スポーツ健康学部の理念・目的

豊かさと利便性を追い求めた20世紀、人々は情報技術(IT)を基軸とする高度な文明社会を実現したが、その反面、生活様式が一変し、青少年の体力低下と勤労世代の運動不足と中高年世代の健康不安が個人の人生はもとより、わが国の将来を左右する由々しき事態として認識され、スポーツと健康に対する関心がにわかに高まってきた。

このような国民各層の関心や不安に応えるべく、平成12年には「スポーツ振興基本計画」が策定され、子供の体力向上・生涯スポーツ社会の実現・トップアスリートの競技力の向上が、今後の日本社会がめざすべき重点目標として掲げられるにいたった。さらに、同じ平成12年には、国民健康づくり運動としての「健康日本21」が開始され、個人の健康づくり(生活習慣の改善や身体活動・運動など)を公に支援するために、自治体・地域レベルでの取り組みが推進されることになった。しかしながら、わが国では世代や性別を超えた国民的運動としての「スポーツ振興と健康づくり」はまだ緒についたばかりであり、各種施策の実施や環境整備にはそれらを担うことのできる有為な人材の育成が急務である。

スポーツは、人間の身体を動かしたいという根元的な欲求に応えるツールであり、快適性・達成感・連帯感等の精神的充足を促すという意味で、人類が創造した他に代え難い重要な文化活動の一つである。文化としてのスポーツは、心身の健康を増進させるがゆえに、活力に満ちた社会とアメニティ・ライフの創造にとって必須の要件である。特に今世紀に入ってからは、スポーツと健康に対するニーズの量的な拡大と質的な高度化に対応するために、新たな「スポーツ健康学」の構築が不可欠となっている。しかるにわが国では、歴史的にみて、身体活動の実践の場は「体育」「スポーツ」分野に限られ、そこでは健康科学との学際的な連携が希薄であった。この現状を打開し、スポーツと健康づくりに関わる各種の教育や事業を企画・立案、管理・運営、実践・指導、点検・評価することのできる人材の育成が大学教育に求められている。このため、本学が設置するスポーツ健康学部は「スポーツ健康学」の体系的な教育と研究を通じて、健康の維持・増進とスポーツの発展に関わる多様な領域で社会に寄与し、公共の福祉に貢献しようとするものである。

本学では21世紀社会に向け、平成11年以降、「サステイナブルな社会の実現」(人間環境学部)、「ウェルビーイングの実現」(現代福祉学部)、「自分らしく生きる」(キャリアデザイン学部)「人間中心のモノづくり」(デザイン工学部)をそれぞれ設置の理念に掲げる斬新な学部を順次創設し、ウェルビーイング(健康で幸福なくらし)を核とする高度で多機能な教育研究体系を構築してきた。とくに多摩キャンパスには、平成12年に現代福祉学部が開設され、平成14年には同学部を基礎とした大学院人間社会研究科(修士課程・博士課程)が開設された。また、平成17年には、スポーツ文化の担い手を育成することを目的に、学部横断プログラム「スポーツ・サイエンス・インスティテュート(SSI)」を設置し、スポーツ指導者やスポーツ振興、スポーツビジネス分野において活躍できる人材を育成してきている。そしてスポーツ健康学部は、これらの経験と実績を踏まえ、既存の学問領域を超えたウェルビーイングの教育研究をさらに拡大・深化・発展させることを社会的使命としている。