みなさんこんにちは!経営学部広報委員会の伊藤輝羽です。
今回は、新任教員インタビューの第1回目として、今年度から経営学部の准教授に就任された戎谷梓(えびすや あずさ)先生にインタビューをさせていただきました。
初めまして、戎谷梓と申します。法政大学ではこれまで、経営学部内のGBP(英語学位プログラム)を主に担当していましたが、今年度から学部の授業と、大学院経営学研究科の授業も担当することになり、様々な学生さんと触れ合う機会が増えました。専門分野は国際人的資源管理で、主にプロジェクトチームのような比較的小さな組織に着目し、組織やチームに所属するメンバーの相互作用やコミュニケーションの研究をしています。
大学生時代は言語学を専攻し、第一言語の獲得と第二言語の習得について勉強していました。しかし、外国の方が第二言語として日本語を習得したからといって、日本人と円滑に仕事ができるわけではありません。この点に疑問を持ち、言語以外の問題について考察するため、大学院に進学して「日本企業で働く外国人従業員のコミュニケーション能力」について研究を進めました。
しかし、日本の企業文化や風土など、コミュニケーション能力以外の経営学的な要因が、コミュニケーション能力に及ぼす影響が大きいことに気付きました。このタイミングで大学院の助教のポストをいただき、その後米国のラトガースビジネススクールでも1年半ほど客員研究員として在籍して、経営学の中で異文化コミュニケーションの研究を続けています。
今行っている研究のテーマは「多国籍出身者で構成されるチームが、バーチャル環境で一緒に働く場合、どうすればその環境のメリットを最大化させながらイノベーションを起こすことができるか」というものです。皆さんも新型コロナウイルスの影響で、ZOOMなどを活用したオンライン授業や会議が身近になったと思いますが、対面のコミュニケーションのように上手くいかないことや不便なことがたくさんあったと思います。
それだけでも難しいのですが、さらにチームメンバーがさまざまな文化背景を持っている人で構成される場合は、文化や価値観の違いによって摩擦・衝突が起こりやすいと考えられます。この研究が進めば、時間や場所の制約なく、世界中から優秀なメンバーを雇い、バーチャル環境で起こるストレスを極力減らしながら、個々人が最大のパフォーマンスを発揮できるようになると考えています。
今年度から開講された「組織マネジメント論」との関連性ですが、1年間で2つのプロジェクトをグループで遂行するという、インタラクティブな形態をとっています。また、授業は対面ですが、毎週出される課題では、メンバー間でオンライン上の話し合いを行うこともあります。先ほどの「バーチャル空間での共同作業」という研究テーマにも深く関わっています。受講生の中には、海外経験のある方、ない方が混在しており、それぞれの考え方も違います。意見の擦り合わせをするためには、個性を尊重しなければいけません。授業を通して、メンバーと共同する際のアプローチの方法や、コミュニケーション方法を学ぶことができると考えています。
自分の興味関心に基づいて学び、就きたい職業に向かって大学で勉強するという、根本的な価値観や目的は、ほとんど変わりがないと感じています。
あえて違いを挙げるなら、海外の学生はディスカッションの際、大勢の前で自分の意見を臆することなくスピーディーに言える人が多いですね。海外では「個々人はオリジナル」という意識があり、それが受け入れられなかったとしても大した問題ではないと考えるため、安心してコメントができると考えています。
一方、今年から受け持った経営学部の授業を通じて、日本の学生はしっかり考えてからでなければ自分の意見を言いたがらないという印象を受けました。「自分のコメントによって誰かが傷つくのではないか?」「自分の意見がおかしいと思われるのではないか?」という心の働きを制御するのに、日本の学生は時間がかかるのではないかと思っています。
誤解しないでいただきたいのは、海外のほうが優れた意見がたくさん出るというわけではありません。日本でも、グループで話し合った後に意見を発表するようにすれば、優れたアイディアや個性的な意見が出ることも多いです。つまり、日本と海外では、アイディアを出すプロセスや、コミュニケーションの方法が違うのだと思います。
私は、この双方にそれぞれのメリットがあると思っています。例えば、海外の学生であれば、意思決定のときに力を発揮するはずです。緊急時など、早く決めないといけないときには有効です。逆に日本の学生であれば、安全性が高く、実現可能性の高いアイディアを出すときに力を発揮します。どちらも優劣はつけられないので、2つのコミュニケーション方法を使い分けられれば良いですね。
これからの時代は、おそらく今以上に多様化が進んでいくはずです。それによって、未知の価値観に触れたり、新しい情報から刺激を受ける場面も多くなると思います。そんなとき、自分と他人の価値観について、類似点や相違点を考え続けてほしいと思います。もし価値観が違っていても、何から何まで取り入れる必要はありません。しかし、考えることは重要です。「この考え方は必要だな」「面白そうだな」と考え、それを取り入れるかどうか自分で判断しなければいけません。このトレーニングを行わないと、あふれる情報に押しつぶされてしまいます。「考える→比較する→考える→理解する」というプロセスを繰り返し行うことが大事だと思います。
このプロセスを繰り返すことで、自分の中に論理性を構築し、それを駆使し、新たな物事や価値観を組み立てていくことができます。自分の中で確立した論理性を基に、何かを創造することが、今後の世界を生き抜くコツになるのではないかと思います。そのためには、未知の場所に踏み出し、刺激をもらうことが大事です。小さな刺激でも構わないので、日々小さな刺激を得ることで、新たなひらめきが生まれます。新しい誰か、新しい何かとの遭遇を怖がらず、日々を生きていってほしいと思います。
戎谷先生のインタビューは以上です。先生はこれまで、言語学から経営学の世界に飛び込み、日々の経験を自分の中で論理性に変えながら、研究を続けてこられたのだと思います。だからこそ、未知の領域を怖がらず、自分のものにしていくハングリーさ、そしてそれを冷静に分析する論理性こそが、今後の世界を生き抜くカギと考えておられるのだと感じました。私も日々少しづつ成長できるよう、これからも頑張りたいと思いました。
戎谷先生、今回はお忙しい中でインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。
文責:伊藤輝羽(経営学部2年)