お知らせ

「下水×農業 横浜市・下水道資源を活用したスマート農業実証事業」訪問“こだわりが詰まった”エコツアー大成功!(2024年3月4日(月))

  • 2024年03月08日
  • イベント・行事
お知らせ

 2024年3月4日(月)、法政大学環境センターは、「下水×農業 横浜市・下水道資源を活用したスマート農業実証事業」訪問“こだわりが詰まった”エコツアーを開催しました。
 
 まず、“こだわりの詰まったエコツアー”は、横浜市鶴見区に所在する北部下水道センター(北部第二水再生センター)を訪問し、特別に「横浜市・下水道資源を活用したスマート農業実証事業」にも活用されている下水の処理施設を見学させていただきました。

 横浜市においては、18の行政区とは別に下水が集めやすいように地形に応じて九つのエリアに区分したものを下水道の処理区と呼び、一日に約150万㎡の汚水が処理されています。下水道施設には、わずかな勾配で下水を流す下水道管と汚水をきれいな水にする水再生センターと汚泥を資源化する汚泥資源化センター、汚水を中継、もしくは雨水を川や海に排水するためのポンプ場が所在しています。

 汚水は、24時間体制で職員の方が常駐して活性汚泥の中の微生物の働きを活用して有機物、窒素、りん等を取り除く処理が行われており、水再生センターやポンプ場の設備は中央操作室で集中管理されています。また、下水処理後に発生した汚泥は燃料等、再生水は冷暖房の熱源やトイレの水、せせらぎ用水等について利用されたり、花や野菜の栽培の実証事業を行ったりしています。
 また、北部下水道センター(北部第二水再生センター)の敷地のビオトープには、水再生センターの処理水が利用され、ノハナショウブ等が植えられたり、アキアカネ、シオカラトンボ、ハキセクレイを始めとした昆虫や鳥類の生息地となっています。

 続いて、同じ敷地に所在する北部汚泥資源化センターを訪問し、スマート農業機器を用いて温湿度等を制御し、リンなど肥料の原料を豊富に含んだ下水再生水や下水熱等の下水道資源を活用したパンジーやシクラメン(PRハウス)小松菜等(研究ハウス)の栽培実証実験が行われている農業ハウスを見学しました。
 下水道資源を活かすスマート農業ハウスにおいては、下水処理過程において発生する植物の成長に必要な窒素やリンを豊富に含む下水処理水・再生水、反応タンクにおける発生ガスを処理したのちに栽培に活用するCO2含有ガス、下水処理水を熱源とした冷暖房設備等が活用されていました。更には、環境制御システムによって、農業ハウス内外の環境を遠隔でモニタリングし、農業用の機器が自動制御されています。環境制御システムを活用することによって、植物にとって理想的なタイミングで機器を運転することができ、農業ハウス内環境を最適化し、ハウスでの作業回数も削減できて省力化につながります。

  “こだわりの詰まったエコツアー”においては、横浜市鶴見区に所在する北部下水道センター(北部第二水再生センター)及び北部汚泥資源化センターを訪問し、横浜市環境創造局が実施する「下水道資源を活用したスマート農業実証事業」について、第一線で活躍されている実務家より直接お話を伺うことができる貴重な機会となりました。

 日本においては、農業分野において高齢化や担い手の不足など深刻な課題を抱えております。しかしながら、農業分野における下水道資源のポテンシャルの発掘及び活用を目指した横浜市の最先端の知見に触れることで、経済合理性で簡単にわりきることが難しい我々が暮らす「かけがえのない地球」における農業の未来について考えることができ、環境センター主催“こだわりの詰まったエコツアー”は「大成功」となりました。

 これからも、法政大学環境センターは、一つ一つの「行動」と「自然」とのつながりを意識して、我々の暮らす「かけがえのない地球」の謎に迫っていきたいと思います。

当日は、特別に環境創造局政策調整部政策課山村太一氏に下水処理施設をご案内いただいた後に、塩素消毒施設にて処理された下水が放流されている放流口にて記念撮影。公共下水道の普及によってBOD(生物化学的酸素要求量)の濃度が下がり、横浜市内の河川の水もきれいになったと言われています。東京湾への放流口には様々な生物が生息しています。写真の後列左は、”こだわりが詰まった”エコツアー“を企画立案した法政大学環境センターの榎本直子氏。

  • 北部下水道センター(北部第二水再生センター)の敷地には、明治初期に大流行した伝染病の予防対策として煉瓦づくりの卵形管に改良した下水管(同市中区山下町で発見)などの遺跡も展示されていました。

  • 流入水の中の浮遊物はゆっくりと沈み、うわ水は反応タンクへ、沈んだ汚泥は汚泥資源化センターに送られています。こちらの反応タンクでは、細菌や原生動物といった微生物の入った泥(活性汚泥)と混ぜて、空気を入れてかき混ぜます。下水の汚れは微生物の餌となり、泥の塊となって沈みやすくなるそうです。

  • 微生物の働きを活用した下水処理した後はどのような状態であるか、熱心に最終沈殿池を覗き込みます。反応タンクでできた泥のかたまり(活性汚泥)をこの池で沈め、汚泥かき寄せ機で集めます。集めた汚泥は反応タンクに返送し、余剰分は汚泥処理施設に送ります。軽く水面に浮いた汚れは装置で取り除き、上の方の澄んだ水は塩素消毒施設に送ります。

  • 最終沈殿池の後には、塩素消毒施設、処理水再利用設備、放流口などを見学し、いよいよ北部汚泥資源化センターの敷地に到着しました。

  • 研究ハウスにおいては、植物の成長に必要な窒素やリンを豊富に含んでいる処理水及び処理水に塩素処理やろ過処理等の高度な処理を行った再生水と上水(水道水)を活用した野菜栽培の比較研究を行っています。当日は、横浜市と連携して実証実験に参画している東京農業大学の学生さんも設備の維持管理や調査研究をされていました。

  • PRハウスにおいては、再生水と上水(水道水)を比較した底面かん水ベンチを活用したシクラメンやパンジーを始めとした花の栽培実証を行っています。当日は、横浜市環境創造局農政部農業振興課担い手支援担当 沼尻 勇太係長より環境制御システムを活用したスマート農業事業についてお話を伺うことができました。

  • 実証実験においては、環境制御システムを活用し、スマートフォン等を活用した遠隔操作、各機器の設定変更、センサー情報をもとに各機器の自動運転を行うことが可能です。

  • PRハウスでは、シクラメン、パンジー、葉ボタンなどが栽培されていました。自動かん水装置を活用することで通常のかん水に比べてムラなくかん水することが可能で省力化につながるそうです。