トピックス(2019年度以前)

―法政大学文学部に合格されたみなさんへ―

  • 2017年02月09日
トピックス(2019年度以前)

 合格、おめでとうございます。

 長かった受験生生活を終え、ほっと一息つかれているところでしょうか。この春から始まる4年間の大学生活にあれこれと思いをめぐらせ、期待に胸をふくらませている方も多いことでしょう。合格されたみなさまお一人ひとりに、法政大学文学部教職員一同、心よりお祝い申しあげます。

 法政大学は、日本初の私立法律学校・東京法学社として1880年に発足して以来、137年の歴史があります。そのなかで「自由と進歩」の気風を培い、校歌にうたわれる「進取の気象」によって、たえずさまざまな挑戦をつづけてきました。なかでも夏目漱石門下の人士がつどって創設された文学部は95年目の春を迎え、法政大学の中でも法学部、経済学部に次いで3番目に長い伝統を持つ学部です。

 実は、法政が誇る「自由と進歩」の気風は、まさにその文学部ができた頃に、漱石の批判精神の薫陶を受けたユニークな教員たちと活力ある学生たちによって作りあげられたものだといわれています。その学風は、今日の法政の教育や研究のいたるところに息づいています。キャンパスを行き交う学生や教職員の活気と気取らないカジュアルな雰囲気をみるだけでも、その「自由」さ、新しいものへと向かうチャレンジ精神の一端を感じることができるでしょう。正課での学び、サークルや部活動だけではなく、学生センターを拠点にした課外教養プログラムなど、学生たちのさまざまな取り組みの活発さでも法政大学はよく知られています。これもまた法政大学が「自由と進歩」の気風のもと、学生の活力を生かした大学づくりをしてきたことの現れです。

 市ヶ谷キャンパスには、法学部・文学部・経営学部といった伝統ある学部と、国際文化学部・人間環境学部・キャリアデザイン学部・デザイン工学部・グローバル教養学部という比較的新しい学部があります。その環境のもと、学生たちにとって学部を超えてともに学ぶ機会があることは大規模総合大学ならではの強みになっています。

 文学部は、 6つの学科ひとつひとつが小さな学部のように独立していて、それぞれ学生数が比較的少ないぶん、大規模な法政大学のなかではこぢんまりとまとまりのよいところです。1年次にはどの学科でも少人数クラスの「基礎ゼミ」(日本文学科では「大学での国語力」)でしっかりと大学教育を受ける準備を整えたうえで、2・3年次から全員がゼミ(学生主導の討論型授業)に所属し、卒業論文も必修です。どの学生も毎週のゼミで、また、ときには合宿やフィールドワークに出かけたりするなかで、仲間と討論し、積極的に学びあいます。教員と身近に接しながら、社会に出る前に身につけるべき力をしっかりと鍛えられる環境を整えています。

 また法政大学では、キャリアセンターの強力なサポートのもと、正課の授業内外で1年次から将来に向けた意識を養うしくみがあります。でも、それだけではありません。文学部独自の授業として、卒業後のヴィジョンを描くために各界で活躍する卒業生の話を聞く「文学部生のキャリア形成」、複雑化する現代の問題を考え対処する力をつける「現代のコモンセンス」を設置し、正課の授業で身につけた力をもとに社会に出て活躍するための準備ができるようにしています。2012年の夏に開催したシンポジウム「文学部で培う社会人力」では、文学部卒業生がたしかな文章力、そして深く多面的な人間理解を強みにできるということをあらためて確認しました。人間が長い歴史のなかで作り上げてきたさまざまな言葉やものごとを研究することを通じて、人間という存在の複雑さへの理解を深めるのが文学部での学びであり、その学びを通じて得た力は社会に出てからさまざまな人と接し、協働するなかで確実に生かすことができるのです。法政大学の文学部だからこそ、「その先の自分を創る」ことに真剣に向き合い、だからこそ創れる、あなたにとっての「その先の自分」があるはずです。

 これから大学での学びに向かうあなたにひとこと、入学までの心構えについてのヒントを出しておきましょう。

 高校までの学習は、答えのある学びでした。どんな問いにも、今まではかならず正答が存在していたはずです。しかし、これから大学では、そして社会に出てからはなお、その「正答」が本当に正しいのか、疑ってかかる批判的な思考が求められています。あるいは何を問うべきなのか、何を考えなければならないのか、そうした問題自体を自分で設定していくことが求められてきます。その力をつけるのが大学という場です。

 まずは、今、これから入ってゆく学問の世界――哲学や、日本語や英語の文学や言語、歴史、地理、そして心理学の研究――にかかわりのありそうな本を図書館で、あるいは書店で手に取ってみてください。うまく見つけられなければ、これから行く学科の先生の名前で著作を探してみましょう。そして、それをしっかりと読みこんで考えてみましょう。何が分かったのか、どこが疑問なのか、さらに知りたい、考えたいことは何なのか。そして、入学後にその質問を教員にぶつけてみましょう。

 さあ、充実した4年間の学びに向けて、助走を始める時です。旧江戸城(現皇居)を囲む外濠の内側という、まさに東京の都心、もうすぐ満開の桜が咲き誇る外濠公園と靖国の森を控えた市ヶ谷キャンパスで、法政大学文学部は溢れる意欲に輝くあなたの入学を心待ちにしています。