2011年度

震災復興に向けた集落ビジョンづくりのサポート活動 ―都市部の学生が農村集落の将来像を現場とともに考える―

2011年度
申請教員 テーマ
震災復興に向けた集落ビジョンづくりのサポート活動
―都市部の学生が農村集落の将来像を現場とともに考える―

1.目標

本申請は、本年3月に発生した東日本大震災の被災地である長野県栄村において、現地で復興支援活動を担うNPO法人栄村ネットワークが進める集落復興ビジョンづくりにおいて、学生が集落住民の皆さんのもとで将来像を一緒に考える実践的な試みである。現代福祉学部・図司ゼミは、昨年度に本助成金を活用し、多摩地域で資源活用・保全のサポーターづくりを試みた。本申請はその経験や知見を活かし、人口減少・高齢化が進行する過疎地域の中でも、震災発生を契機に内在する地域課題が一挙に顕在化した現場において、地域住民の声に耳を傾け、暮らしに寄り添い、世代を超えて考える機会は、都市部の学生が、遠く離れた地域社会との関係性や自らの役割を見つめ直す貴重な経験として期待される。

2.内容・計画

学生が震災復興に向けた集落ビジョンづくりをサポートする本活動は、被災地域である長野県栄村において主に展開する。栄村は、図司が十数年にわたり縁を繋いできたフィールドである。3年前のゼミ合宿でもお世話になったNPO法人栄村ネットワークが、震災復興支援の主体となり、農山村の地域社会の核となる集落に入り、復興ビジョンづくりの活動を進めている。そこでNPOサイドからゼミに対し、被災者の体験談や意向を聞く主体として学生との協働の提案がなされた。現地では、単なるビジョンづくりを通した学びの場としてだけでなく、栄村の住民との継続的な交流につながり、また地域経済の呼び水となる期待もあり、現在、NPOと図司の間で実施に向けた打ち合わせと、幅広く村内の資源や活動に触れるプログラムを検討している。具体的な活動日程としては、前期中に、ゼミ時間内において栄村の概況・むらづくり活動、震災対応の展開等について事前学習と準備作業を進める。夏休み期間中に、現地に入り、震災現場の見学や、集落に滞在しながら住民の皆さんへのヒアリング調査を行う。後期には、ヒアリング調査の集約と整理を進め、復興ビジョンの策定に向けた基礎データや方向性などを取りまとめる。また、栄村での活動を補完するプログラムとして、これまでのゼミと集落との協働を進めてきた2地域の現地活動(新潟県小千谷市三興地区、福島県喜多方市板の沢集落)とも連動させたい。これら2地域では、既に集落点検活動や地元学の活動を集落住民と学生が一緒になって進めてきた経験があり、現在、具体的なむらづくり活動を試みている。まさに、その知見やノウハウは、今年度の栄村での活動にも活かせる内容であり、経験を積んだ上級生が下級生とともに、現地活動を共有できる経験は貴重である。ゼミを介した地域連携の形としても新たな試みに繋がることから、必要に応じて2カ所での補足活動も組み合わせて実施し、過疎地域の地域課題を客観的に捉える視点も育みたい。

3.成果報告方法

調査から得られた基礎データと方向性については、まず集落常会(寄り合い)等で報告会を実施し、学生が関わった集落住民の皆さんに成果を還元するとともに、意見交換を図り、議論の素材に活用して頂くことが第一である。併せて、その内容を活動・調査報告書に取りまとめ、NPOや村行政等にも届け、村内各集落での展開に活用頂く。また、学部内においても、講義等を活用して、現地で活動したゼミ生から聴講学生に報告できる機会を作るなど、幅広く学部教育に還元していきたい。

4.達成指標

本活動の成果指標としては、夏休み期間に実施するヒアリング調査から得られる基礎データと方向性の取りまとめが中心になる。しかし、本活動は一連のプロセスを通して、農山村地域・過疎地域の地域問題に関心を寄せ、またフィールドワークを通して現場の姿を学び、そこから得た課題から問題関心を高める継続的な関係づくりを目指すため、そのプロセスと学生の姿勢の変化についても、途中のレポート等で捕捉し、指標に組み入れたい。