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【広報委員会セミナー】(株)博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所上席研究員 森永真弓氏 オンライン講演

  • 2023年05月25日
お知らせ

こんにちは!経営学部二年、広報委員の中野凌汰です。
このたび、私たち経営学部広報委員会は、(株)博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所上席研究員の森永真弓(もりなが・まゆみ)さんをお招きし、「新しい⼀般層、タイムライン生活者」と題する講演会を実施しました。
「Z世代」と呼ばれる私たちは、普段から何気なくSNSを使用しています。その中でも、判断材料の大部分をSNSやトークアプリ上から取得する人を、森永さんは「タイムライン生活者」と名付け、研究していらっしゃいます。
今回のご講演では、「タイムパフォーマンスを求める若者について」「世代間のSNSの捉え方の溝がなぜ埋まらないのか」など、どの年代の方にも興味深いお話をしていただきました。ここでは、タイムライン生活者に焦点をあてながら、講演内容の一部を紹介します。

1.「タイパ」を求める若者たち


最近、若者を中心とするタイムライン生活者の間では、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が呟かれます。この言葉の裏には、「失敗した時間を過ごしたくない」という意味が込められているということです。
若者はYouTubeやSNS等ばかりを見て、企業のCM動画やテレビ番組は長いので見ないと思われていますが、実際は異なります。視聴する動画が短ければ閲覧されるという単純なものではなく「タイムライン生活者は、長いコンテンツが嫌なのではなく、冗長なコンテンツなのが嫌なのだ」と解釈できるということです。
また、世の中には見切れないほど沢山のコンテンツが存在し、こうしている今も猛スピードで新しいコンテンツが生産されています。そのためタイパを重視する生活者は、先に述べたように面白くなく、役立たないコンテンツに無駄な時間を割かず、面白く役に立つコンテンツだけを摂取したいと考えます。このような背景から、中身をダイジェストする「まとめ動画/記事」が人気を獲得する傾向にあります。
つまり、「まとめ動画/記事」は、タイパを求める若者たちにとって、単なる内容の要約やのぞき見による安易なコンテンツ消費のための便利なものではなく、コンテンツの価値を決め、摂取するかどうかを判断するための重要な材料になっています。そのため、ダイジェストで意味のあるコンテンツであると確信すれば、タイムライン生活者はそのコンテンツの種類・ジャンルを問わず、等速で何回でも摂取(視聴等)するということです。

2.見えてきたSNS活用態度の違い

これまで広告・マーケティング業界では、SNSはテレビやラジオ・新聞・ホームページやニュースサイトなど他情報チャネル(媒体)と同列に、数ある選択肢の一つとして扱われていました。さらに、テレビやラジオが「日常的に、なんとなく」触れているメディアとして扱われてきた一方、SNSを始めとするインターネットメディアは「能動的に、わざわざ」触れに行くメディアであると捉えられていたのです。
しかし現在では、SNSが情報行動のホームポジション=始点となっており、SNSが日常的なメディア、テレビ・ラジオが能動的なメディアとなる逆転現象が起きているSNSに常時接続している「タイムライン生活者」が出現しています。
少し上の世代(40~50歳代)は、デジタルネイティブ世代のことを「能動的にネットを使いこなすユーザー群」と認識する傾向にありますが、それは現実の姿に即していません。ネットが当たり前のデジタルネイティブ世代にとって、ネットへの関わり方はむしろ受動的であることが多いと見て取れるのです。

3.企業側に求められる情報行動パターン

これまでの広告・マーケティング業界は、発信者はテレビや雑誌などマスメディアであり、我々は発信された情報を受け取る側という一方通行の構図でした。しかし、タイムラインの台頭によって、流れてくる(目に入れる)情報ソースを生活者が選択し、タイムラインを編集するようになりました。生活者自らが王様として謁見場を開いたような状況です。メディアや広告主は「(その謁見場の)中に入れていただく」という立場に転換したとも表現できます。その結果メディアや広告主は、情報を生活者に投下する存在から、自社の製品・サービスに関する情報が「謁見場(タイムライン)」に表示されるよう、生活者に存在を許容してもらわなくてはいけない構図になりつつあることを示しています。従来の広告スタイルが王である広告主・メディアによる「空間支配型」スタイルであったものが、現在は生活者が王であり、生活者の謁見場に広告主・メディアの参入を許してもらう「許可制訪問販売型」に変化してきているとも例えられるかもしれません。王がタイムライン生活者へと移り変わったと言えるでしょう。
タイムラインの影響力が強くなったことに伴い、広告に求められる特性も大きく変化しつつあります。表向きだけ良く繕っても、実際の商品・サービスレベルが他者からの発言によりタイムラインに掲載されることで、企業のブランドイメージや評価が反転してしまう可能性もあります。したがって、これからの広告スタイルにおいて大切なのは、誠心誠意のコミュニケーションと考えられます。
情報発信側である企業は、まず「ゆだねる勇気」を持ち、タイムライン生活者が商品・サービスの情報をシェアできる状態を許容し、タイムライン生活者による能動的な情報共有を促すことが重要です。また、タイムラインへの共有・掲載がしやすいよう、情報発信の「ポータブル性」を高めることも必須になっています。そして、企業とユーザーの間に構築された接続関係を「Always On(常時関係性の維持)」の状態に保つため、「おもてなしの継続」も心がけねばなりません。ユーザーから「もういらない」と言われない工夫、ユーザーに許容してもらえる情報発信態度を常に点検・確認していく必要があります。

森永様講演会2.jpg

以上、森永様のご講演内容を紹介しました。情報が飽和している時代でのデジタルネイティブ世代は、このように無意識のうちにコンテンツの取捨選択を行うタイムライン生活者となっています。しかし、その実態については世代間で大きな認識のズレがあり、それが世代間でのコミュニケーション齟齬や、会話のしこりを生じさせる主因だということがわかりました。私たちが普段何気なく使っているSNSですが、世代間でここまで認識の差があることに驚いたデジタルネイティブ世代も多かったのではないしょうか。また、企業の広告・広報活動も、一方的なコミュニケーションではなく、ユーザーとともに共創していくことが成功のカギを握っているのだと感じました。
今回はご紹介できなかったものの、他にも「国内外での広告の性質の違い」「SNSのアカウントの使い分けがなぜ起こるのか」「世代間でのSNSの使用率の差が生まれるわけ」など、たくさんの興味深いお話をしていただきました。デジタルネイティブ世代のタイムライン生活者の一人としてお話を伺う中で、自分自身でも気づかないような行動パターンが指摘され、驚くとともに、「たしかに!」と納得感を得ることができました。
森永さん、この度はお忙しいところご講演をいただき、ありがとうございました。
2022年夏に開催した「MORE MEDIA 2040~メディアは体験し、過ごす空間へ」の森永さんの講演会の記事もございますので、もし興味のある方はご覧になってください。
https://seikatsusha-ddm.com/article/13080/
(文責:経営学部2年 中野凌汰)

森永様講演会1.jpg

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