法学部新入生の皆様へ

【新入生】法学部合格者へのメッセージ

  • 1970年01月01日
法学部新入生の皆様へ

法学部に合格されたあなたへ  ~2023年度 法学部長 橡川泰史~

 

 合格者の皆さん、おめでとうございます! 法学部を代表してお祝い申し上げます。

 

 法学部は法や政治について学ぶ場ですが、「法や政治を学ぶ」ということはいったいどのようなことなのか、それは何を目的としているのか、今ひとつイメージがつかめないまま合格通知を手にしている方もいるでしょう。

 

私たち法政大学法学部の出発点は、徳川将軍とその幕府の治世が瓦解し、日本という国のあり方自体が根底から変わっていくまさにその途上にあった1890年、薩埵正邦(24歳)、金丸鐵(28歳)、伊藤修(25歳)という3人の若者が創設した「東京法学社」にあります。彼らがこの結社の目的として掲げたのは、市井の人々に権利義務について学ぶ機会を提供することでこの日本という国の文明発展の一助となるのだという宣言でした。(東京法学社開校ノ趣旨より「我同胞兄弟ヲシテ権理義務ノ何タルヲ弁識シ且皇国ノ法典ヲ熟知セシメ以テ明治ノ文明ヲ稗補セム」)〔https://museum.hosei.ac.jp/archives/Users/Top  から閲覧可能

 

 この「文明発展の一助となる」という若者たちの気概が法政大学法学部の原点です。

 

 「『文明発展』とはまた大風呂敷を広げたな」とお思いでしょうか?

 

しかし、ほんのちょっと前のことを思い出して欲しいのですが、Covid-19パンデミックで私たちは、私たちがすっかり頼り切ってきた近代の科学技術を基礎としたこの文明が、意外に脆い土台の上に立っているということを思い知らされました。そしてまた今、文明繁栄の前提となるべき平和というものの脆さをも思い知らされているところです。しかも、地球全体の気候温暖化の趨勢はもはや否定し難い状況であり、自然災害の強度も年々増してきているように思われます。この先私たちは、この「文明」の恵みをただ安穏と享受することはできず、むしろ「文明」維持のための数多の障害や危機に直面することになりそうです。

 

そのとき皆さんは、危機を乗り越え、この世界をできるだけ良きものとして後代に繋げるため、「より良き法」を求め、「より良き政治」を必要とするはずです。そこでは、法について、政治について、深く学び、考え、論じ合い、その中で磨いた知性と見識を道具として、多くの「同胞兄弟」と手を携えて、文明の維持のために危機に立ち向かう人々が求められることになるでしょう。法政大学法学部を、そのための学びの場として活用してください。

 

橡川 泰史(とちかわ やすし)

法学部長 橡川泰史

法学部長 橡川泰史