私は性の多様性を自分の問題として捉えてもらいたいと考え、大学で授業をしています。性の多様性を自分の問題として捉えるには、自らの持つ特権の自覚が鍵になります。特権とは、与えられた社会的条件が自分にとって有利であったために得られる、あらゆる恩恵を指します。性的マジョリティの多くは、自らが特権を持っていることに気づいていません。性的マジョリティは、偏見や差別に対して「中立的な」立場から声をあげることのできる特権をもっています。マジョリティ集団に属しながら性の多様性を理解し、差別を是正するために行動する人をアライと呼びます。性の多様性を認め合う社会を実現するためには、性的マイノリティだけでなく、特権を自覚したアライの行動が求められています。
風間 孝 中京大学・教養教育研究院教授。日本の性的マイノリティ差別や性的マイノリティの社会運動についての研究とともに、性的指向・性自認に関する大学の取り組みや大学教員の意識や態度について調査をおこなっている。主な著書に 『ゲイ・スタディーズ』(青土社・1997年)、 『同性愛と異性愛』(岩波新書・2010年)、『教養のためのセクシュアリティ・スタディーズ』(法律文化社・2018年)、『教養のためのジェンダーと平和Ⅱ』(法律文化社・2022年)がある。