キャリア

法政大学のキャリア教育

キャリア

キャリアとは「個人の長期間にわたる仕事をはじめとした生活全般における経験の展開の在りよう」であると考え、学生生活をキャリア形成の一部、その重要な礎であると捉えています。言い換えれば、大学における学習と将来の社会人生活との連動を重視したキャリア教育を実施しています。


1. 大学におけるキャリア教育
もちろん、それは、大学での学びを就職のためのハウツー教育にするということではありません。「正課教育こそ大学におけるキャリア教育の根幹である」という考え方に基づいています。

人文・社会科学領域はもちろん、自然科学領域においても、あらゆる理論や科学的知見は、現実を捉え、その本質をより適切に説明するための道具です。学問分野は異なっても、体系立ったモノの見方や考え方、知の創造について学ぶことが、自ら考える姿勢やその方法を身につけることへ繋がります。これらは、キャリア形成で必須となる自律性の基盤になります。

我々は、学問的な知と現実を別々のものとして捉えがちですが、決してそうではありません。例えば、学問と縁遠いように見えるスポーツ界は、心理学や生理学との連動で目覚ましい成果をあげています。科学技術のみならず、社会政策と社会学、経済・金融政策と経済学、企業の経営管理と経営学など、大学の知は現実場面において様々に活用されています。それは働き方やキャリアにおいても同様です。社会心理学者クルト・レヴィンの言葉を借りれば「良い理論ほど実践的なものはない」のです。

一方で、我々大学人は、体系的な知見の伝授や科学的態度を重視してきた結果、その応用や現実との連動について後回しにしがちでした。このような大学教育の課題を側面から支援する形で、キャリアセンターの主催するキャリア教育は、大学で学ぶ知と現実との連動を意識しながら展開されています。つまりキャリア教育においても、自由を生き抜く実践知が重視されているのです。


2. 就業支援からキャリア教育へ
時代は変わり続けています。企業の採用活動で言えば、1・2年生をも対象とした採用連動型インターンシップなどが一部行われています。変化は就職活動だけではありません。働き方全体にも及んでいます。一つの会社で長期的に働くという神話が揺らぎつつある現在、あるいは今後本格的に訪れる長寿社会では、最初に良い就職先に就職すれば安泰であると言った考え方では対応しきれなくなっています。

このような中では、一過性の就活ノウハウではなく、就業を開始した以降も継続的に学ぶ姿勢、行動しながら学ぶ姿勢、自らの生き方や仕事生活について考えながら主体的・自律的に行動し続ける姿勢が重要になってきます。

それは一朝一夕に身につくものではありません。学びを実践すること、実践から学ぶこと、つまり実践と知識を紐付ける姿勢は、それを継続的に繰り返すことで身につきます。あるいは関連に気が付くことが出来ます。

従って、我々は、限定された時期だけに「点」で行う就職支援から、長期的かつ統合的なキャリア教育へと舵を切っています。つまり、正課教育を含む全学年にわたって行われる長期的な「線」によるキャリア教育と、課外活動や普段の生活との関連を視野に入れた「面」による統合的キャリア教育が必要であると考えています。

法政大学では、2005年に就職部から「キャリアセンター」へと組織体制を改め、2006年からは1年生を対象とした早期のキャリア教育(現キャリアデザイン入門)を学部横断的に実施するようになりました。さらに本年度からは、キャリア教育専門の専任教員を中心とした人員を新たに配置することによって、その一層の充実を図っています。この科目では、長い人生全体の中における学生生活の位置づけ、アルバイト、サークル、ボランティアなどの課外活動の意味、そしてそれらと実務社会との関連を意識してもらうことで、翻って大学でどのように学び、考え、行動していくのかを考える場を設けています。また、全学年を対象とした科目(キャリアデザイン応用)では、実務家ゲストとの接点や現実の事例を取り入れ、職業世界で何が起こっているのかを一層具体的に知り、そのような現実に対応していくための備えを促す場としています。
 

3. 自由と進歩の精神
法政大学のキャリア教育は、ただ良い就職先に就けるよう、早い時期からノウハウ伝授をするというものではありません。多様な生き方が可能で豊かな社会、情報過多とも言われる現代において、本当の意味で自由に生きるためのキャリア教育を目指しています。自由に生きるとは、誰かの決めた道筋に従って生きるのではなく、自らの意思で道筋を作り、歩むことです。自律的に生きることです。マニュアル的正解を受け入れるのではなく、自分で問題を考え解決に向かう姿勢を身に付けてほしいと願っています。その願いの根底にあるのが法政の掲げる「自由の精神」、いわば自律性の重視です。

自由の精神と並ぶ法政大学の教育理念に「進取の気象」があります。これは、時代を先取って生きる姿勢、時代を切り開く姿勢、自らの人生を主導するのみならず社会においてもリーダーシップを発揮できる人材の輩出を目指すという、建学当初からの使命です。法政大学の学生、大企業に勤務する社員、ではなく、あの素晴らしい人材を輩出した法政大学、このような素晴らしい人材を抱える企業、あの世界の先駆者と評されるような人材の育成を目指しています。多様性が高まり、自由な生き方が許容される現代社会だからこそ、大学を超え、組織を超え、それらを牽引していける人材、自らの指針をもって社会を切り開く人材が求められています。進取の気象、現代風に言えば「進歩の精神」の価値は、建学140年を経てもなお変わることはありません。

このように法政大学では、卒業後も活躍を続けられる人間像を念頭に置いたキャリア教育を展開しています。正課教育を中心に据えながら、ノウハウ指導ではなく理念に根差したキャリア教育を実施することで、逆説的ではありますが、国内で787校あると言われる大学のうちでも指折りの就職率を達成し続けています。それは「自由と進歩の精神」に基づくキャリア教育への社会からの支持として捉えられるのではないでしょうか。


キャリアセンターのキャリア形成支援

法政大学キャリアセンターでは、キャリア形成支援を、3年次から始まる就職活動支援という狭い概念に限定せず、入学時から全学年を対象にきめ細かくキャリア形成をサポートしています。
就職活動では、充実した大学生活を送ったか、社会人として活動できる「人間力」を備えているかが厳しく見極められます。
「自分らしい生き方とは何か」をしっかりと考え、それを希望の進路に結び付けていくために、キャリアセンターは全力で支援しています。

キャリア教育(正課授業)

通常の授業・ゼミでは社会で活かせる一般教養を身に付け、「文章作成力」「情報収集・分析・発信力」「状況判断・行動力」を鍛えることができます。こうした能力は、どの業界、どの企業においても、職業生活を送るうえで必要とされる「就業力」となります。

また、正課科目では1年生より受講可能な「キャリアデザイン入門」「キャリアデザイン応用」等のキャリア形成支援科目を開講し、自身のキャリア設計や仕事についての理解を深める授業が設けられています。

就職活動支援

日常的な就職相談はもちろんのこと、3年生の就職ガイダンスを皮切りに、さまざまな形で就職活動を支援する企画・イベントを用意しています。学生の持っている資質・能力を最大限に引き出すことができるようなサポート体制をとっています。

  • 支援プログラム
  • 個別相談
  • 卒業生ネットワークを通じた就職支援
  • インターンシップ
  • 課外講座

本学におけるこれまでのキャリア教育への取り組み

2003年4月
キャリアデザイン学部設立
(現代社会における人の生き方・学び方・働き方の多様化という新しいニーズに対応した、日本で初めての学部)

2005年4月
キャリアセンターを設立、総合的なキャリア支援プログラムをスタート

2006年度(後期)
キャリア関連科目「キャリアデザイン論」開講(多摩キャンパス)

2008年度(前期)
キャリア関連科目「キャリアデザイン入門」開講(市ヶ谷キャンパス)

2008年度(後期)
キャリア関連科目「キャリアデザイン」開講(小金井キャンパス)

2010年度~2011年度(2年間)
平成22年度採択 就業力を育てる3ステップシステム
・文部科学省「大学生の就業力育成支援事業」選定取り組み

取組概要

2012~2014年度(3年間)
平成24年度産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業採択
首都圏に立地する大学における産業界のニーズに対応した教育改善

取組概要

2018年4月
キャリア関連科目「キャリアデザイン入門」「キャリアデザイン応用」をキャリアセンター主管として引継ぎ開講


キャリアデザイン学部

日本で初めて開設された「キャリアデザイン」を専攻とする学部です。本学部では「キャリア」を職業を含めた「人の生涯・生き方」ととらえ、それを設計することが「キャリアデザイン」と考えています。人々の働き方や生き方がたえず変化し多様化している現在、自分自身のキャリアデザインはもとより、他者のキャリアデザインを支援する専門家が求められている背景のもと、開設されました。