トピックス(2019年度以前)

“復興者”のために、“復興者”とともに

  • 2012年11月08日
トピックス(2019年度以前)
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 震災から約1年半。ずっと訪れてみたかった被災地で、自分の目に映ったのは一面に広がる野原だった。頭の中では、未だに木材や瓦礫等が散乱している光景を想像していた。しかし実際は、壮大かつ綺麗な野原が広がっているだけだった。ここは以前、住宅が多く並んでいた1つの集落である。確かに、ぽつぽつと立っている電柱がそれを証明してくれている。これほど全ての物を奪い去っていったのか。周囲を見渡すだけで改めて、被害の規模を感じ取ることになった。

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 また、FSの期間中に仮設住宅内で夏祭りを開催するとのことで、手伝いをさせてもらう機会があった。

 この夏祭りは予想以上の反響で、参加者は子どもからお年寄りまで本当に楽しんでいる様子だった。会場で、ある人からこう言ってもらった。「今までで一番楽しい時間だったよ。ありがとう」(今までとは恐らく、震災直後から今までの間の時間のことだとは思う)。私にとってはとても嬉しい一言だった。同時に、印象に残る一言でもあった。この楽しい時間を被災者の方々に過ごしてもらうことで、どのような影響を及ぼすことができたのか、ただ楽しいという感情を与えるだけの催しだったのか。私は不思議にも、非常に疑問に思った。催しをすることで人と人が触れ合い、コミュニティーが広がる。一瞬でもいいから辛い経験を忘れることができるだけでよいのだろうか。この問いに対して、自分の中ではまだ未熟な答えしか浮かばない。ただ私の願いとしては、この一瞬の楽しかった時間が、少しでも多くの人に、良い思い出として深く残っていてほしい。そして数年後、この石巻市が復興した際に、「あの夏祭りのおかげで、元気になることができた。これからは、楽しむ側から楽しませる側として、そのお礼がしたい」、そんな声をいつか聞きたいと私は思った。

 最後にある被災者(復興者)の声を載せて終わりにしたい。
「これまで、多くの人の善意に助けられてきました。でも、もうすぐ1年半。自立して次の生活に繋げなければ。だから、私たちのことを“被災者”と呼ばず、これからは“復興者”と呼んでいただけないでしょうか。」