ることができました。こうしてじっくりとお話をお聞きできる機会というのはあまりないと思うのでとても貴重な時間でした。ありがとうございました。
(伊藤)
藤井先生にお話を伺う中で、簿記への取り組み方や姿勢の話はもちろん、先生ご自身が教育という形で社会貢献を行いたいという言葉に非常に感銘を受けました。自身の「研究したい」という思いだけでとどまらず、社会貢献のために教育にも携わろうという考えは私も参考にしたいと思います。インタビュー中にも、インタビュアーを気遣っていただく場面もあり、藤井先生の優しい内面も拝見することができました。貴重なお話をしていただきありがとうございました。
(井川)
私自身、インタビューの当日に簿記二級を受験していました。気がつけば勉強しながら楽しくなっている自分がいましたが、今はまだ、楽しいというだけでも少し引かれてしまうのかなと思いました。少しでも簿記のイメージが上がると良いなと思います。なお今回は一年生のインタビュアーを中心に実施させていただきました。「先生」に苦手意識があるということでしたが、当日も学生が非常にリラックスして実施できるようご配慮いただき、非常に感謝しています。
(西原)
藤井先生、この度は、お忙しい中インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
取材・文責:西原遼聖(経営学部3年)、山崎友菜(同1年)、伊藤愛姫(同1年)、井川柚菜(同1年)