2019年度

10月

2019年度

10月31日(木)

愛知県の私立愛知淑徳高等学校で講演をおこなった。愛知淑徳高等学校は女子高校である。まず、大学はどういうところか、について話した。大学は「自由の広場」である、大学は「驚きの場所」である、大学は「考える時空」である、という3つを挙げ、卒業生たちにとってそれは具体的にどういう意味だったのかを、為末大さん、鈴木直道さん、私自身、そして今まで対談をしてきた女性の本学卒業生たちの生き方や言葉を取り上げて話した。そしてそれこそが、法政大学憲章「自由を生き抜く実践知」であることを述べた。さらに、社会がいまどのように変化し、それに対して大学や、大学で作られている組織や、文科省や、経済団体が、「これから必要な能力」について何を述べているかを紹介した。しかしそれは、その基準に従うためのものではなく、社会の変化を知り、自らの特性や才能に気づき、自己肯定感を高めて欲しいという意味であることを伝えた。女性がいかに自己肯定感を持ちにくいかを共有しながら、本学の歩みや現在のありようを紹介し、一緒に乗り越えて行きたいというメッセージを伝えたつもりである。
講演後は真剣な質問がいくつも飛び出し、さらに控室でも教員や生徒たちの質問に答えるかたちで対話を続けることができた。高校生とくに女子高生は今、この社会が競争だけで生きて行ける社会ではないことを感じている。教師たちも、点数だけで受験する大学を振り分けることに疑問を感じている。大きな、とても良い変化が起きているのではなだろうか。だからこそ、大学人は問いに答え続けねばならない。

10月30日(水)

常務理事会および常務理事会懇談会を開催した。その後、東京新聞の菅沼堅吾社長らと連載等について意見交換した。

10月25日(金)26日(土)

「公益財団法人大学基準協会」という全国の国公私立大学が会員となって運営され、評価活動などを通じて高等教育の質の向上を図る機関がある。法令の遵守状況の確認だけでなく、それぞれの大学の理念・目的を実現する取り組みやその達成状況の観点から評価を行い、大学の教育研究活動の質を社会に対し保証することを役目としている。学部や研究科も評価を受けるが、7年に1回は、全学が対象となる認証評価がおこなわれる。今年度はその全学評価をしていただく年度で、膨大な書類を提出したあと、この両日で「大学認証評価実地調査」がおこなわれた。本学に複数の審査委員がおこしになり、総長、常務理事との面談をはじめ、テーマごとに教職員や学生へのインタビューもあった。2014年度に総長になり、長期ビジョンや大学憲章を策定して改革を進めてきた全体像を示すことになり、改めてこの年月を振り返った。多くの時間を費やして提出書類や実地調査の準備をすすめてきて下さった教職員の皆さん、協力してくださった学生の皆さんに、改めてお礼を申し上げたい。ありがとうございました。まことにおつかれさまでした。

10月23日(水)

常務理事会および常務理事会懇談会を開催した。その後、25日、26日におこなわれる、大学基準協会による、7年に一度の「大学認証評価」の実地調査の最終打ち合わせをおこなった。さらにその後、11月9日に開催される、本学多摩地域交流センターによる「多摩シンポジウム」へのメッセージ動画を収録した。多摩シンポは参加したい催し物のひとつだが、公務で参加できないのが残念だ。

10月21日(月)

HOSEIミュージアム開設準備委員会を開催した。
その後、研修の一環である「ダイバーシティ推進シンポジウム2019」を開催した。グローバル金融機関UBSのエグゼクティブ・ディレクター堀久美子さんによる「Think Out of the Box Thinking アンコンシャスバイアスとダイバーシティ・マネジメント」という講演を伺った。多様性を獲得するには、思い込みから脱出しなければならない、という内容である。多様なチームは結束するまでいくらか時間がかかるが、より高い質の成果を出せるという。多様性は今や福祉の課題なのではなく、組織や社会の高度化のための課題なのだ。差別や偏見を無くすだけでなく、個々の人間が複数の異なる視点をもつことが必要だ、ということは江戸文化を通して学んだことだが、まさにこれも、社会課題である。講演後の質問で印象に残ったものがある。大量のスプレー缶の処理と紙資料の入った重い段ボール箱を運ぶ仕事は、男性職員だけでおこなう。危険なので女性にはやってもらおうと思わないが、それはバイアスか? という質問だ。

堀さんは「女性職員本人に確認すべき」という答えだったが、私はバイアスだと思った。私はスプレー缶の処理も自分でするし重い箱も運ぶからだ。男性で重いものが苦手な人はいくらでもいる。しかしもうひとつ、大事な答えが堀さんの口から出た。「そのような危険で大変な仕事を減らすことを考えたらどうか」である。それに対する答えは、「そうです。皆さんがご自分で処理すれば私たちはやらないでも済むのです」。こういうやりとりが、教職員間で必要!自分のスプレー缶は自分でカラにしよう。紙は極力なくそう。
講演終了後、武石恵美子ダイバーシティ化推進委員会座長と堀さんと私の立ち話は、まさに現代の女性の課題だった。堀さん曰く「男性は60%できればできた、と言うが、女性は120%できてもできたと言わない」「リーダーになったらどうかと薦めても、迷惑かけるから、と断られる」「せめて私たちは自分からやります。と言わないとね」「経験すれば出来ることがわかる。経験しなければ何もわからない」。OECD諸国で日本は女性活躍最低レベルの国である。

その後、朝日新聞の方々が来られて、11月30日におこなわれる朝日教育会議の打ち合わせをおこなった。さらにその後、日本経済新聞の取材を受ける。

10月19日(土)

多摩キャンパスの大学祭が開催されたこの日、後援会(本学学生の保護者会組織)主催による首都圏父母懇談会がおこなわれた。「江戸の話を」というご要望があったので、「江戸を使いこなす」という話をした。その後、食堂で懇親会を開催。なんとか雨に降られず、首都圏の保護者の皆様と交流ができた。

10月18日(金)

学校長会議を開催した。その後、定例でおこなう法政大学生活協同組合との意見交換をおこなった。一般社団法人法政大学校友会会報「オレンジ・ジャーナル」2020年新年号のために、校友会の佐々木郁夫会長と対談をおこなった。さらにその後、東京校友会から取材を受けた。

10月17日(木)

グローバル戦略本部会議を開催し、引き続き学部長会議を開催した。

10月16日(水)

常務理事会を開催した。常務理事会懇談会を2テーマ、開催した。

10月15日(火)

集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞した濱野ちひろさんと対談した。集英社のHPに掲載するためである。濱野さんはフリーのライターとして仕事をしながら、京都大学大学院博士課程に在学中で、博士論文を執筆している。受賞した『聖なるズー』は、人はいかにして支配関係や暴力を乗り越え、対等な関係を作ることができるか、をテーマにしたノンフィクションである。濱野さん自身がドメスティック・バイオレンスの経験者で、そこから立ち上がり、別の地平に生きる人々と出会う。その出会いによって、人間とも動物とも互いに「パーソナリティ」を発見し合い、認め合うことが可能であることを知る。衝撃的で深く考えさせられる作品だ。11月26日に刊行される予定である。

その後、明治学院大学横浜キャンパスにある国際学部附属研究所に赴き、所長の辻信一さんと対談した。テーマは「"国際" 再考―グローバルとローカルのあいだ ―」である。私は江戸時代の基本的な「ローカル」による成り立ちと、しかしそのなかで起こったグローバルな情報によるイノベーションの数々について話した。グローバルとは画一化のみをもたらすのではなく、意識や技術の多様化をもめざすことができるものなのである。辻信一さんは長くカナダと米国で学んだ方で、米国で博士号を取得し、環境活動家として世界的なネットワークをもっている。私が2009年に『未来のための江戸学』(小学館)を刊行した際に、インドの哲学者サティシュ・クマールを取り上げた。それがきっかけでサティシュと大変親しい辻さんが連絡を下さった。その後、サティシュにも会い、辻さんたちのブータンへの調査旅行に同行し、『降りる思想』(2012年 大月書店)という対談も刊行したのである。
『降りる思想』は、戸塚の善了寺というお寺でおこなった対談をまとめたものである。善了寺にはNPO法人のカフェ・デラ・テラという組織と、カフェそのものがある。そのカフェはストローベイルという、藁を圧縮してブロックにしたもので出来ている。辻さんの兄上の故・大岩剛一氏が建築したものだ。『降りる思想』の表紙写真は、その前で撮っている。
この日、明治学院大学の帰りに、善了寺のそのカフェで、大学に来られなかった方々のための対談をおこなった。

10月11日(金)

明日近づく台風19号は、まれにみる巨大で勢力が強いと言われている。交通各社の運休も決まった。本学は翌日12日の全授業休校、事務室業務休業、施設利用停止を決定し、広報した。

10月10日(木)

HOSEI2030推進に関する常務理事会懇談会を開催した。テーマは多摩キャンパスの今後についてである。その後さらに、キャンパス再構築特設部会を開催した。

10月9日(水)

常務理事会を開催した。その後理事会を開催し、理事会懇談会も開催した。その後さらに、全学質保証会議を開催した。今年は7年に一度の、大学基準協会による大学評価を受ける年である。すでに評価書を提出した。これから質問への回答を送り、実地調査もおこなわれる。しかし急ごしらえでできることは無い。日常的な教育・研究の質向上の努力と、そのための全学的な組織や取り組みこそが重要なのである。本学は大学憲章の制定をはじめとして、きわめて真摯に取り組んできた。そのことを明確に伝える工夫だけが、この数日の課題である。

10月8日(火)

法学部の明田川融教授の著書『日米地位協定―その歴史と現在』(みすず書房)が「櫻田會奨励賞」を受賞した。そこで、11月1日公開予定のHOSEI ONLINEの対談をおこなった。櫻田會の賞は、政治学に特化したきわめてまれな賞なのである。この対談の中で私は、日米地位協定への一貫した関心と法政大学での学びとの関連について伺った。法政大学で学んでいなければこの研究をしなかったであろう、という明田川先生の言葉に、今回も歴代の法政大学教授陣の並々ならぬ個性と力量を改めて認識した。またこの著書で私は、日米地位協定の本質につながる「潜在主権」という言葉を初めて知った。立法、行政、司法の権限を実質上もたないが形式的には主権を有するという奇妙な主権である。沖縄返還の際に、日本の潜在主権を米国に認めさせることと引き換えに、米軍基地の恒久化を日本が認める、という日米間の取引があったのではないかと思ったのだ。そのことを伺ううちに、「主権」というものが決して堅固なものではなく、揺れやすく動きやすくもろいものであることがわかってきた。さらに明田川教授が、駐留する軍隊と駐留させる国との関係を、自衛隊の派遣と派遣される国との関係に重ねて見ていることを知った。自衛隊が海外派遣される場合には派遣先の国の法律が適用されない。それは、アメリカ軍人の犯罪に日本の法律を適用できないことと同じなのである。日米地位協定を問うことは、自衛隊のありようを問うことになる。さまざまなことを考えさせられる、実り多い対談となった。

その後、日本経済新聞の取材があった。大学のことではなく、私自身の家族の記憶と思いを記事にする「それでも親子」というコーナーである。日経新聞はちかごろ、私的な事柄の取材が多い。

さらにその後、定例の司法試験合格者祝賀会が開催された。いつも私は、合格者の数より、ひとりひとりがこれからどういう仕事をするかに関心が向く。なぜなら真に社会に役立つか否かは、個々の卒業生の人間としてのありようによるからだ。しかし数で気になっていることもある。それは女性の少なさである。

10月5日(土)

デザイン工学部のある市ケ谷田町校舎で、江戸東京研究センターの「江戸東京アトラスワークショップ」が開催された。テーマは「名所の変遷から江戸東京の基層を探る」である。地図はいまやデジタル化によって、研究者自身がデータ収集し表現できるようになった。その利点を生かして、江戸東京の文化、社会、交通、農業、植生、水系、地形の変化と不変を地図上で重層的に分析するのが目的だ。この日は学生チームによる「名所の分布と考察試論」のプレンテーションの後、教員たちが分布の解釈、分類の改善、アウトプットのイメージなどを巡って熱いディスカッションを展開した。参加者は皆「面白くてしようがない」と、たいへんな盛り上がりようだった。

福井恒明先生のデザイン工学部都市環境デザイン工学科景観研究室による「歌川広重『名所江戸百景』マップ」では、『名所江戸百景』の各シーンに出てくる場所の特徴を地図に落とし込んで分析。文学部地理学科米家志乃布先生のゼミ生と、福井先生の景観研究室が、文理協働でおこなった「『新撰東京名所図会』マップ」では、1300以上の名所を地図に落とし込んだ。それを使い、近代化に向かう東京を浮き上がらせるための絞り込み方法を議論した。
やはり米家先生のゼミ生と、福井先生の景観研究室の文理協働チームが「偉人の俤(おもかげ)」(銅像)を発表。銅像の設置場所を地図に落とし込み、近代と銅像の関係を考察した。文明開化の象徴としての英雄、偉人の概念の出現と、銅像との関係が浮かび上がった。
陣内秀信名誉教授、横山泰子センター長はじめ、好奇心あふれるセンターの教員たちからは称賛とともに、新しい提案が続出。今後は折を見て途中経過を外部にも発信する。法政大学でしかできない文理協働プロジェクトになりそうだ。精緻で膨大な作業を熱心にやってくれた学生たちに感謝。

10月4日(金)

外部企業の会議があった。

10月3日(木)

NHKの国際放送局「NHK World JAPAN(Web版)」のインタビューがあった。江戸時代の布のリサイクルと着物の流通についてであった。
学部長会議を開催した。

10月2日(水)

常務理事会と常務理事会懇談会を3種、開催した。その後、外部の監査法人と総長・常務理事との、経営に関する懇談会がおこなわれた。