2012年度

学生による地域活性化活動とギネス世界記録

2012年度
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学生による地域活性化活動とギネス世界記録

1.目標

全国の過疎集落に関する国土交通省国土計画局の最近の報告書(平成21年4月)によれば、約62,222ある過疎集落のうち、今後10年以内に消滅又はいずれ消滅の可能性のある集落数は約2,600とされ過疎対策が求められている。ゼミ活動の一環として2003年度から毎夏期休暇中に各地で行っている援農活動で、地方の農村(福井県三国市、静岡県松崎町、山形県高畠市、群馬県富岡市など)ではどこも少子高齢化のため伝統的行事や日常生活に支障をきたしていることを肌で実感した。

昨年度、本学の「21世紀社会のリーダー育成」助成金を得て、取り組んでいる石川県羽咋市菅池地区(全戸数28)も、最初に訪れた2006年当時ほぼ「限界集落」に近い状況(高齢化率51.4%)にあった。幸い羽咋市役所と連携しながら取り組んだ活性化活動が功を奏し、この6年間で3組の30代の家族が移住し、数字の上からは「限界集落」から脱しつつある。

しかし、高齢者の移転や病気・体力の衰えなどにより生活基盤=農業の維持が徐々に困難になり始めている。羽咋市では、昨年度奇跡のリンゴで有名な弘前市の木村秋則氏を塾長に招いて、農業従事者を対象にした「自然栽培」に取り組み始めた。昨年6月「能登の里山・里海」が世界農業遺産に認定されたことを受けて始まったこの農法は、耕作放棄地を使い無農薬・無肥料・無除草剤で稲を育てるやり方で、1反当たり6.5俵の収穫を上げた。エコで、省エネ、低コスト、ヘルシーな「自然栽培」こそ、日本の農業の進むべきひとつの道を示していると思われるが、従来の農業従事者にはなかなか受け入れられない。種々の機会を通じて「自然栽培」の良さをアピールして行きたい。

我々は引き続き羽咋市近隣および都会の若者たちを菅池地区に呼び入れて共同で活性化に繋がるイベントを催し、彼らに現地の良さをアピールしてもらい一人でも多くの移住者の増員を図りたい。そのために、毎年冬期に菅池の棚田を利用して「巨大ひな壇」を作成し観客を呼ぶことで活性化に繋げているが、インターネットやギネス記録を見る限りこのような企画はどこも行っていないことが判明したので、今年度ゼミ生の力でギネス世界記録に申請することに決定した。

一方、石川県輪島市も少子高齢化が進み、近年伝統的祭りである「輪島大祭」のキリコ(奉燈)が担ぎ手不足で出せない状況が続いている。ゼミでは2007年にユネスコの海外学生交流プログラムに採択されベトナムの三大学の学生達と能登半島の伝統的夏祭りを体験したことが縁となって、それ以来毎年輪島市の要請を受けキリコの組み立て作業、市内練り歩き、キリコの分解・収納まで3日間に亘って参加し、2007年3月の能登沖地震(マグニチュード6.9)以来観光客が激減している輪島市の伝統的祭りによる活性化に取り組んでいる。今年もゼミ生以外に約20名の助っ人(都内の大学生、外国人留学生、社会人など)参加を呼びかけ、日本の伝統的祭りを通しての異文化体験や地域活性化への協力を依頼する。今回は、更にオーストラリア原住民の伝統的楽器(ディジュリドゥ)の一流奏者であるKNOB氏の賛同を得られたので、奉納演奏で「輪島大祭」を盛り上げるべく段取りを進めている。

以上の企画を通して、各学生が将来クローバルな視野に立った社会のリーダーとなるよう経験を積ませたい。

2.内容・計画

■羽咋市菅池地区の地域活性化活動
5月 マスコミなどで我々の活動を知った羽咋市邑知長寿会(老人会、会費会員約420名)の猿田正平会長より菅池でのゼミの稲刈り合宿の際に”食事を摂りながら若い人たちと話したい”との申し入れがあり、快諾した。
長寿会の役員9名が、菅池会館にお出でになることが決まった。
6月 羽咋市役所、菅池町会、羽咋工業高校に担当のゼミ生からコンタクトを取り、今秋期の稲刈り合宿の際に準限界集落・菅池の活性化のためのイベント打ち合わせの段取りをつける。昨年、「大学コンソーシアム石川」との共同企画を提案したが不調に終わったため、今年は知人の教授が勤務する金沢大学に、直接声を掛けて菅池活性化支援の輪を広げたい。
9月 菅池での稲刈り合宿(約1週間)
地元の大学生などにも呼びかけ共同の援農作業をぜひ実現させる。
また、援農合宿中に翌年2月末に行われる「巨大ひな壇」制作の打ち合わせを各関係者と行う。
*羽咋市邑知長寿会・役員との懇談会(於:菅池会館)
10月 国際文化学部で毎年開催される学会(研究発表会)に向けて、今年取り組んだ成果のまとめ作業を行う。
12月 国際文化学部・学会で成果報告。
2月 初旬に現地の下見。
下旬に菅池の棚田を利用した「巨大ひな壇」制作の合宿(約1週間)を行い、各関係者たちと共同で完成させる。
*ギネス世界記録員による記録確認作業の予定。
*事前にポスターを作成し、市役所や「道の駅」、カフェなどに置かせて貰うと同時に、マスコミや市役所のホームページでも宣伝してくれるよう依頼する。
3月 「21世紀リーダー育成助成による活動報告」作成に取り組む。
■輪島大祭の活性化活動
5月末 輪島市役所より「輪島大祭」参加の要請届く。
6月 輪島市役所からの交通費補助金による新宿駅前⇄輪島市の往復チャーターバスの手配、民宿の手配、旅行傷害保険などについて、JTBと打ち合わせ。
石川県ほっと観光マイスターの藤平朝雄氏による「輪島大祭の歴史と伝統について」の参加者向け講演会を、現地到着後に行うための依頼・打ち合わせ。
7月 「輪島大祭」の参加者全員との事前打合せ会開催。
8月 「輪島大祭」参加(8/22~8/24)
9月 「輪島大祭」報告書の作成・製本および関係者への送付。
12月 国際文化学部・学会で成果報告。
3月 「21世紀リーダー育成助成による活動報告」作成に取り組む。

3.成果報告方法

(1)本助成金による「報告書」製本の関係者への配布
(2)本年12月の「国際文化学部・学会」での成果発表
(3)翌年度の「国際文化学部・紀要」への投稿
(4)翌年度の「日本地域活性学会」での成果発表

4.達成指標

(1)「輪島大祭」への東京六大学生・留学生・社会人の参加者数
(2)菅池稲刈り合宿での玄米30kg入り米袋の生産数
(3)菅池活性化のメイン・イベント「冬期・巨大ひな壇」の観客数、および「巨大ひな壇作り」への参加者数
(4)新聞・テレビなどマスコミの「ゼミ生らによる活性化活動」の取り上げ回数