1.日時
2020年12月14日(月)15:30~17:10
2.場所
Zoom(オンライン上)
3.講師
柏野牧夫 氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
4.参加者数
11名
2020年12月14日(月)に、課外教養プログラム「あなたの知らない空耳の世界」を実施いたしました。本プログラムは空耳という事象を用いて、聴覚の錯覚である錯聴という概念とその情報処理プロセスについて理解を深めると同時に、日常生活で生じる様々な現象を認知科学の視点から再考察する場を提供することを目的としています。
講義では、様々な聴覚現象を体験した後、グループに分かれて反応や疑問を共有しました。
まずは音の欠けている部分を脳が勝手に補完して滑らかに聞かせる「連続聴効果」という現象について体験しました。この機能が身体で十分に働いていないと、日常の全ての音が入ってきて聴取がうまく機能しないそうです。多少の音が聞こえていなくても、文脈の前後が予測できていればより滑らかに聞くことができることから、私たちの意識に上る知覚内容は耳から入る情報だけでは不完全で、後付け的に再構成されたもっともらしい解釈であるといえます。
次に、同じ単語(今回は「バナナ」で検証)を一定の速度で連続して聞き続けると、違った単語に聞こえるという現象です。参加者からは「火山」、「花壇」、「ナナ」など様々な聞こえ方の違いが生じ、自分で聞いたことある言葉を思い込んでいるだけではないのか、次第に音の境目が曖昧になってきたなどの意見があがりました。
最後に、私たちが音を聞き取るのは聴覚のみに依存しているのではなく、視覚情報を組み合わせた多感覚で得る情報を頼りにしているという「マガーク効果」についてご教授いただきました。ここでは実際には「が」という音が流れているにもかかわらず、映像では「ま」「ば」「ぱ」行のような口を一度閉じる動きをしているためにその音に聞こえるというものでした。これは視覚の方が優先して情報処理されるというものではなく、視覚と聴覚の両方を同時に処理しているために生じていると考えられます。この現象は逆でもいえて、2つの対称的に動く四角い図形が交差している映像でも、それらが重なる瞬間に音を混ぜることでその図形が反発しているように見えました。
今回のプログラムで、錯覚が単なる幻覚や誤認ではなく、適応的な知覚が実現されていることや、耳に入る情報は聞こえた音が全てではなく脳によって前後の文脈からの予測で最もらしく解釈しているということを学びました。自分がこれまで信じてきた聴覚の情報がいかに曖昧なものかを認識し、身の回りから取得する情報をもっと懐疑的に受け取ってみようと思える充実した時間となりました。参加者からは「実際に音声を聞いて体感して解説をする形式で理解が深まった」、「講師の方との双方向の体験型で参加していて楽しかった」、「脳科学について知らなかったことが多く知れてよかった」などの感想があり大変貴重で充実した時間となったといえます。
【報告・KYOPROスタッフ】皆川翔(社会学部メディア社会学科3年)
※「課外教養プログラム」は正課授業だけでは満たしきれない学生の様々な好奇心に応えるために学生センターが運営しているプログラムです。
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