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【2022年度新任教員インタビュー】韓載香(ハン・ジェヒャン)教授

  • 2023年06月29日
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Q.1 研究分野を教えてください。

私の研究テーマは、メジャーな産業・企業というよりは、周縁的な人々が営んできた経済活動の歴史です。具体的には、在日韓国朝鮮人という民族マイノリティの人々が関わっている企業や産業について、その特徴や変遷を分析しています。
在日韓国朝鮮人のルーツは戦前に来日したことにあり、彼らは特定の産業に集まっています。その集中の要因が何であるのか、また彼らが関わっている企業や産業がどのような成長過程を持っているのかについて、研究しています。
例えば、パチンコ産業があります。パチンコ産業は市場規模が非常に大きいのですが、負のイメージが強く、自動車産業のように(研究対象として積極的に)光が当てられている産業ではありません。そのようなパチンコ産業に深く関わっている人々が在日韓国朝鮮人でした。
今後は、多くの在日韓国朝鮮人が携わっているにも関わらず、まだ研究が多くされていない産業廃棄物関係の産業や、資源の再利用に関わる企業を研究対象にするつもりです。

Q.2 研究者になった経緯を教えてください。


私は、大学に進学するつもりで来日したわけでも、研究者になろうと思って研究者になったわけでもありませんでした。紆余曲折があり日本の大学に進学しましたが、現在とは異なり、日本企業が外国人を雇うことはほとんどなかったので、大学4年生の時に就職活動で苦労しました。
そのような状況の中、私には、大学院に進学するか、韓国に帰るか、どちらかの選択肢しかありませんでした。もう少し研究をしたいという思いが強くなったため、大学院に進学することを決めました(高い志のもとで研究者になったわけではなく、すみません。難しすぎてなれると想像もできなかったというのが現実的な思いでした)。
大学院に進学してからも、修士論文や博士論文を書いたり、ビザを獲得するため契約社員のような形で研究職に就いたりと、不安定な生活の中で学習・研究を続けました。
大学院での指導教員は地域経済を専門としていた方だったので、都市形成の歴史について修士論文を書くことを考えました。そして、ニューヨークにいる移民の経済活動を扱った本に偶然出会い、日本の都市にいる移民、在日韓国朝鮮人のそれについて研究しようと思いました。
指導教員の先生にこの構想を相談したところ、私自身は自覚していなかったのですが、このテーマにとても熱意があるように感じたと言われました。その熱意の源は、私自身も在日韓国朝鮮人のような外国人であることが大きかったと思います。

Q.3 最後に、学生に向けたアドバイスをお願いします。


(私自身遠回りばかりの歩みでしたのでアドバイスなどできませんが)目上や周りの人たちが言うことに従順になり過ぎず、みなさん一人ひとりが持っている、他の人とは異なる感性を大事にして欲しいです。
私たちは無意識的に周りの人たちに合わせようとしてしまい、その結果、自分の持っている感性や興味を失ってしまうので、それを(発見することも含めて)持ち続けることはとても難しいことです。
しかし、その湧き出てくる自分の感性や興味を放置するのではなく、そのことを追求して進んでいくべきだと思います。
自分の中にある興味・関心を、外部からの影響で育ててもらおうとするのではなく、まずは自分自身で育てようとすることが本当に大切だと思います。(感性を大事にする過程で衝突が起こることもあります。貫くための意志の強さと周りを説得できるほどの力を身につける必要があります。)

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多岐にわたるお話をしてくださった韓教授ですが、その中でも「自分が持っている感性を大切するべき」というお話がとても興味深かったです。自分の中にある軸を強く持って興味のある学問を学んでいこうと思いました。
韓教授、この度はお忙しい中インタビューのお時間をいただき、ありがとうございました。これからよろしくお願いいたします!
取材:永井友哉(4年)、橘颯大(2年)