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対談「自立型人材の育成を目指して」

対談「自立型人材の育成を目指して」

法政大学では、ミッション・ビジョンの中核に「自立的で人間力豊かなリーダーの育成」を掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
その主な取り組みの意図や背景について、増田壽男総長と尾木直樹教職課程センター長に聞きました。

学生の居場所を作り、自立心、人間力、リーダーシップを育て社会に還元する

法政大学総長 増田 壽男

法政大学総長 増田 壽男 ますだ としお
専攻:経済政策
1979年 法政大学教授就任
1993~95年 法政大学経済学部長
2000年~02年 法政大学比較経済研究所長
2008年 現職
2011年4月 法政大学名誉教授

尾木 長年教育現場で多くの学生を見てきましたが、最近の学生は問題を解決する力や難局を打開していく力が弱い気がします。発想や感情、感性といった本来のその子らしさを主張しない、いわゆる「イイ子」が増えました。

その背景には、1989年改訂の「学習指導要領」で示された「新学力観」があります。「新学力観」では、計測可能な認知的学力よりも、「関心・意欲・態度」が最重要視されるようになったのです。その結果として、外見的表面的な「態度」だけ「イイ子」が急増しました。ある時授業で、子どもが思春期に教師などに反抗的な態度を取ることへの是非を学生に問うたところ、「新学力観」導入前に義務教育を受けた学生は「あってもしかたがない」と理解を示しましたが、導入後に義務教育を受けた学生は「あるまじき行為」と否定的で、学校教育の影響力に驚かされました。最近は大学の面倒見が良過ぎて、本来学びを深める場なのに、小学校・中学校・高校で習得してくるべき内容の補習までするようになっています。


増田
 確かにその傾向はありますね。小・中・高校で受けてきた教育の成果が表面化するのが大学です。大学は決してゴールではないのですが、燃え尽きて勉強を終了してしまう学生が見受けられます。最近の学生は教えられたことを覚えるのは得意ですが、自ら考えテーマを見つけて勉強することは苦手という人が多く、卒業論文の書き方まで教えを請う時代になっています。何をすべきか分からず、大学になじめずに学校を休みがちになる学生が出てくるのもうなずけます。

本学では、学生が大学に居場所を見付け、大学生活を充実して送ることができるよう、学生が学生を仲間として支援する「ピア・サポートコミュニティ」を2007年に創設しました。授業を第一のコミュニティー、部活動やサークル活動を第二のコミュニティーとするなら、「ピア・サポートコミュニティ」は第三のコミュニティーと位置付けることができます。この活動は先輩から後輩へと代々受け継がれ、現在活動数も増えて1万人近い学生が参加するまでに発展しています。

例えば、昨年の東日本大震災後、ピア・サポートの一活動としてボランティアセンターの学生スタッフ「チーム・オレンジ」は岩手県遠野市の支援センターを拠点に陸前高田市などの被災地へボランティアに行きましたが、1回で終わらず現地の方々と連携し、支援活動を継続しています。昨年の大学祭では東北の物産展や復興写真展を開いたのに合わせ、遠野市の方々が総長室まであいさつにお越しくださいました。嬉しかったですね。一昨年制定した法政のミッション昨年策定したビジョンの三本柱の一つ「持続可能な地球社会の構築に貢献する」を学生たちが具現化しているのですから。


尾木
 まさに自立型人材の好例ではないでしょうか。自立的だから長続きするのです。私は2003年から法政で教えているのですが、確かに本学には自立した学生が多いですね。私のゼミ生にも高校と大学を連携したサークルを自ら立ち上げ運営している学生がいますが、自力でどんどん進め、私には何の相談もありませんでした(笑)。教員免許を取得するため卒業後も教職課程を聴講している学生の中に、私のゼミへ自主的に参加している学生がいますが、単位とは関係なく卒業論文も書こうとしています。短期留学を勧めるとすぐに挑戦するし、ピア・サポート活動の一つであるオープンキャンパスの学生スタッフとしてもリーダーシップを発揮しており、法政大学の環境を100%生かし切っていますね。

教員養成課程を充実させ本学出身教員の全国ネットも築き教育界全体を活性化させたい

法政大学教職課程センター長

法政大学教職課程センター長 尾木 直樹 おぎ なおき
専攻:臨床教育学
中学・高校教員を22年間勤め、教育評論家として活躍
日本教師教育学会常任理事等歴任
2003年 法政大学キャリアデザイン学部教授就任
著書は180冊を超える。愛称は「尾木ママ」
2012年4月 現職

増田 「キャリアに強い大学の実現」も法政のビジョンに掲げており、キャリアデザイン学部をいち早く設置した大学でもあります。また本学は全国に公務員を多数輩出していますが、教員になった卒業生も大勢おり、そうした現役の教師である卒業生を把握することも必要と考えています。
当初本学は文学部に教育学科を設置し教職課程を集約していましたが、学部が増えていくにしたがってキャンパスも分散したため、各学部に教職担当を配して学部ごとに教員養成指導をしてきた独特の経緯があります。今年度より「教職課程センター」を新設し、教職課程の管理・運営・連絡体制の一本化を図りました。学習指導や進路相談、就職支援なども充実させていきたいと思い、尾木先生に初代センター長に就任してもらったわけです。

尾木 期待に応えられますよう努めます。私は全国の教育現場に出かける機会が多いのですが、最近法政出身の方に声をかけられたり握手を求められたりすることが増えました。把握し切れないくらい多くの卒業生が全国の教育現場で活躍しています。人柄の良い方が多いですね。この貴重な人材を結集し、交流を深めて日本の教育に活力を与えるネットワークを構築することも、センター長として一つの使命だと思っています。
私は「臨床教育学」のゼミを今年度も引き続き担当していますが、ゼミ生の教育実習先には全国どこへでも必ずあいさつと学生の指導に行きます。学生にも実習校の方々にも大変喜ばれます。今年度は教職関連科目の「道徳教育指導論」と「教職入門」の授業も担当しており、教職課程科目の中身と教職志望者の相談対応機能の拡充も図っていきたいと考えています。
教員採用試験は年々集団討論などが増え難化していますが、大切なのは小手先の知識や技術ではありません。混沌とした今日だからこそ、自由で進歩的な発想のもと私立の総合大学である法政で培った幅広い視野と人間力で子どもたちと触れ合い、ともに生き、育てていく教員を養成し、教育現場を充実させることが重要なのです。


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参考リンク